フェイスブックはコミュニケーション重視
——ツイッターとフェイスブックを運用されて違いは感じましたか。
塩入 フェイスブックは個人名が実名で表示されることもあり、よく言えば炎上はしない半面、最初は盛り上げに苦労しましたね。コメントがなかなかつかなくて。
山本 ツイッターは好きなゲームの情報をリアルタイムに受け取る場所として認知されていますが、フェイスブックで同じようにニュースを出しても反応はなく、逆に宣伝扱いされて「いいね!」があまりつかなかったりします。その点では運用に工夫が大事で、ゲーム会社の中身が見えたり、ゲームのプロデューサーが写真で登場したりと、コミュニケーションを重視しています。
今では固定ファンもついていて、毎回熱いコメントをくれたりしますね。写真を多く上げていることもあって情報もわかりやすく、お客さまとの距離感はとても近くに感じています。
塩入 フェイスブックのほうがツールとしてさまざまな機能が実装されているので、うまくいくと情報の拡散も激しいですね。企業の公式ページとは別にガンダムのフェイスブックページを立ち上げて「一年戦争診断」というアプリをリリースしたところ大変な反響で、今では7万5000人のファンがつきました。こうしたアプリの実装はフェイスブックならではです。
また、拡散の方法としてツイッターにはRT、フェイスブックには「いいね!」がありますが、意味的には似ているものの、RTは自分のフォロワーへ情報を伝えるという点でハードルが高い。フェイスブックの「いいね!」は気軽につけられて、その結果情報が拡散されるという点で拡散の効果が大きいなと感じています。
——ユーチューブでゲームの動画も公開されていますね。
塩入 ユーチューブはツイッターやフェイスブックよりも前に運用を始めました。ゲームの動画はプロモーションの効果が非常に高いのですが、公式サイトに動画ファイルを用意するだけではなかなか拡散しませんし、そもそも公式サイトにも来てもらえない。ところがユーチューブに動画をアップロードするとmixiやブログなどで気軽に紹介してもらえます。大手ゲームブログになると公式サイトよりも再生回数が多い、なんてこともあり、単なる動画置き場ではない可能性を感じています。。
とはいえユーチューブ自体はソーシャルメディアという意識はないですね。ユーチューブを始めた当初も管理が難しいということでコメント機能をオフにしており、ユーチューブだけでのコミュニケーションは実現できていません。どちらかというとソーシャルメディアを通じてユーチューブの動画が拡散されるという組み合わせに期待をしていますし、そういう前提で運用しています。
ゲーム機のソーシャルメディア連動に取り組みたい
——ソーシャルメディア運用で「これは失敗だった」という思い出はありますか。
塩入 フェイスブックを始めた頃はある程度ノウハウもたまっていたのであまり失敗はないのですが、ツイッター初期の頃はいくつかありましたね。特に実感したのは時事ネタの扱い方です。時事ネタに関する発言はいろいろな価値観があり、よかれと思って発言した内容に賛否両論集まったこともありました。時事ネタに関する発言は難しい、といういい勉強になりました。
山本 フェイスブックの場合、ツイッターのノウハウを吸収していることもあるのですが、担当者の顔が見える運用体制にしていて、バナー画像も担当者の顔を見せたり、顔を出さなくても人形を用意してみたりと、ファンの人にかわいがってもらえるよう努めています。そうすることで自然と嫌なことを言う人も少なくなり、アドバイスをくれたり応援してくれる人も増えてきますね。
——ソーシャルメディアを通じて今後取り組みたいことはありますか。
山本 フェイスブックはすぐになにか結果を出すと言うよりも、長い目で見て信頼を獲得していく場所だと思っていますので、まずはファン数の獲得に努めたいですね。その上でもっとゲームのように楽しめるアプリなどを定期的に企画していきたいと思います。
塩入 ツイッターもお客さまとの双方向性を大事にしたいと思います。PS3やPSPで過去のゲームを遊べるサービスがあるのですが、ツイッターで「過去のタイトルで遊んでみたいゲーム」のアンケートを取ったところ大変な反響で、1000件以上もの回答をいただきました。そのアンケートの中で人気のタイトルを実際に配信することができ、こうした取り組みにソーシャルメディアの可能性を感じますね。
山本 あとはリアルとの連携ですね。バンダイナムコゲームスはイベントをたくさん開催しているのですが、何もしなくても会場の様子をツイッターやフェイスブックで発信してくれているお客さまがたくさんいらっしゃいます。この点はバンダイナムコゲームスとしてももっとプロモーション担当とイベント担当が一緒になって、イベントの楽しさを会場から拡散できる仕掛けを用意したいですね。
——「太鼓の達人」のようにゲームにソーシャルメディアを取り込んでいく可能性もあるのでしょうか。
塩入 今はほとんどのゲーム機がネットにつながっていて、ネットゲームとの境もなくなりつつあります。ゲーム機のソーシャルメディア連動やネット連携は取り組んできたい課題ですし、着々と考え始めているところです。
——インタビュー雑感
ソーシャルメディアだけでなく新しい施策に取り組む場合、社内の説得がひとつの壁になる、という話は多く耳にします。バンダイナムコの場合はガイドラインの準備によって部門の理解を深めつつ、そのガイドラインを作るためにもまずは運用が必要、という流れは、運用を開始するためにも非常に合理的と感じました。(アジャイルメディア・ネットワーク)
インタビュー担当 AMN 甲斐祐樹
高柳 慶太郎「ソーシャルメディア活用 先進企業に聞く」バックナンバー
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