【カンヌ直前集中連載】世界の広告賞をおさらいしよう(2)

デザイン重視のADC

日本のアドパーソンの間で最も親しまれているのは、おそらくアート・ディレクターズ・クラブ賞(ADC)だろう。1920 年、広告と芸術との融合を信じたアーネスト・エルモ・カルキン(アートディレクター)が創設。その後、紆余曲折を経て現在に至るが、いまだに初心を忘れず、広告におけるデザインを重要視している。そのため、賞のカテゴリーは、広告、インタラクティブ、デザインの3 種類。デザインの中には写真やイラストも含まれる。賞は金、銀、銅、そして最近、ブラック・キューブなる最高賞を設定した。また、2 年前からデザイズムと呼ばれる特別賞を設定し、世界や人間の生活などの大きなインパクトを与えた社会的なキャンペーンに与えられる賞を設定。「デザインが社会を変えるのを何度も見てきた。そういった努力に敬意を払うための賞」と、ニューヨークADC の賞ディレクター、ジェン・ラーキンは言う。また、若いクリエイターの登竜門 ヤング・ガンは未来のマディソン・アベニューのクリエイターの養成に貢献している。

デザインを重要視するニューヨークADCのトロフィー。2年前から最高賞としてブラック・キューブが提供されるようになった。

ニューヨークADCの賞の担当者ジェン・ラーキン。ADCに十数年勤めるベテラン。

ニューヨークADCは、よくさまざまな展示会を行うことでも有名。かなり広い展示会場を持っている。

ADC にはもうひとつ有名な要素がある。海外の会員が多いことだ。最初に海外からの会員を受け入れたことがその理由になっているのだろう。2011 年度、賞を最も多く獲得しているのは、米国に次いでドイツ(39 点)、英国(21 点)、そして日本(15 点)であった。

ADC はここ数年、理事長に話題の若手クリエイターを選定し、クラブに新風を送りこんでいる。12 年度の理事長は、泣く子も黙るバーバリアン・グリープのベンジャミン・パルマー。“ ビジョナリー”(未来予言者)と言われる彼が、一世紀を超す歴史を持つADC にどのようなメスを入れるか、すでに業界の話題になっている。

2012年度のADCプレジデントに選定されたバーバリアン・グループのベンジャミン・パルマー。

躍進を続ける屋外広告賞OBIE

OBIEを運営するOAAAは、全米の屋外広告に関連する会社1000 社あまりをメンバーとする組織である。1942 年に創設され、今年69 周年を迎えている。

この古いメディアが最近、リバイバルを迎えている。経済不況の影響で不振を続ける広告業界の中で、屋外広告は唯一11 年に前年比4.5%の増収を見せているのだ。それというのも、ここ数年のテクノロジーの革新で、屋外広告メディアにクリエイティブ革命が起こっているからだ。「ビルボードからストリート・ファニチュアと呼ばれるバス停、ベンチ、地下鉄などから、バーや店内に見られるデジタルディスプレーまで、非常に広範囲のメディアを“ 屋外” という言葉で括っている」と、OAAA のOBIE 担当者マケダ・ケファリーは説明する。

ここ数年でリバイバルを迎えている屋外メディアの広告賞、OBIEのトロフィー。

屋外広告協会OAAAのObie賞の担当者マケダ・ケファリー。屋外広告もデジタル化で一種の革命を迎えているという。

審査は毎年2 月、マイアミに7人の審査員を集めて行われる。エントリーの数は500 前後と少なく、ほとんどは米国の広告会社やメディア会社からのものだ。だが「最近は外国からの応募も少しずつ増えている」とケファリー。「テクノロジーが変わっても、屋外広告の要となるのはアイデア。アイデアが斬新で効果的なものであれば、昔からあるビルボードでも賞は獲れる。革新的なテクノロジーを使う必要はない」と言う。「日本からのエントリーがほとんどないのは残念。日本には斬新なアイデアの屋外広告がたくさんあるはず」。

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