エコ感覚が全く違う方々。
みなさまこんにちは。今日のニューヨークの天気は晴れです。予報では最高気温3℃、最低気温1℃です。そして現在の気温はマイナス9℃です。はい、天気予報がかなり適当です。道端には、年末にみんなのあったかい夢と一緒に過ごした生のクリスマスツリーたちが、身ぐるみはがされて、そこらじゅうに捨てられて凍えています。ニューヨーク市だけでも、ワンシーズンに2500トン分のツリーが捨てられるそうです。でも、これらの木は市が回収して、砕いて、公園とかに撒くそうです。いちおうリサイクル。次の夢を育てる肥料になるなら、まあいいよね。
しかーし、ホントにこちらのみなさんのエコ意識は低いです。とにかくゴミが多く出る。ジュースのパックやらお弁当のプラスチック容器が妙にでかくてしっかりしてる。でも捨てる。サラダのドレッシングが入ってる小さな容器なんて、象が踏んでも壊れないくらい、強くていいプラスチック使ってる。でも捨てる。僕なんか、もったいなくて、洗ってそこにクリップとか入れてますけど。しかしアメリカの人はどんどん買ってどんどん捨てる。分別もしない。コーラの缶と電池と書類とピザの食べ残しが、仲良くそのまま同じゴミ箱に入って、そのまま中南米とかに輸出されて埋め立てられるらしいです。うーんうーん。あと、節電とかも特にしないです。夜中、誰もいない銀行の窓口とかにあるパソコンや大画面TVも、つけっぱなし。夏も、ビルの冷房が寒いと、そこに暖房をつけて打ち消す、とかね。震災後の節電ムードの日本からこちらに来た自分としては、銀行に押し入って電気を消して歩きたいくらい。うーんうーん。ハイブリッドカーとかもあまり見ません。ガソリン安いし。まあ、豊かといえば豊かなんです、アメリカは。でも、感覚として、ちょっと、受け入れがたいところがあります。
そんな受け入れがたい感覚の人たちと、どうやって一緒に仕事をしたらいいかなーと悩みつつ、自分でもピザとコーラを同じゴミ箱に捨てて罪悪感にさいなまれつつ、すくすくと体重は増えつつこれまで過ごしてきたわけですが。今までの仕事では、いちプランナーに戻って、自分たちで企画を考えて、自分たちで上司に案をプレゼンする形が多くて、それはそれで楽しかったんです。日本人がアメリカに挑戦だーっ、みたいな。しかし、そんな平和で楽しい企画生活も、長くは続かなかったのです…。
欧米人にディレクションしながら考える、会社の未来。
年が明けてすぐ、上司のブライアンが僕らのオフィスに来て言いました。「これから、デジタル系のすべての仕事は、君たちを通すことにしたから」と。「アカウントからのブリーフ(オリエン)は、すべて、ヤス(僕のアメリカでの名前です)とヨースケを通してスタッフに説明してもらう。スタッフはすべての企画を君たちに見せて、君たちのOKが出ないとプレゼンしない」とも。おお、やっとCDらしい仕事がきた。よっしゃ。もともと、僕らがアメリカに来た目的は、日本のクリエイティブを欧米で試す、ということもそうだけど、欧米人の弊社スタッフに、日本的なクリエイティブのやり方を伝えていきたい、ということも大きくて。だから、現地スタッフにがっつりディレクションできることは、とてもいいチャンスなんです。
でも、前述のとおり、エコとか、いろいろ感覚が違う人達だから、不安はありました。僕らの「おもろい」が、彼らの「おもろい」なのか、ちょっとばかし自信なかった。がしかし。その後すぐに飛び込んできたアカウントの一言で、状況は変わります。「今聞いたけど、君たちが全プロジェクトを責任もって見るんだってね!いいね!(この場合、例の awesome! という言葉が使われる)で、これがそのオリエン資料で、プレゼンが明後日ね」。え、何…だと…!?
これ、先日奪取した新クライアントの仕事なので、ある程度慌ただしいのはやむを得ないんですが、ちょ、ちょっとさすがに時間なくないですか?しかしアカウントに理路整然と文句を言うほどの英語力もないので(そしてこのアカウントのロブは、声が大きくて坊主頭で腕全体にがっつりタトゥーの入っている筋肉質のお兄さんなので、ちょっとだけ怖いんです。でもすごくいい奴なんだけどね)、とりあえず僕の口から出た言葉は「オッケー!」。もう自信ないとか言ってられないぞう。そして慌ただしくスタッフ招集、ブリーフィング、解散、ディレクション、プレゼン準備…。嵐みたいだけど、楽しい。こっちの若者たちは、みんな自信たっぷり。もちろん、いい自信ね。元気だし、聞きわけもいい。でも違うなと思ったら相手が上司だろうととことん議論する。そしてテンパってくるとこれまた分かりやすい表情になる。もちろん、企画の味付けの好みは、ちょっと僕らと違うところがあるけれど、「おもろい」の根っこは同じだった。
日本と違って、この若者たちは数年以内にみんな辞めちゃう。どこか次の仕事に旅立っていく。イチからずっと育てていく、ということが通用しない。一期一会的で、全力でぶつかり合えるし、さわやかだ。意外だったけど、いい仕事のためには徹夜もするし休日出勤もする。いい仲間。しかしちょっと寂しい。僕は日本人だから、日本の、会社の先輩が利害関係を超えて後輩を育てる、という仕組みがとっても好きだし、僕もそうやって育ててもらったし、ずっと続いてほしいと思う。正直、日本の若い人たちには、そう簡単に会社を辞めないでほしいとも思う。会社を好きになって、会社をとことん利用して、個人ではできない面白い仕事をしてほしいと思う。ここアメリカでも、弊社の若者たちに、同じ仲間と長く働く良さをもう一度、日本から伝えられないかとも思う。甘いかな。聞くところによれば、今おじいちゃんくらいの歳のアメリカ人たちは、終身雇用で、とってもすてきな会社生活を過ごしていたんだそうです。しかしその後アメリカはジョブホッピング文化へと変わり、日本もそれを見習いつつある。
どっちが正解かは、まだ僕には分からないです。
佐々木康晴「NYクリエイティブ滞在記」バックナンバー
- 第8回 先着20名様にプレゼントが届くコラム。(1/5)
- 第7回 アルゼンチンの空港で取り囲まれる。(12/22)
- 第6回 英語ができなくてもいい、たくましく育ってほしい。(12/8)
- 第5回 給料がもらえなかったけど、僕は元気です。(11/24)
- 第4回 イタリア人が激怒。アメリカ人は早口でまくしたて、ブラジル人は静かに笑った。そして日本人は…。(11/10)
- 第3回 東京から来た社長に、ディグダグで遊んでるところを見られる。(10/27)
- 第2回 君は、ニューヨークの女子高生を泣かせることができるか。(10/13)
- 第1回 ニューヨークに転勤して初出社したら、席がなかった。(9/29)