「宣伝会議インターネットフォーラム2012」が6月6日、東京都内で開かれ、フェイスブックや動画活用、オウンドメディア、ECなどを、デジタルメディアやツールを活用したマーケティングをテーマに多くのセミナーが行われました。その一部を6月から7月上旬にかけて、本欄で紹介します。
千歳敬雄氏(デル/コンシューマ&SMB事業本部オンラインマーケティングマネージャ)
IMCの観点で戦略を立てよ
一般消費者と中小企業に対するオンラインマーケティングおよび全社のソーシャルメディアに関与する立場から、EC事業者のオンラインマーケティングの現状をお伝えしたいと思います。
EC事業者にとって現在のオンラインマーケティングが置かれた環境は、「メディアの影響力よりも個人の影響力が上回る」ことがある状況です。
当社の調査では、オンラインだけで接触しそのままオンラインで購入する消費者は全体のわずか28%です。残り72%は、オフライン媒体やリアル店舗を含め多様な経路を経て購入します。そう考えると、EC事業者と言えども、オンラインマーケティング以外も含めたIMC(統合マーケティングコミュニケーション)に基づいたコミュニケーション戦略が重要です。
マーケティング戦略には、相手(Who)、ブランド・対象物(What)、場所・様式(Where)の3つの要素があります。これまでEC事業者は、ものを売る場所(Where)に高いウエートを置いていました。しかしIMCの観点では、Who、What、Whereすべてのデザインを見直すことが必要です。
購買プロセスは行ったり来たり
消費者の購買プロセスは今、環状になってきています。これまでマーケティングプランを考える際には、AIDMAやAISASといった直線的な購買過程を念頭において設計されていました。しかし一方で、実際の消費者行動としては、購入前に「検討‐評判」「検討‐評価」の間を行き来する場合も珍しくありません。商品を知る(知覚)、探す(探索)、相互作用、購入する(購買)すべてのきっかけに大きく関与しているのがソーシャルメディアです。ソーシャルメディアが、この環状の消費者行動を加速させるインフラとなっていると考えられます。そこで消費者の購入に影響を与えるのは消費者個々のソーシャルグラフや好みであったりします。ゆえに、今後は、企業と消費者の間だけで展開する「閉じたCRM」ではなく、オープンなソーシャルCRMを通じた顧客獲得といった視点も重要になるでしょう。
インターネットの利用目的はコンテンツの消費から人間関係の活性化へシフトしています。すべての消費者は常に誰かの影響を受けており、オンラインの商圏はもはやメディアという「場」ではなく「人」そのものと言えます。消費者1人につき、物事の偶発的な認知を形成するWeak Ties(弱い紐帯)を50~100人ぐらい、購買へ強い影響を与えるStrong Ties(強い紐帯)を5~15人程度持っていると言われています。そのため、オンラインマーケティングではソーシャルグラフを踏まえたアプローチが重要です。
ソーシャルメディア上でのアクティブサポートを推進
最後に、デルのオンラインでのアクティブサポートについてお話しすると、フェイスブックページやツイッターでのレスポンスはもちろん、Yahoo!知恵袋では公式のアドバイザーとして、パソコンやインターネットに関する質問に専門知識を持ったスタッフが積極的に話しかけています。こうした取り組みは、短期的な収益以上に、消費者との新しいエンゲージメント活動として今後も強化していく予定です。
オンラインマーケティングはこれからもその重要性は増していきますので、変化に柔軟に適応しながら積極的に取り組んでほしいと思います。
次回は「基調対談:資生堂×トヨタマーケティングジャパン」です。
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