文/Ys and Partners 代表取締役社長 結城喜宣
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※このレポートは、『宣伝会議』5月15日号に掲載されたものです。
往年の広告制作者が参加、グーグルの実験的なキャンペーン
最後に、グーグルの実験的なキャンペーン「Re:Brief」の取り組みについて紹介したい。これには感心。私も見入ってしまった。
デジタルの歴史が始まってまだ日が浅い。プログラマーたちがウェブをつくり、その後、ウェブデザイナーが必要となり、そしてマーケーターが不可欠となった。マーケーターは、特に検索テクノロジーやツールに特化し、ページランキングやインプレッションを上げることに知恵を絞った。
ブランドのマーケーターたちは上流と呼ばれ、下流のプロダクションとは分けて語られるようになった。かつてのブランドのストーリーテラーたちは、トラディショナルであると言われ、あたかもデジタルとは別物であるかのように扱われてきた感は否めない。
ここにきて米国では 、私たちの専門領域であるストーリーテリングが、デジタルの歴史上、初めて脚光を浴びることとなった。これは、ブランド戦略やクリエイティブに携わるプランナーやクリエイターたちがもっとも腕を磨いてきた技術であり、積んできた経験である。彼らが、テクノロジストやイノベーターと組むことで、現代的かつ実際的なブランドストーリーが生まれるのだ。
そのもっとも象徴的な実験をデジタルの覇者であるグーグルが行っているのは、極めて素晴らしいことである。グーグルの若いクリエイターたちは、往年の広告制作者とチームを組み(しかも70~80代の大御所たち)、ストーリーテリングに関する教えを乞うているのが印象的であった。
私はこの試みを多いに支持したい。そして、日本で少しでも多くのブランドマーケターがストーリーに目を向けてくれることを期待している。
Ys and Partners 代表取締役社長 結城喜宣(ゆうき・よしのぶ)
日米に拠点を置くCreative Brand Communications – Ys and Partnersのエクゼクティブ・クリエイティブディレクター。JWTを経て、2002年に日本ブランドを世界で有名にすることをミッションに、米国カリフォルニア州に本社設立。2005年には横浜市に日本支社を設立。日米グローバル企業のブランド・コミュニケーションを成功に導いている。ブランド戦略に基づいたストーリーテリングを得意とする。6月から「アドタイ」にて、コラム連載「アメリカ女子高生のデジタルネイティブ日記」(仮題)を連載予定。