世界の若者の7~8人に1人は職がない
2012年の大卒内定率は59.9%と、史上2番目の低さ。しかし、全体の求人倍率が長らく1倍を切っているのに対して、新卒求人倍率は1.23倍と、前年より下がってはいるももの、1倍を超えている。つまり、企業は若者を採用したいのだ。むしろ、学生が大手志向で中小企業への就職を避けたがる傾向が強く、結果として内定率が低くとどまっている実態が浮かび上がる。
慣れないリクルートスーツ姿で懸命に就職活動をする学生を見ると、「若者受難の時代」と勘違いしてしまうが、本当は「採用受難の時代」なのかもしれない。
一方、世界はどうか。
インターナショナル・ユース基金(IYF)は、3月27日、世界の若者の機会の格差に着目した報告書を発表した。マイクロソフトが調査のための資金提供を行った。
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この報告書によると、世界中の若者が経済と社会の変化に直面しており、急速な変化に対応した教育とスキルと雇用機会の創出が喫緊の課題である。世界の若者の失業率は12.7%で、世界の全世代の失業率(約6%)の2倍を上回っている。世界の若者人口は12億人で史上最大となっており、そのうち7~8人に1人が無職ということだ。
若者が職につけるか否かは教育機会に左右される。米国の高校レベルの教育を受けているのは世界ではわずか44%。一方で職業に求められるスキルや教育レベルは高くなっている。そこで、マイクロソフトとIYFは若者が学び、働き、起業することに成功するのを助けるために様々なプロジェクトに取組んでいるという。
欧米で11%を占めるNEET。EUの財政負担は青天井
この報告を受けて、マイクロソフトのCEO、ブラッド・スミス(Brad Smith)氏は、「格差が生まれる理由は国や地域によって異なるが、格差が開き若者の失業率が高くなる傾向は世界的に共通している。若者の教育やスキル、雇用機会に恵まれるように官民が協力して取組む必要がある。機会の格差を越えて、すべての人に機会がある社会を目指していかなければならない」と語った。
また、IYFのCEOのウィリアム・S・リース(The International Youth Foundation)は「若者が繁栄するとき、社会は栄えることは歴史が証明している」と述べた。続けて「この報告は、若者が苦悩していること、そしてその理由を明らかにしている。いま、若者が職を得られるように行動しなければならない。私たちの未来は、それができるか否かにかかっている」と指摘した。
しかし、若者の失業率の高さは、教育機会の不平等のせいだけではなさそうだ。報告書によると、ラテンアメリカや中東欧では、教育の不備が、アジアでは低い賃金が不平等を招いているとのことだが、欧米先進国の問題は、社会制度よりも、若者の内面に原因がありそうだ。今回調査の対象となった10カ国(イタリア、スペイン、ドイツ、フランス、カナダ、ポルトガル、アメリカ、ギリシャ、イギリス)の、15歳~24歳のNEET(職・教育・訓練に従事していない人)の割合は11%にのぼる。
社会やコミュニティから切り離され、孤立し、NEETの期間が長くなるにつれて、犯罪の被害者や加害者になるリスクが高くなるとともに、2度と職につけない可能性も高くなる。欧州では、昨年からの財政危機を受けて、若者の高い失業率を野放しにすることで増大する財政負担への懸念が大きい。報告書では、早期に若者の雇用対策を講じることで、欧州連合は将来の財政負担年間210億ユーロ(約2.3兆円)を削減できると推計している。
若者が変化に適応できない本当の理由
報告書では、この世界的な問題に対して、政府、民間企業、教育機関、NGO・NPOなど世界の各セクターが徹底して取組む必要があるとしている。その実現のために、官民、市民社会といったさまざまなセクターが協力しなければならないこと、政策決定者に働きかけ、より実践的な教育カリキュラムへの改革や起業家教育・育成を推進すること、若い起業家にとって信用上の不利な条件をなくす制度上の改革などをあげている。また、民間企業には就業支援に関連する教育機関と連携して、インターンシップやメンター制度など、各種の取組みを推進することがあげられている。
しかし、就業前にできる教育訓練はかぎられている。仕事で本当に役立つスキルは現場で育つものだ。教えすぎると、教えられたことしかできない、教えられたことを疑わない人間だらけになってしまう。本来、若者は変化に柔軟に適応できるはずだ。若者が社会や経済の変化についていけないのは、教えすぎた結果ではないのか。早期に離職してNEETになるのは、学校で教えられたことと現実のギャップが大きくて思考停止に陥ってしまうためではないのか。
若者の職と教育をめぐる問題は、解決を求めて世界を駆け巡っている。
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