「宣伝会議インターネットフォーラム2012」が6月6日、東京都内で開かれ、フェイスブックや動画活用、オウンドメディア、ECなどを、デジタルメディアやツールを活用したマーケティングをテーマに多くのセミナーが行われました。その一部を6月から7月上旬にかけて、本欄で紹介します。
関澤昌弘氏(伊藤ハム/広報・IR部広報室担当課長)
「ハム係長」のファン2万人突破
当社が扱うハムやソーセージはブランドが立ちづらい商材です。コモディティ化が進み、商品の低価格競争が激化する中で「いかにブランド指名買いを醸成するか」が最重要課題でした。ただし広告展開をするにはコストがかかりすぎます。
そこで、これまでのマス広告中心の短期的なプロモーションではなく、お客様と直接コミュニケーションを構築できる、中長期的な取り組みとして、ソーシャルメディア展開を行うことにしたのです。お客様が語りかけやすいメッセンジャーを立てることが有効と考え「ハム係長」というキャラクターが生まれました。候補キャラクターの中で、女性社員に人気があったのがこの「ハム係長」だったのです。
2011年3月下旬にGREE(グリー)公式アカウントを開始。同年4月には公式フェイスブックページをスタートし、2012年6月現在、ファン数は2万3500人強です。
ハム係長が企業の好意度に貢献
ソーシャルメディアの中でフェイスブックを選択した理由は、同業他社が取り組んでいなかったこと、先行して実施していたGREEとは特性の違うメディアを組み合わせ、最適なコミュニケーションを見極めようとしたこと、将来的に外国語ユーザーもターゲットにおけるということ、が挙げられます。
フェイスブックでのキラーコンテンツは「ウインナーの飾り切り」の紹介と、ハム係長のおしゃべり。おしゃべりな係長という設定でお客様と積極的に会話をしています。ファンの中には、ハム係長の絵文字を考案したり、ハムで作ったリアルなハム係長の写真や動画の投稿をしてくださる方も出てきています。
ターニングポイントとなったのは2011年6月、主婦層に人気が高いNHK総合「あさイチ」への出演でした。ハム係長のファンは男性が多かったのですが、この年の5月と6月でファンの属性を比較すると35歳~44歳女性の割合が増加し、男女比はほぼ半々に。2012年の累計で「ページを話題にしている人」の属性は男女比が逆転し、商品の主な購買層である女性にファンになってもらえているとわかりました。また番組放映後に書き込まれたコメントに対してすべて返信したところ、(ITジャーナリストの)イケダハヤトさんに「ハム係長の徹底した全レスっぷりが凄い件」というタイトルでブログに取り上げていただきました。
フェイスブックでは、単にファンを増やすのではなく、密度濃くコミュニケーションをとることに重きを置いています。調査では「ハム係長を知ってから伊藤ハムに対する印象がよくなった」と答えた人がフェイスブック登録者で88%となり、店頭想起率などもよい反応が得られています。
ソーシャルメディアは、企業がマーケティングを行うことを目的として存在しているわけではありません。生活者が主役の場ですから、マーケティングをさせていただくという謙虚な気持ちが重要。接点をもってくださったお客様に対してコンシェルジュ的な姿勢を心がけ、友達になりたいと思ってもらえるよう取り組んでいます。ソーシャルメディアでのコミュニケーションは、生身の人間同士の会話。企業人としての意識を持ちつつ、一人の人間としての対応をすることが、私の考えるソーシャルメディアマーケティングの心得です。
次回はデルです。
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