今回はNY(ニューヨーク)で働いていた時の事を書きたいと思います。
私はモメンタムの東京オフィスで4年働き、本社であるNYオフィスに異動になったので、同じ会社内の異動で、仕事内容も社風も同じ、ワールドワイドの会議で会った顔見知りも何人かいるし、そんなに違う環境であるとは思っていませんでした。そんな甘い考えは二方向から打ち砕かれました。
まずは仕事の進め方の違い。出社するともちろんデスクやPC、名刺や電話等はなくそれを揃えることから始まりました。社内の申請システムやプロセスも違うところで、誰に何を頼むべきなのかもわからないまま進めなければなりません。人事や総務の仕事範囲も日本とは違います。スパイのように入念に観察し、誰が何をしている人なのかを見極め、進めていきました。どこにでもいる「社内をなんでも知っている優しい人」を見つけると、話は早く進みました。
最初に頼まれた仕事は社内の終わったプロジェクトのビデオ制作。賞に出したり、イントラやYoutubeに載せたり、得意先の社内プレゼン用です。通常のプロジェクトと違い予算もなく、東京オフィス勤務時であれば、仕事というより仕事の合間にこなすもの。
担当営業である私は、調査からインサイトの掘り出し、クリエイティブの切り口、エクセキューションのメディア選定などを理解しているのは当たり前なので、私とビデオ制作1人の計2人で1週間もあれば制作完了していました。ところが、NYではクリエイティブディレクター、アートディレクター、コピーライター、スクリプトライター、ビデオプロデューサー、プラス、ビデオ制作会社の営業、プロデューサー、アニメーター、デザイナーと私の計10人でスタートしたのです。
そこで学んだのは、出ない働き方。私は営業として、クリエイティブや戦略、ナレーションなどに口出しすべきではありません。とはいえ、得意先の意向は私が知っているところなので、進め方はとても難しいです。けれどみんなが忠実にそこを守り、個人能力に頼らずに丁寧に仕事をしているから、みんな毎日6時に帰れるのだと思いました。全ての情報を10人全員で共有し、1人が休んでも何とかなります。代わりがいるのです。
日本だったらクオリティやスケジュールを最優先し、数人で徹夜して仕上げてしまうでしょう。ですがそういう仕事の仕方を常にしていると、その人がいなくては何もできない状態になり、長期間休むことなどできなくなります。そこのバランスを崩さずに仕事をできているのはすごいと思いました。本当にみんな6時に帰るのです。7時にはオフィスはいつも空っぽでした。1回だけ、ピッチ前日夕方6時からミーティングし10時まで作業した事はありましたが、皆本気でキレていました。
もうひとつは消費者行動の違いです。日本でもTwitter, Facebook, Youtube, Foursquare, Instagram, Linked In, Tumblr等々活用している人もたくさんいますが、全てのソーシャルメディアを毎日使いこなしている人はどれくらいいるのでしょうか。全てアメリカからきたものなので、アメリカのが人々の生活に浸透しているのは当たり前なのですが、人々のメディア対応の構造をも変化させるほどの浸透具合でした。例えば、友人と携帯用のブルートゥースのワイヤレスイヤホンを買いに行った時、価格は$15~$50くらいで、陳列されている商品の違いがわからないというと、その場で携帯でアマゾンのアプリからのレコメンをチェックし、レコメンが1番高いものやクレーム内容について比較してくれて、満足して1つの商品を選ぶ事ができました。
また、ゲイの友達とバーに飲みに行くと、Foursquareでそのバ―にチェックインしている人の顔写真やバックグラウンドをチェックし、ナンパするということが多々ありました。
妊娠すると胎児のエコー写真でFacebookページを作ったり、離婚裁判中の友人から、不利になるから写真のタグ付けを全て外してくれと頼まれたり、生活の一部というか、オンラインとオフラインの区別がつかない感覚でした。このような消費者の行動の変化はコミュニケーションの仕事にはとても影響します。
記者会見をライブでオンライン中継し、その場でTwitterのタイムラインを流し、そこからの質問にセレブに答えさせたり、イベント会場でFoursquareを使い人の流れや質をチェックしその場にいる人に最適のコンテンツを提供したりなど、ソーシャルメディアの新しい使い方に常に挑戦しなければなりませんでした。企画時も、「どうソーシャルメディアでバズを起こせるのか」を優先事項として企画することが多かったです。ATL(Above the line)のテレビ・雑誌などの広告は、ソーシャルメディアを使ったプロジェクトをサポートするために制作することが多く、ブランド認知のために制作することはありませんでした。
さすが、Empire State of Mind(注)のNY。街自体にすごいエネルギーがあり、何をしててもいい刺激を受けられる、貴重な経験となりました。
NYで働いていた時のものなので1年前のケースになってしまいますが、担当した事例をご紹介します。
(注)Empire State of Mind,:米国のヒップホップアーティスト、ジェイ・ZとR&B歌手アリシア・キーズによるコラボ曲で2009年10月にリリースした。今ではNYを象徴するヒット曲とされている。
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他社事例ですが、コロンブスサークル駅をジャックした、ING NYマラソンのOOH写真5枚
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