電通は12日、屋外・交通・折込などOOHメディアの活用事例や同社の取り組みを紹介するセミナー「OOHワークショップ」を東京・汐留の電通ホールで開催した。OOHメディアの利用促進を目的に電通アウト・オブ・ホーム・メディア(OOH)局が主催するもので、クライアントや同社の営業部員など約550人が来場した。
「広告効果に対するアカウンタビリティ(説明責任)を確立できていないことが課題だ。効果測定の客観的指標の取り組みについては、例えば視聴率が存在するテレビと比べれば弱い」――。サントリービジネスエキスパートの久保田和昌・執行役員宣伝部長は「OOHへの期待と課題」と題した講演で強調した。久保田氏は日本アドバタイザーズ協会のSP広告委員長を務めており、交通媒体を扱う首都圏の電鉄会社らによる団体と各社共通の効果指標策定をめぐって協議を進めている。
もっとも、近年大手の新聞社や雑誌発行社が共通の指標策定に向けた取り組みを進めているのに比べ、交通・屋外分野の取り組みの後れを指摘。宣伝予算が削減傾向にある中で、「宣伝部はいま受難の時代。担当者のローテーションが早く、知見の蓄積がされにくい状況にある。共通指標すらない状況では、十分な予算を取ることは難しい」と述べた。
久保田氏はサントリーのOOH活用事例も紹介した。昨年の中元商戦に向けた高級ビール「ザ・プレミアム・モルツ」のプロモーションでは、主要駅から百貨店への動線上や大規模スーパー付近の広告媒体に集中的に出稿し販売増につなげた。昨夏の「ペプシネックス」のキャンペーンでは、東京・新宿駅構内の30メートルの地下道に天井も含めたラッピングや音による演出を施したところ、ツイッターによる話題のつぶやき(ツイート)の数は通常のプロモーション時の10倍近くに上ったという。
東京スカイツリーや渋谷駅周辺再開発などの開発案件については「OOHにとって新たなチャンス」と述べ、魅力的な媒体の開発が重要と指摘した。鉄道会社や広告会社には、「(施設の)集客につながり、さらに広告が格好良く見えるにはどんな媒体にすべきかまで考えていただきたい」と述べた。
続いて電通OOH局の中野雅之氏が登壇し、効果指標策定に向けた取り組みについて紹介した。広告会社と媒体社など59社が参画する「屋外広告指標調査研究プロジェクト」では、欧米で導入されている屋外広告の視認レベルの統一指標(VAI)を策定する取り組みを進めている。また交通広告についても、各社で基準が異なるデータを一元化する取り組みに着手すると明らかにした。