米国で注目をされるスーパーマーケットのひとつに「トレーダー・ジョーズ」があります。店舗数は少ないながらも、チラシの発行は年数回(4~5回)でも繁盛店は約23億円と、業界平均の2倍の売上げがあります。今回は、そこで働く店員さんと店内のこだわりのあるツールについてハカってみました。
まず、このお店のエコバッグは日本でも有名で、オークションサイトで色々なデザインのものが取り扱われています。洒落ていて、可愛いいデザインでお手頃な値段。500~800円くらいでオークションサイトに出品されています。米国のスーパーでは、こうしたエコバッグの表現や仕様にも非常にこだわりがあります。
トレーダー・ジョーズは、カリフォルニア州のロサンゼルス郊外に本部を置き、2011年12月時点で全米28州に約360店舗を展開します。このお店の前身はコンビニエンス・ストアで、創業者がセブン-イレブンの進出に脅威を感じて面積を拡大、こだわりのワインやグルメフードを格安な値段で提供するビジネスをはじめたことでその「原型」が出来ました。
カリフォルニアワインは、実に1本200~300円から。日本人が良く旅行のお土産で購入するソルトやスパイスも1瓶が200円程度です。まとめ買いしている姿が見られます。また、このお店のターゲットは高い教育を受けていても、その教育水準に見合った所得のない層や、健康に関心の高い層としています。
そして、扱う商品の80%がプライベートブランドであり、単位面積当たりの売上高が非常に高いことでも知られています。「大胆不敵のチラシ」(Fearless Flyer)と言うタイトルを付けた年数回のチラシには、価格の表示が一切ないことも特徴です。
アロハシャツを着た店員さん
店舗の内装を見ると全体が木目調で、木の棚がゆったりと並んでいて、店内の演出物からは『南太平洋のお店』がイメージされます。イラストのモチーフはヤシの木や南国の食べ物だったり。店員の服装もアロハシャツで、このお店では店長をキャプテン、副店長をファースト・メイト(一等航海士)、店員をクルーと呼びます。
店員は買物客にいつもフレンドリーな対応で、小さな子どもやシニアに積極的に話しかけたり、商品に不満のあった際は、喜んで返品・返金の対応をします(この返品・返金に関する考え方は日米の大きな違いがあります。これは今後のテーマで取り上げます)。買い物客に対して「ゲスト」や「古くからの友だち」といった気持ちで接している印象を持ちます。
このお店のもうひとつの特徴
それは、商品を山積みした平台に差し込まれた手書きの黒板や、エンド・キャップに取り付けられた手書きのパネルにあります。日本でも書店や専門店・バラエティショップ等で店員の書いたPOPをよく目にします。その内容は主に、商品やサービスに関するレコメンドですね。前回テーマにしたデジタル・サイネ―ジによる活性化のヒントとして、「買物客を引き付ける優れたスキルを持つ店員さんによるレコメンドをコンテンツに活かすこと」があります。
オリジナリティのあるレコメンドの要素をサイネ―ジの表示に取り入れることは、アナログとデジタルの融合を意味します。トレーダー・ジョーズのそれらには、見るものを引き付ける暖かさや、どこか懐かしさを強く感じさせます。店舗ごとに地元のイラストレーターや美術学校の生徒と契約をします。彼らが描くPOPは、お客さんに接する店員の気持ちや雰囲気と言うものをそのまま表現しています。カットアウトや立体的に仕上げたPOPやディスプレイは、買い物の手を休めて、暫く立ち止って眺めていたくなります。
スマートフォンや携帯電話を使用した様々なプロモーションやサービスが展開される一方で、「買物をするその僅かな時間で、売る値打ちのある商品の訴求と価格の打ち出し」そして「買物を愉しくさせる表現やアプローチ」は買い物客を捉える小売業やメーカーにおいては、どちらも欠かせることの出来ない要因です。
日本でも、デジタルやソーシャル・メディアの上手な使い方と合わせて、こんなふうに情緒や気持ち(ハートですね)を揺さぶる店づくりやプロモーションの展開が出来ればと思います。
次回のテーマは、 「えっ?自動販売機で本当に売られているもの」