各国・地域の担当者とつながることで、情報発信に厚みが増す
岸原 世界的に見ても、キーパーソンとなる情報発信の担当者がこちらでも把握できるようになりました。従来は自己完結型で、国ごとの担当者が自国のターゲットに情報を発信していましたが、我々としてはグローバルにパナソニックを発信することを目指しており、たとえばアメリカで発信されたパナソニックのニュースがブラジルやアジア、ヨーロッパの人にも届けられるべきだと考えています。本社ではその国のプレスリリースを他国にも届けられるように、国・地域ごとの担当者をつなぐ取り組みを加速度的に進めています。
工藤 我々がソーシャルメディアやガバナンスを始めてみて各国の担当者を把握できるようになったのは、表に見えない大きな価値だったと思います。各国・地域の旗ふり役の可視化ができるようになりましたし、ソーシャルメディアやオンラインを通して他の国ともパナソニックとしてつながっていたい、世界に情報を積極的に発信してきたいという想いがある担当者も多いことも見えてきました。各地から情報が入ってくるようになり、また、我々本社から企業姿勢や考え方、ビジョンを各国に伝えることで、各国での情報発信にも厚みが増します。担当者がつながることで、パナソニックから発信される情報の量と質の向上へとつながっていると思います。
――日本にある本社が情報発信の中で果たす役割とは何でしょうか。
岸原 パナソニックは基本的には各自が自主独立経営で事業を展開しています。しかしその一方で、国ごとでサイトや情報が点在するという問題が起きていました。また、オンラインの世界に国境は関係ないので、どこを対象にしたニュースだったのかわからないといった事態も発生しました。本社としては全社を横断的につないだ上で、ユーザーに対して迷わず世界各地の情報を収集していただけるワンストップのオンラインニュース発信が非常に重要だと考えていました。
工藤 過去には各国で情報が点在化していて、それをつなぐものがないという状況でしたが、その問題を解決するためにWebサイトを立ち上げ、それを支えるためのソーシャルメディアという位置づけでトリプルメディアのバランスを重要視してはじめました。いろんな地域、担当者が始めていったものが蓄積され、それを世界へと放出していくためには、核となるポータルを確保しなければなりませんし、その役割を担うのが本社である日本です。たとえば日本国内での出来事をPanasonic News Portalを通して世界へとニュース発信することで、アジア圏から反響があってリツイートされたり、フェイスブックへの投稿があったりします。
岸原 ローカルはローカルでそれぞれコアな情報は持っているのですが、他の国の情報を持っていなかったり、会社全体の取り組みのことを語る機能がなかったりします。しかし本社である日本にはすべての情報が入ってくるのに加えて、企業としてのメッセージも伝えることができるので、Panasonic News Portalの運営は日本で、使用言語は英語という体制で運営しています。本社はハブファンクションの役割を担っています。
ローカライゼーションとグローバリゼーションの両立へ
――世界へ情報を発信する上での留意点は何でしょうか。
工藤 情報の受信者が必ずしもパナソニックを知っているという前提で情報を発信しないことですね。知っている前提がある表現とそうでないものは違うので、気をつけています。また弊社を知らないことを逆手にとって表現をキャッチーにするといった工夫もしています。
――ソーシャルメディアを導入する上で、社内の説得など苦労はされませんでしたか。
山本 ソーシャルメディアに黎明期から取り組むことを理解してくれる幹部が幸いにもいたので、私たちも積極的に対応できました。
――ネガティブな反応への対応はどうされていますか。
岸原 もちろん弊社でもリスクマネジメントは確立しています。ですがその前にそもそも炎上と言われるような反応を集める時は、企業活動や経営活動にもそうした反応を集めるだけの何かがあるのでしょう。パナソニックが企業として社会へ正しく価値を提供していれば、ネガティブな反応はありませんし、あったとしても淘汰されるでしょう。以前に比べて個人の情報発信が容易になった分、企業としてリスクを危惧されることもあると思いますが、企業活動をきちんとしていればソーシャルメディア上で問題が起きることはないと思いますし、問題が起きていたとしても素早い対応ができると思います。
――今後の展望をお聞かせ下さい。
山本 パナソニックではローカライゼーションとグローバリーゼーションの両立を目指しています。やはり弊社は海外でも積極的にソーシャルメディアを展開しているので、One Panasonicとして束ねていくのが難しいですね。日本のようにmixiが主流なところもあれば、アメリカのようにフェイスブックが主流な国もあるし、はたまた中国では全然違った種類のソーシャルメディアが使われていて、といったように国ごとによってソーシャルメディアの在り方が違うので、うまくローカルとの事情を考えながら、パナソニックとしてグローバルに情報を発信していきたいと考えています。
――インタビュー雑感
「オウンドメディアが第一で、ソーシャルメディアはそのサポート役」というソーシャルメディアの使用目的やプライオリティの明確化、ペイドメディアも含めたトリプルメディアのバランスが重要であることを学びました。またグローバルにソーシャルメディアを展開することがただ単にアカウントをたくさん持ってその国の顧客をターゲットとして情報を発信するだけでは不十分であり、本社でそれらを管理統制した上で、国ごとに点在している情報をまとめあげ、再発信するという本社の役割が今回の取材を通して見ることができました。(アジャイルメディア・ネットワーク)
インタビュー担当:AMNインターン 青山学院大学経営学部 芳賀ゼミ 糸井佑樹、人見彩菜
次回(3月26日)は、アディダスジャパンです。
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