「宣伝会議インターネットフォーラム2012」が6月6日、東京都内で開かれ、フェイスブックや動画活用、オウンドメディア、ECなどを、デジタルメディアやツールを活用したマーケティングをテーマに多くのセミナーが行われました。その一部を6月から7月上旬にかけて、本欄で紹介します。
片山義丈氏(ダイキン工業/総務部広告宣伝グループ長)
ユーザーの声を直接聞くチャンス
昨年は「節電」が新たな社会的テーマとなりました。東日本大震災による電力不足により、15%の節電が求められる夏。空調は多くの電力を消費することから、総合空調メーカーの責務と新たなビジネス展開として、Webによる「空調でできる節電情報発信」と「節電ソリューションサービス」のPRをエアコンの最終ユーザーに対して行うことになりました。
実は、当社ではこれまで最終ユーザーのニーズにダイレクトに耳を傾けることはほとんどありませんでした。当社がユーザーに直接、空調設備を販売するわけではなく、グループ販社を通じてゼネコンやハウスメーカーに販売しているからです。
当社にはWeb専属の担当者がいません。兼務でWebに従事する担当が「ぴちょんくんワールド」などの、主にB to C向けのコンテンツを企画制作しています。今回はB to B、B to C両方をターゲットとする「エアコン節電情報サイト」を急遽制作。Webサイトの運営や、リスティング、Yahoo!トップページバナーへの出稿など幅広いWeb施策を展開することになりました。新聞、テレビ、雑誌、OOH、SNSも含めた多面的な施策も行いました。
Webでは、ターゲットの関心度の高い順にリスティング、人気サイトへの広告出稿、Yahoo!トップページバナーと3つの施策を進めました。リスティングでは、一般的なワードから業務用の専門的なワードまで思いつく限り展開し、Web広告では、「Yahoo!」の節電特設サイトや、「レストラン店舗経営者向け節電特集」、「クックパッド」の節電レシピ特集などに出稿しました。
節電PR、BtoC向けは成功もBtoBは期待外れ
こうして大規模キャンペーンを展開したものの、成功した施策と失敗した施策に大きく分かれました。一般消費者に対するB to Cの節電コミュニケーションは大成功をおさめ、サイトを2分以上見てくれるユーザーも多くいたほどでした。しかし、B to Bの施策は期待外れ。「ユーザーの問い合わせをダイレクトに集め、節電ソリューションの売り上げにつなげる」という目的は達成できませんでした。
要因は4つあると分析しています。そもそも、昨夏のB to Bの節電は緊急対応課題であり新たに節電サービスを導入しなくても我慢すれば対応できたこと。2つ目は、ビルや施設のオーナーと実際に空調を使用するユーザーが異なる中で、購買の最終決定者のニーズをつかみきれなかったこと。3つ目はユーザーのセグメントが大雑把過ぎたこと。さらに4つ目は、B to Cの感覚でB to Bのコミュニケーションを展開したこと。最終ターゲットがあいまいになってしまい、「困りごと」を解決するソリューションになっていませんでした。
この反省を踏まえ、今年はターゲットを50kw~500kw利用する電力の中規模利用者に絞り、ユーザーの視点で「わかりやすいソリューションのコンテンツ化」を行いたいと考えています。
次回はA-Sketchです。
連載【インターネットフォーラム】バックナンバー
- (6)基調対談:資生堂×トヨタ「オウンドメディア運営は自社だけではできません」
- (5)デル「ソーシャルメディアの関与で購買行動は線形から環状へ」
- (4)伊藤ハム「愛されるキャラクターでソーシャルメディア・コミュニケーションが円滑に」
- (3)タワーレコード「ファン目線だからこそ共感され、絆が生まれる」
- (2)ネスレ日本「ゲーミフィケーションがサイト集客の定石を覆す」
- (1)特別対談:イナモト・レイ×本間充「コミュニケーションは20世紀の考え方です」