永友鎬載(電通 コピーライター/2000年秋・基礎コース、2001年春・上級コース修了)
言い訳から始めさせてください。「失敗から学ぶことが多い」と思い、
このコラムをスタートしたのですが、実際のところ、
「自分のためになった大失敗」って書きづらいですね…。
というのも、その経験は競合プレゼンで負けたものが多く、
世に出ていないものなので説明しづらいというか。
すごく恥ずかしい経験なので、書きづらいというのもあるのですが。
すいません、そんなことを思いながら最終回のコラムを書かせていただきます。
昨年末から2月にかけてかかわった仕事で、
ユニクロの「ヒートテック10万人応援プロジェクト」のWebサイトがあります。
ユニクロが寒い職場で働く人を応援するために、
ヒートテックを10万人に配るというキャンペーンの一環です。
プレゼント応募の窓口となるサイトだったのですが、
働く人を応援するという意味をこめて、
漁師、りんご農家、日本酒の蔵元、雪国の旅館女将など、
さまざまな職場で働く22人に取材をさせてもらい、
寒い職場のつらさや仕事のやりがい、
ヒートテックを着た感想などを掲載していきました。
ひとりの人につき、5つのキャッチコピーが写真とともに映し出され、
ボディコピーで具体的に語っていくという流れです。
数人の若手コピーライターで手分けしてコピーを書きつつ、
僕自身はサイト全体のコピーをチェックする立場でした。
そういう仕事の進め方は初めてで新鮮だったのですが、
若手のコピーを見て思ったのが、
キャッチコピーはいいものがあっても、
5つのコピーの流れがスムーズでなかったり、
ボディコピーでうまく着地できてないなあと感じることが結構ありました。
申し訳ないと思いながらもたくさん赤字を入れたり、書き直したりしました。
自分自身も含めてですが、若手のコピーライターがよく陥りがちなのが、
こうした「構造で考えるのが苦手」であるケース。
キャッチで心をつかんでいるのに、
ボディや押さえのコピーでは商品の特長に落ちていなかったり、
そもそも落とそうとしていない場合があって。
もったいないなあと思ったりします(僕自身もよく怒られましたし怒られます)。
先日、TCCの一次審査をさせていただいたのですが、
いい広告は総じてすべてのコピーの流れがわかりやすく、
すごく丁寧につくられている印象がありました。
内容ももちろんよくて、受け手の気持ちがよく考えられています。
よくコピーライターの仕事は、キャッチコピーだけに目がいきがちですが、
プロを名乗るからには、構造を計算して書かなければいけないと思うのです。
それができると、ボディや押さえのコピーにこの情報を入れれば
キャッチコピーをもっと飛ばすことができる、という風に考えることもでき、
広告の完成度はより高くなっていきます。
当たり前のことを書いておりますが…、
自分も含めて若手コピーライターがよく陥りがちな失敗なので、
書かせていただきました。
ちなみにヒートテックの仕事はかなりの反響があって、
段階的につくっていたWebサイトの途中で10万人の応募が集まり、
感想が多く寄せられました。昨年は震災もあったので、
寒い地方で働く人たちの声に勇気づけられた、という感想も結構あり、
違う意味での広がりを感じられる仕事でした。
日々失敗が多いですが、いい広告をつくっていけるよう、がんばりたいと思います。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
永友鎬載(ながともこうさい)
1978年高知県生まれ。電通 第2クリエーティブプランニング局コピーライター。TCC最高新人賞、朝日広告賞、広告電通賞、消費者のためになったコンクール・経済産業大臣賞、日本雑誌広告賞など受賞。
永友鎬載さんのコラムは今回で終了です。次回(6月4日)からは栗栖周輔さん(クリエイティブユニット コル)のコラムを掲載します。
バックナンバー
コピーライター養成講座卒業生が語る ある若手広告人の日常
- 2012年4月 大津健一「幸運の女神は最終講義で微笑んだ」
- 2012年3月 大重絵里「考え続けられる人が、輝いている」
- 2012年2月 山川力也「コピー」じゃなくて、「いいコピー」を書くために。
- 2012年1月 安田健一「土俵に上がれない時代は、土俵づくりから。」
『6/30開講 コピーライター養成講座上級コース』
「コピーの力」で物事を解決する力や「商品の状況」や「ターゲットのインサイト」を読み取る力を身につけ、コピーに落とし込むスキルを身につけます。コピーを書く力を持つ人が、商品やターゲットの状況、インサイトなどを「聞きだす力」を身につけ、「理解」し、ことばというカタチにすることができたなら…。そうした企業に求められる「コピーライティング」の力を身につけるのが上級コースです。