『販促会議』の連載「知らないと損をする!販促コスト劇的改善策~同じ費用で10倍の効果を生み出す」。の第4回。今回は、相見積もりによるチラシのコスト削減方法について。電子入札の仕組みの利用などについて本誌より一部抜粋して紹介する。
文:購買戦略研究所 代表取締役COO 古市 勝久
相見積りの取得は十分な数の企業から
今回はチラシの具体的な交渉方法を説明します。まず、チラシにおける単価削減の手法で一番なじみがあるのは、同業の数社に見積書を提示してもらい競合させる『相見積りの取得』です。これは文字通り、複数社から見積書を取得することを指しますが、さまざまな業務を担当しているために見積り取得の時間が割けず、取得先が2、3社となっていないでしょうか。
数千人以上の購買担当者からヒアリングしたところ、相見積りの平均取得社数は3社という結果でした。また、3社の内訳にも共通点があり、①昔から取引を行っている取引先、②頻繁に訪問してくれる取引先、③新規営業ということで飛び込みがあった企業、をそれぞれ1社ずつでした。しかしこれでは、最新の技術についてなど、より多くの新しい情報が偏りがちになってしまいます。相見積り取得の大きな目的は、『最新の情報を広く収集する』、『価格競争力のある企業を見つける』ことなどにあります。
最新の情報を広く収集するためには、相見積りを取得する企業数を10社以上にまで広げることが必要です。そして、10社以上から見積りを取るためには、現行の取引先以外の会社に対しても現状を正確に伝えなければなりません。また、当然ながら見積りを依頼する10社を探すことも重要です。これだけ聞くと大変な手間がかかる印象がありますが、一度とりまとめてしまうとその後の見積り依頼が非常にスムーズになります。
ただ、勘違いしないでほしいのが、「10社以上から見積りを取ることは、必ずしも取引先を変更することではない」ということです。あくまで目的は、最新の情報を広く取得すること。そして、お互いが切磋琢磨しながら公正で公平かつ、末永く取引を行っていくことなのです。見積りを適正に取得し、現行価格が市場価格と比較して適正なのかを確認できればその優位性をアピールすることができ、むしろ取引先は変えなくてもよいのです。「業務連携等により取引先を変更することができない」、「品質が心配だから取引先を変更することができない」、だから相見積りは必要ない、ということとよく混同しがちなので注意してください。
見積りのデジタル化で効率化を図る
相見積りを効率よく行う手法の一つに『電子入札(リバースオークション方式)』があります。これはインターネット上に取引先から見積り金額を提示してもらう方式です。小売業から始まり、現在では非常に多くの業界で導入されている手法です。取引先に対しての見積り依頼や、金額提示の促進も含めてシステムで対応していくため、担当者側の負担が少なく済みます。もちろん、見積り取得のための要件整理、取引先の調査は必要ですが、極端に言えば、10社でも100社でも見積り依頼にかかる手間は変わりません。一見ドライな交渉手法にも見えますが、業務効率を上げ、なおかつコスト交渉を『企業対企業』で行えるため大変有効な手法です。
見積り取得のために要件を取りまとめる際は、とにかく現状を正確に伝えることが重要です。現在使用している用紙の種類、データ提供の方法、校正の回数、色数など。また、独自の商慣習があるのであればその内容も伝えましょう。また、忘れてはいけないのは、画像データの所有権について。これも明確に記載すべき事項です。画像の所有権が取引先にあることで、交渉が難航するということも多々あります。これらのポイントをおさえたうえで、要件を整理しましょう。
→この続きの「チラシの配布枚数の見直し方」、「デザインはコンペで決定する」については発売中の『販促会議2月号』をご覧ください。
*定期購読者の特典として、相見積りの際に役立つ「チラシの現状調査シート」がダウンロードできます。
購買戦略研究所 代表取締役COO 古市 勝久
1996年 リーヴ・スポーツに入社し、マーケティングや業務改革プロジェクトに携わる。2000年に大手通信キャリアグループに入社。同年にMBAを取得し、B2B(企業間電子商取引)市場を研究。その後、「リバースオークション」のビジネスモデルを構築。2005年に早稲田大学IT戦略研究所と連携し、購買戦略研究所を設立し、代表取締役に就任
GMS、SM、ドラッグストア、コンビニ、通販… 効果が上がる2012年の集客・販促策
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