【カンヌ直前集中連載】世界の広告賞をおさらいしよう(2)

マーケティング効果を讃えるEffie

Effieは、1968 年にニューヨークのマーケティング協会が立ち上げた賞である。現在では、非営利団体エフィー・ワールドワイド社(EWI)が賞の提供者となっている。

エフィーは、他の賞が主にクリエイティビティに重点を置いているのに対し、キャンペーンの効果を重視している唯一の賞である。EWI は、全世界に約40 の支部を持ち(メキシコ、フランス、ブラジル、フィンランド、中国、ベルギーなど)、エントリーされた作品はまずローカル支部で審査され、金、銀、銅の三段階の賞が与えられる。さらに、金の中からグランド・エフィーが選ばれる。また、4 カ国以上にまたがって行われたキャンペーンに該当するグローバル・エフィー賞がある。この賞は、まずそれぞれの支部で選ばれたグローバル・エフィー賞候補作品がEWI の本部のあるニューヨークに送られ、そこで最終的に選ばれる。

Effie

米国マーケティング協会が提供しているEffieは、マーケティング効果に与えられる賞。

今年のグローバル・ゴールドには、キャンディー、スニッカーズの「お腹がすいている時は我を忘れるものよ」キャンペーン。BBDO制作。

「マーケティング効果に与えられる賞なので、キャンペーンが行われた土地の人にしか判らない要素もある。そのために、支部の存在が不可欠」と、EWI の理事長メアリー・リー・キーンは説明する。

キャンペーンの効果を賞の主眼とするEWI は、これまでにもさまざまな調査会社と効果測定インデックスを模索してきているが、今年初めて、エフィー・エフェクティブネス・インデックスなる効果測定基準をカンヌで発表して話題となった。

「日本のある広告会社から、エフィー・ジャパンの設立の話が来ているが、そうなる日が一日も早くくることを祈っている」とキーン。

米国マーケティング協会の理事長メアリー・リー・キーン。Effi¬e賞のグローバラゼーションが夢。

日々生まれては消える広告賞ビジネス

横綱、関脇、小結など、米国にはこういったランキングにも入らない広告賞が毎日生まれては消え、消えては生まれている。このトレンドは米国に限ったことではないだろう。賞は成功すればコンスタントに収入の入ってくる実入りの良いビジネスだ。そのために彼らはできるだけ多くのエントリーを獲得することを考えている。例えばWebby に至っては、100 を越すエントリー・カテゴリーがある。しかも審査員は、広告やマーケティングに関係のないデヴィッド・ボウイ、マーサ・スチュワートのような有名人。まさに賞ならぬショービジネスである。

本当に自分の作った作品の価値を問いたいために国際広告賞にエントリーする人は、まず、賞の質、評判、審査員、カテゴリーなどをよく研究すること。特に、経済不況の中ではそれが必須である。

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楓セビル
青山学院大学英米文学部卒業。電通入社後、クリエーティブ局を経て、1968年に円満退社し、ニューヨークに移住。以来、アメリカ広告界、トレンドなどに関する論評を各種の雑誌、新聞に寄稿。著書として「ザ・セリング・オブ・アメリカ」(日経出版)、「普通のアメリカ人」(研究社)など。翻訳には「アメリカ広告事情」(ジョン・オトゥール著)、「アメリカの心」(共訳)他、多数あり。



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