佐々木康晴の「CANNES LIONS 2012」レポート(2)

「CANNES LIONS 2012」レポート(1)はこちら

セミナーの出すぎに注意しましょう。

佐々木 康晴(電通アメリカ エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター)

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まだ今年は行ってないGutter Barの、3年前にとった写真です。明日こそ行こう。

カンヌの会場から、気持ちいい海沿いの道を風に吹かれて10分ちょっと歩いて、Hotel Martinezのところまで行くと、そこにGutter Barがあります。なんのことはないただのバー。しかしカンヌの期間中、なぜかここに世界中のクリエイティブの人たちが集まってきて、毎日夜通し飲みつづけます。道路は人で埋めつくされ、みんなが大騒ぎなので、こちらも声を張り上げないと会話が成り立たず、荒れた喉にビールがよくしみるんです。くーっ。ここで飲むビールは世界でも有数のおいしさ。業界の有名人もたくさん来ていて、かつて一緒に審査員をした仲間と再会できたり。もう、カンヌの第二会場みたいなところです。

しかし今年は、まだこのGutter Barに行くチャンスが無いっ。朝9時すぎから会場に行き、プレゼンターや題名を見ながら、内容が「当たり」であることを祈りつつセミナーに行列して参加。セミナーの合間にテレビCMやチタニウム応募作品のスクリーニングを見たり、地下に貼ってあるアウトドアやメディアの展示を見たり…。気がつけばあっというまに夜。みんなでご飯を食べながら情報を交換しつつ、しかしもうその頃にはニューヨークの時差ボケとエネルギー切れでヘトヘト…。さらに気がつけば午前3時。ああGutter Barが遠ざかる…。でも、それだけ今年のカンヌは盛りだくさんだとも言えます。とても全部見きれない!

セミナーは、毎日どれも超満員なんですが、当たり外れも多い印象があります。かつては各社の事例紹介みたいな内容が中心でしたが、今年はなんだか、各社みんな悩んでるような。次世代のクリエイティビティを作るには。ビッグデータと向かい合うには。ソーシャルメディアをうまく使うには。テーマ自体は気になるものが多いんですが、いざ出てみても、結局、まだはっきりとした答えが出てないという感じも。がんばれみんな。がんばろう自分。

そんななかで、ちょっと面白かったセミナーをかいつまんで紹介します。まずは中国のGroupMとRenren(人人網)のセミナー。登録者数が1.5億人を超えるRenrenのCEO、Joe Chenさんがいらしていたんですが、彼曰く「農場ゲームはFacebookよりも先にRenrenが始めたんですが、こっちのゲームにしかない特徴、それは、他人の野菜が盗めることです。むしろ盗まれることは、いい野菜ができているということで、誇らしいことなんです」と。 世界は広いなあ。日本人的インサイトだけにとらわれないようにしなきゃ。

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Jeffと対等に語り合う子供さん。小さい頃のあの無限の想像力、僕らもまだ持ってるはず。

それから、JWTのセミナー。CP+Bから移籍したJeff Benjaminが、世界を動かす若き天才たちを紹介しました。12歳のゲームクリエイター、アーケードゲームをつくる9歳の少年、12歳でTEDのプレゼンをした少女。

Childish(子供っぽいこと)はネガティブなことじゃないよ、物事を知らないことから生まれる好奇心が、アイデアをつくる原動力になるんだよ、と。子供たちからいろいろ学ばされました。会社で働く大人って、いろんなことに時間がかかって大変だね、とも言われちゃいました…。その通りだっ!

でも、こうしてセミナーで勉強するのもいいんですけど、やっぱり、せっかくカンヌに来たんですから、世界からやってきた業界人と交流しないとダメですよね。生の情報をとらないと。セミナーの出すぎに注意。エネルギーを温存して、今日こそGutter Barに行かなくちゃ。

【連載:佐々木康晴の「CANNES LIONS 2012」レポート】

第1回 カンヌ熱にかかりましょう。

佐々木 康晴(電通アメリカ エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター)
1971年生まれ。電通入社後コピーライター、インタラクティブ・ディレクターを経て、2011年9月より電通アメリカ出向、エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター。手がけたキャンペーンに、ユニクロ「UNIQLO LUCKY LINE」、Honda「ケートラ」、集英社「ワンピース感謝広告」など。2011年クリエイター・オブ・ザ・イヤー・メダリスト受賞。


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