「1000いいね!を集める旅」で災害の記憶を風化させない異文化交流

東日本大震災の被災地では、まだまだ復興への課題が山積しているが、被災地以外では、震災時のパニックが、徐々に人々の記憶から薄れつつある。しかし、首都圏を直下型の大型地震が襲えば、被害の規模は東日本大震災の比ではない。東京都では企業やNPOなどとともに、防災訓練や備蓄に取組むが、3700万人の人口を抱える首都圏では、国や自治体の努力だけで大規模災害から人々を守るのは不可能である。また、復興への道も相当険しいものになることは想像に難くない。

河田惠昭・関西大学社教授は「企業、教育機関、コミュニティ、家庭において、災害の記憶を風化させないことに努める、日頃から水や食料の備蓄を心がける、通路に避難の障害となるものを置かないなど、物心の両面から万一の事態に備える習慣づけを」と呼びかける。

学生団体いいね!が災害と復興について学ぶツアーを企画

一方、「学生団体いいね!」では、災害の記憶を風化させないため、国内だけでなく、海外にも目を向け「1000いいね!を集める旅」を企画している。代表の西山千尋さん(慶應義塾大学)と小原嘉紘さん(明治大学)が中心になって、2004年のスマトラ沖地震・津波で大きな被害を受けたスリランカ・南インドへの「スタディーツアー」を企画し、異文化交流とともに、災害と復興について一緒に学ぶ仲間を募っている。

1000いいね!を集める旅 1000いいね!を集める旅2
「1000いいね!を集める旅」スリランカ・南インドの訪問先の様子

死者 22万人、負傷者 13万人という被害をもたらしたスマトラ沖地震の被災地はインドネシアからソマリアまで広範囲に及ぶが、内戦状態にあったスリランカは、国や自治体が機能せず、困難な状態が続いていた。日本はいち早くスリランカに支援を差し伸べ、2009年の内戦終結後も支援を行ってきたが、東日本大震災以降は支援活動が縮小している。

そこで、「学生団体いいね!」では、(1)ホームステイやYOSAKOIイベントにおけるボランティア活動、(2)現地の人々とともに、震災当時から今までの「復興」を振り返るとともに、国を超えて被災地の「これから」を考える、(3)未来を共に築く「10年後もアツく語り合える友人」を創る、といった目的を掲げ、様々なプログラムを企画している。

ツアーは9月6日~9月16日まで、両国合わせて11都市を訪れる。大学生のほか、社会人の参加者も広く募集している。東日本大震災の発生直後からボランティア活動に取組んできた代表の西山さんは、その経験を踏まえ「日本とは全く違う生活様式のスリランカと南インドですが、同じ津波を経験した身だからこそ共感しあえる部分がある」と語る。

「学生団体いいね!」事務局フェイスブックページ
応募は7月1日まで。詳しい説明会は6/29、7/1に代々木オリンピック記念青少年総合センターで行う(要事前申し込み)。申し込み・問い合わせは「学生団体いいね!」事務局フェイスブックページから

「ライフスタイルや文化の違いを超えて、これからの未来について力強い議論を交わし合う場にしたい。教科書やテレビを通して知るだけではなく、現地で強烈な体験をしてこそ、未来のために本当に必要なことが見えてくると思う」(西山さん)。

激甚災害の被災、そして復興への道のり。異国での体験を通じて、自分自身を見つめなおすとともに、仲間との絆を育む場づくりに、大学生自身が取組みはじめた。学生団体いいね!では、帰国後、体験をもとに、参加メンバー1人ひとりが、「日本を元気にしていける人材に成長していくことを目指したい」という。

本企画には、一般社団法人SPUTNIK International やGNインターナショナルが協力する。SPUTNIKは、スリランカにおける国際教育支援で実績があり、GNインターナショナルはインド各地にネットワークをもち「マザーテレサ・ボランティア」の旅をコーディネートしてきた実績のある企業だ。

阪神淡路大震災の起きた1995年はボランティア元年と言われる。2011年の東日本大震災では、より多くの大学生がボランティア活動に参加し、経験値を高めつつある。河田惠昭・関西大学社教授は、防災対策や被災したときの被害を最小限に抑える減災対策においては、「大人の男性は学習能力が低く、子どもや女性のほうが優れた判断ができる」という。その意味で、子どもの視点により近く、ソーシャルメディアなどを活用して社会に発信する能力に長けている大学生や若者からの提案に期待が寄せられる。

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