急拡大するリスティング広告市場
2011年日本の広告費は、約5.7兆円と言われ、そのうちインターネット広告費は約8000 億円あると言われます。今後おおよそ3年ぐらいで、ネット広告費は1兆円を超え、新聞・雑誌・ラジオの合計(約1兆円)に並びます。とりわけ検索連動型広告は急成長を続け、約2653億円(モバイル460億分を含む)の売上があり、すでに雑誌広告市場約2500億円を上回る市場となっています。
さて、今日はSEMと言われるサーチエンジンマーケティングの中でも、もっとも成長著しいリスティング広告についてお話をしていきたいと思います。
SEM(サーチエンジンマーケティング)の基本について
読者の皆さまは、よくご存知かと思いますが、確認のためにも基本的なことを書いておきます。
リスティング広告は、GoogleやYahoo!といったメディアで検索した場合に表示される検索結果として広告掲載ができる商品です。検索結果には広告だけではなく「自然検索結果(オーガニック)」も同時に表示されており、このオーガニックの検索順位の上位に表示されることも、昨今インターネットマーケティングの集客上の差別化ポイントになっています。このオーガニックと言われる非広告部分に上手に掲載するための手法をSEO(サーチエンジン最適化)と言います。
企業がリスティング広告に注力する理由
多くの場合、「消費者が多くいる場所に、広告を出す」というシンプルな理由によって企業は広告投資を行います。消費者が多いだけであれば、規模の原理から言って、マスメディアを活用した方が効果は高いのですが、消費者の購買プロセスはAIDMA→AISASへ変化したと言われるように、検索行為が購買行動に密接であるため、広告対象として非常に魅力的と考えられています。
加えて、広告主にとっては使い勝手の部分でも魅力があります。成果報酬型(クリック課金)、自由な期間に少額から掲載できる、投資対効果が可視化しやすい、細かなターゲティングも自由自在など、多様な理由があり、リスティング広告は多くの企業から支持を得ています。
リスティング広告の落とし穴
一見、いいことづくめのリスティング広告ですが、短期のROIばかりを追求しすぎたために行き詰まってしまう企業も数多く見られます。効率化を追求しているのに、効率的ではなくなってしまうのです。
一例ですが、ある企業では、短期的なROIのみに走ってしまい、企業としての基本的なコミュニケーションの開発や各種企画コンテンツなどへの投資が行われませんでした。社内の業務報告の中心は獲得数や単価の話ばかりで、事業会社も広告会社も、成果に一喜一憂してしまう。広告を通じて過去届けてきたメッセージも次第に到達しなくなり、過去に築かれたブランド資産を食いつぶしながら、競合企業に対して不利なポジションに落ちて行ったのです。
自社・競合・顧客の変化によって、どのようなフォーメーションで戦うべきか、企業によって設計すべき戦略は異なります。従って、リスティング広告もその組み合わせの中の一つとしてとらえる必要があります。アナログ広告中心の企業ならば、デジタル広告を組み合わせてみる。デジタル広告中心の企業ならば、アナログ広告の活用を検討してみる。新しい目線で、最適な組み合わせを行えば、競争力は飛躍的に向上する可能性があります。
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