首都直下型地震の新たな脅威
今週月曜日(23日)早朝、読売新聞のネット版を皮切りに、一斉に東大地震研究所がマグニチュード7級の首都直下型地震が4年以内に約70%の確率で発生するという試算結果について報道し、関係者を驚愕させた。
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これまでに発表されてきた巨大地震の発生確率は、今後30年以内に、東海地震(87%)、東南海地震(60%)、南海地震(50%)とされており、首都直下型についても30年以内に70%というものだっただけに、一気に切迫性の高い予測として注目された。
政府の公式予測は文部科学省研究開発局地震・防災研究課に事務局を置く「地震調査研究推進本部」から発表されたものだが、東大地震研究所の予測発表以降もコメントはない。
東大地震研究所のホームページでは特に東日本大震災(2011年3月11日)以降の首都圏の地震活動の活性化に注目し、試算を行ったとしている。政府の予測には東日本大震災以降の地震活動の影響が含まれておらず、両者の結果の違いは試算に使用したデータや解析の方法の違いで、間違ってはいないとの見解となっている。
今回の東大地震研究所の試算には、東日本大震災以降半年間の分析(2011年3月11日~2011年9月10日と2010年9月11日~2011年3月10日のデータ比較)で、マグニチュード3以上の地震が大震災の前後で47個から343個に激増したことや、大震災以降12月までにマグニチュード3~6の地震が平均で一日あたり1.48回発生し、大震災前の約5倍に相当していることなどが重視されている。
目前に迫るマグニチュード7の被害と影響
マグニチュード7級の被害とは、深さの浅いところで震度7、深いところで5強から6弱の影響があるとされている。国の中央防災会議が予想した東京湾北部や新たに首都圏直下の3カ所のプレート(岩板)の境界(房総半島南部、茨城県南西部~千葉県西部)で強い地震の影響が出る可能性を指摘した。
東大地震研究所は、昨年9月にも政府とは異なる予測として30年以内に98%という確率で首都直下型地震の発生を発表していたが、その後の地震活動の状況を踏まえ、さらに分析を重ねて今回の発表となった。
東大地震研究所によれば、今回の予測で、3つのプレート(陸、フィリピン海、太平洋)の境界のひずみで発生するプレート地震に特定しておらず、首都圏近隣に存在する立川断層帯、三浦半島断層群、神縄・国府津-松田断層帯の活断層地震にも影響が出る可能性があるとしていて、広範囲な地震の影響が見込まれている。
地震の被害想定は、東日本大震災の被害結果(平成23年12月22日、警察庁発表)の、死者:1万5843人、行方不明者:3469人、建物被害:全壊・半壊・全半壊35万戸以上に対して、マグニチュード7.3の首都圏地震発生(内閣府のシミュレーション)では、死者:1万1000人、全壊・焼失建物被害:85万戸、経済被害112兆円と想定されている。これは平成22年中央防災会議で東南海地震の被害想定として発表された、死者2万4700人(21府県)、建物被害:全壊94万戸以上と比べても遜色のないほど大きい被害である。
神奈川県平塚市では、神奈川県でいち早く県の想定を超える大津波が押し寄せた場合のCG動画を専門家に依頼し、現実的な避難活動に役立てるため、2月以降DVDとして貸し出しを開始することを発表した。大津波が平塚市に襲来した場合の立体映像をとらえた「津波浸水モデルシミュレーション」は、津波6.8メートルと10メートルの2事例が使用されており、非常にわかりやすい。また、10メートルの大津波では平塚駅周辺は水没、国道1号を超え、平塚市総合公園南側まで到達しており、被害の大きさや早期避難の重要性を喚起するものとなっている。
4年以内70%はそう遠くない未来である。国、自治体、専門家、企業が協業して早期に避難対策を講じる必要に迫られている。個人としても真剣に家族、自分自身をどう守るかについて冷静に判断しなければならない。
地震から身を守るためのガイドライン
危機管理の基本は「自分の身は自分で守る」ことであり、以下の事態にもあわてず対応できるよう準備することを心がけてほしい。
(1)オフィス内で地震に巻き込まれた場合の対応
- あわてずに揺れの状況を確認し、落下物の可能性のない場所や支えの無い棚、ロッカーや窓際からすぐに離れて身体を固定できる柱などにつかまる。
- 窓際近くではガラスが割れて怪我をするばかりか投げ出されて落下する可能性があり、また什器・備品の近くではそれらが倒れて下敷きとなることもあるので注意が必要である。
- 動くことができたら鞄などを頭にかかげて落下してくるガラスなどを避けながら、オフィスの扉を開放し、建物が破断したり基礎が沈下した場合でも、鉄の扉などが開けられなくなることを防ぐ。
- ビル内の館内放送や企業の防災担当者の指示に従い、避難通路や非常階段を通じて外部へ避難する。この際、高速道路・歩道橋・橋などの下に隠れてはいけない。これらは過去に発生した大地震でも破損・破断がひどく、倒壊するおそれがあり、災害事故に巻き込まれる可能性がある。
- ビルの近くでは、降ってくるガラスで負傷する可能性があるので、揺れのある状況では建物近くを歩かないよう留意する。常にヘルメットがあればかぶり、ない場合でも鞄などを頭の上にかかげて落下物が当たった場合でもクッションになるよう気をつける。
(2)オフィス内で準備すべき震災備品
以下に記載したものは最寄りの避難所までの最低限の備品である。
- ヘルメット(頭部を守るため)
- 安全靴(鉄板の入ったもので足を守るため)
- 軍手(内側にゴムがついたもの)
- リュック(避難する際、手を自由な状態にするため)
- 水(ペットボトル2本程度)
(3)自宅で地震に巻き込まれた場合の対応
- 木造建築の場合は倒壊危険があるため、落下物をよけてテーブルなどの下で揺れが落ち着くまで待ち、動けるようになったら速やかに外へ避難する。このときあわてて道路へ飛び出すと、車と接触するなどの危険があるから、必ず周囲を確認して避難する。
- マンションなどの集合住宅では1階ピロティ部分など、開口部の大きい場合は崩壊する可能性もあるので、部屋で揺れが落ち着くまで待機する。その場合、キッチンやストーブなど火の始末はしっかり行う。また玄関扉を開けて逃げ道を確保しておく。
- 揺れが完全におさまったら家族全員の負傷状態を確認する。
- 避難所へ避難する場合は火災防止のためのガスの元栓・電気のブレーカー、階下への漏水防止のための水道の元栓を必ず閉めておく。
- 揺れている間もしくはその直後に避難する場合は、エレベータは絶対に使用しない。
- 複数の避難通路がある場合は、火災発生の状況、異常な臭い、外壁の破断状況などを確認し、安全な通路を使用する。
- 就寝中に地震に巻き込まれた場合、揺れで落下物や破損したガラスなどが床に散在し足裏に大きな負傷を負う可能性があるので、就寝前にスリッパや靴を袋や箱に入れておき、すぐに履けるようにしておく。
- 地震後しばらく自宅で生活する場合に備えてトイレの水を確保するため風呂の水を捨てずに残しておく。
(4)自宅内で準備すべき備品
- 軍手
- リュック
- 水
- ラジオ
- 時計
- 身分証明書
- 保険証、預金通帳、カード、実印等
- ホイッスル(救援者や救助犬に聞こえるよう)
- 懐中電灯
- 手動蓄電器(取手を回すタイプで携帯電話も使用できるもの)
- 携帯電話
- サランラップ(皿や止血、食糧の残り物の保存などに使用可)
- 医療キット
- 帽子(ヘルメットガあればベストだが、防寒・防災の両面から)
- 紙・サインペン(避難先の掲示ができるよう)
- 水・お湯で戻せる食料品(かゆ、カップ麺など)
- 水がなくても洗えるシャンプー
- カセットコンロ及びガスボンヘ・
- 家族分のフォーク・ナイフ・スプーン
- 乾電池
- 方位磁石と地図
- 防災シート(防寒・防風・防水)
- ウェットタオル
- ライター
- チョコレートなど(重量が軽く栄養が高いもの)
上記は阪神淡路大震災の際、筆者が避難所50箇所以上を回ってアンケート調査を実施したときの結果である。尚、避難する際、服は下に何枚か着重ね、上着には厚手のものを着て、外部環境の変化によって温度調節ができるよう工夫する。また、ポケットは多いものを選び、色々なものを入れられる方が使いやすい。
(5)避難時の留意点
地震は揺れに伴う崩壊・崩落から免れても、その後に発生する火災による熱、一酸化中毒や有毒ガスによる酸欠、大津波などによって危険は継続する可能性が高い。従って、避難する者はあらゆる危険性を排除しながら慎重な対応を心がけなければならない。多くの大地震の場合、負傷する事例はほとんどが避難時に発生している。長距離を移動する場合は必ず女性なら3キロに一度、男性でも5キロに一度程度は休憩するつもりで移動することを考えてほしい。特に履きなれない靴や革靴などで避難する場合は10キロから15 キロ程度でも足が非常に痛くなり、歩行できなくなる場合も発生する。トイレの利用箇所は多くはないので、発見したときに利用しておく。暖を取りたい、ゆっくり寝たいなどの理由で、避難時に発見した建物に入り込み、電気をつけた瞬間、ガス漏れに引火して爆発に巻き込まれる事態が過去においても発生している。留意されたい。
途中で行き倒れてしまう場合に備え、身元が分かる資料をできるだけ上着のポケットなどに入れておく。日の出、日の入りのおよその時間を把握し、暗くなる前にその日の休憩場所を決めて、就寝のための準備を行う。地震の救援作業は広範囲かつ長期化する場合があり、救助を待つ者にとっては非常に厳しい事態となる可能性もある。水や食糧、電源などはそれぞれが協力しあって少しの無駄もないよう管理することが不可欠である。
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