大津健一(東京アドエージェンシー プランナー/2002年春・基礎コース修了)
前回のコラムはこちら
東京アドエージェンシーは昨年6月、チャリティーコンサートを実施しました。規模は小さいものでしたし、厳密にはボランティアで仕事ではありません。
しかし“広告会社で働くこと”そして“企画から実施まで”のイメージを
お伝えできるのではないかと思います。
居酒屋さんで見つけた素敵な企画
「東北のお酒を飲んだら、店が1杯につき100円寄付します」
仕事帰りに立ち寄った店で、こんな旨の手書きポスターを見つけました。
依然、自粛ムードの強い時期でしたので、
お店の販促にもなり、お客さんも後ろめたさを感じずに飲め、
そして少しだけ復興にもつながる、素敵なアイデアだと思いました。
このポスターに触発され、
「うち(東アド)が何かやるんだったら」と
部長と二人、焼鳥屋でブレストがスタートします。
「それはいいな」「いいですね」の連発で。
もうすぐにでも実現できるんじゃないかと。
その日は、いい気分で飲んで盛り上がりました。
翌朝、部長から「とりあえずまとめてみろ」と指示があり、
若干戸惑いながらも資料を作り、社内プレゼンです。
ひととおり説明すると、
「スケジュール的にも無理だよ」
「稼いで税金を納めるのが一番だ」
などなど、ごもっともな意見が多数。
部長は後押ししてくれましたが、
出た結論は、
「とりあえず、君が一人で動いてみるのは許す。
むしろ、どれだけ大変かやってみろ」
じゃ早速!と勢いよく返事したものの、
一人で?と内心ビビったのを覚えています。
企画を実施することの難しさ
チケット発券は?
アーティストへのお願いは?
会場との交渉は?
会計処理は?
いざはじめると、わからないことだらけ。
でも寄付金を少しでも多くするためには、
安易に外部スタッフに頼るわけにもいきません。
がむしゃらに、ぴあのホール帳を見て会場に電話し、
アーティストの事務所にもお願いに行きました。
同時に、社内はもちろん、社外の先輩、友人に、
そしてクライアントの役員にもご相談にあがりました。
(いつも厳しいコメントをくださるクライアントが、
一番弱点を見抜いてくれると思ったので)
“これなら”という方法が、出ては消え、出ては消えていきます。
「こんないいことを考えました!どうですか?」
それだけで簡単にいくはずがなかったのです。
そしてコンサート開催へ
いよいよどんづまりとなったとき、見るに見かねたのでしょう、
前代表と他部署の部長が動いてくれました。
会場、そしてアーティスト、スタッフ・・・、一気に進展します。
会計関係は経理部が動いてくれました。
広告の本業が自粛、自粛で大変なときに、
突然、チャリティーコンサートをやろうと社員が言い出し、
会社は困惑したと思います。
そんな中、まず動くことを許してくれ、
最終的には、全社プロジェクトとして進めてくれた。
会社の度量を少し感じた出来事でした。
企画書には大そうな理由を書きましたが、それはすべて後付けで、
本当は好きな広告会社の仕事を活かして“何か”したかった。
そんな思いから部長と作った企画は、
協賛企業、アーティスト、会場、スタッフの多大なご協力と、
社員みんなの力で、小さなコンサートとして無事、着地しました。
企画は身近な生活の中から、
実施は強気にそして臨機応変に。
小さな会社の大きなフトコロで、
そんなことを考えながら仕事をしています。
次回は、これから目指すことをお話します。
大津健一(おおつけんいち)
1978年福島県生まれ。福島大学行政社会学部卒業。ファーストリテイリング、アレイを経て、現在、東京アドエージェンシーでWeb施策を中心としたプランニングを行う。PRSJ認定PRプランナー。宣伝会議コピーライター養成講座・基礎コース(2002年春コース)修了。
バックナンバー
コピーライター養成講座卒業生が語る ある若手広告人の日常
- 2012年3月 大重絵里「考え続けられる人が、輝いている」
- 2012年2月 山川力也「コピー」じゃなくて、「いいコピー」を書くために。
- 2012年1月 安田健一「土俵に上がれない時代は、土俵づくりから。」
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