顧客に最適化したコミュニケーションチャネルを築く
マスマーケティングと比べ、オウンドメディアマーケティングで
大きな力を発揮するのが、ユーザーの属性に応じて
容易にパーソナライズ化できる点です。
マスマーケティングの場合は、その特性上、対象とする顧客層の中でも
マジョリティ中心にターゲットを絞らざるをえないのです。
たとえば、ある旅行代理店では、数十万会員のケータイ会員に対して
同じ内容の情報を送っていました。
「期間限定! 業界最安値! 韓国ソウルツアー!」といったような内容です。
このメールは、会員のなかでもっとも数が多い
「気軽に海外旅行を楽しみたい」層に向けたものです。
しかし、この情報を魅力に感じるのは全体の約3割で、
それ以外の富裕層やビジネス層などにはアピールできないことがわかっていました。
つまりマジョリティ以外を切り捨てることは、
残りの7割に対しての機会損失を生んでいることを意味します。
それぞれのマーケティング施策をパーソナライズ化するために、
会員をセグメントに分類し、各セグメントに最適化したコンテンツを
適切に選んで確実に届ける仕組みが必要になります。
このとき重要なのは、会員をセグメントするときの切り口はひとつではない、
ということです。
たとえば、年齢層だけでセグメントするのではなく、
年齢×性別×居住地×購買傾向×クーポン利用頻度、などのように、
複数のセグメントを組み合わせることで、パーソナル化の度合いを強めて、
期待する効果が得られるようにします。
このように、実施するマーケティング施策の特性に合わせて、
最適なセグメントを選び出し、適用していきます。
クーポンやキャンペーンなどのマーケティング施策を実施するには、
セグメントごとに最適化されたコンテンツや、
クーポンをダウンロードするためのURLが、
配信するメールに自動的に差し込まれる必要があります。
そして、マーケティング施策とセグメントの掛け合わせで効果を測定し、
分析することになります。
図のように特定のセグメントで、継続的に施策を実施し、
時系列にその効果が改善されていることを実感できるような
3次元のグラフで可視化します。
そして、これらの詳細な分析を通じて、より最適なセグメントを探っていき、
次の施策に活かしていきます。
顧客へのコミュニケーションチャネルはメール配信だけに限定されません。
他の媒体、例えばウェブであったり、ソーシャルメディアだったり
あるいは企業が発行する定期刊行物などの紙媒体でさえ
将来的にはオウンドメディアに集約し、同様な仕組みを適用して
効果測定できる仕組みを構築するのが理想です。
自社のプラットフォームに機能と情報を集約する
以上のように、自前の放送局のための放送設備は
マーケティング施策のプロセスをきっちりと管理できなければなりません。
そして、会員とのコミュニケーションチャネルを通じて
会員に最適化されたコンテンツを確実にリーチさせることが必要なのです。
これらを整理したのが、図のような構成からなるプラットフォームです。
オウンドメディアを中心にすべての機能を集約し、情報のハブとなって
外部メディアや外部サービスとも連携できるモデルです。
このプラットフォーム上で、会員のひとりひとりと強固につながる
オウンドメディアマーケティングを展開していきます。
そして、最終的には、ヘルプデスクなどのフロントオフィスや
社内システムなどのバックオフィスなどとも連携することで、
自社の戦略的なビジネス基盤へと育てていくことができるのです。
井浦知久(いうら・ともひさ)
人工知能系プログラミングを通じて、UNIXやインターネットの開発に従事後、ユラスを設立。オウンドメディアプラットフォーム「MA3」を企画開発し、日本マクドナルド、シスコシステムズ、ガートナー ジャパンなどの外資系有力企業への豊富なサービス提供実績を持つ。
【オウンドメディアマーケティング】バックナンバー
『オウンドメディアマーケティング 顧客との関係を創造し、ビジネスを強化する自社メディア戦略』
井浦知久・著
コーポレートサイトは、単に“企業の情報を発信する”ツールではない。“顧客とのダイレクトな関係性を創造する自社メディア”へと進化させる「オウンドメディアマーケティング」を実践することで、売上げに貢献するビジネスモデルへと発展させることができる。ソーシャルメディアの先にある、新しいマーケティングの手法とノウハウをまとめた1冊。