「宣伝会議インターネットフォーラム2012」が6月6日、東京都内で開かれ、フェイスブックや動画活用、オウンドメディア、ECなどを、デジタルメディアやツールを活用したマーケティングをテーマに多くのセミナーが行われました。その一部を6月から7月上旬にかけて、本欄で紹介します。
鈴木健氏(ニューバランス ジャパン/マーケティング部長)
スマホが新しいユーザーを連れてくる
ホームページへの訪問者数はここ数年増加傾向にありますが、内訳を見るとモバイルからのアクセスが2011年は前年比で3倍に増え、全体の10%ほどを占めるようになりました。モバイル専用のサイトはなくPCサイトのみなので、モバイルからのアクセスのほとんどがスマートフォンであると言えます。
当社の顧客層は30代以降がベースになっていますが、スマホになると若い層、特に女性が多いことがわかります。これらの層は新しいターゲットとして可能性があります。そういった背景から、スマートフォン施策を進めることになりました。
まず昨年の春にアプリを作りました。完全オリジナルではなく雑誌「SWITCH」とのタイアップ企画でしたが、アプリのほかに動画配信や渋谷の期間限定カフェなども行ったおかげかモバイルアクセスが急激に増えました。
ほかにもサントリーのヴィッテルさんとの協力でセカイカメラというアプリを使い「TOKYO RUN」というキャンペーンも行いました。都内各地のランニングコースに設置されたエアタグを集めてお店に行くと抽選でプレミアムがもらえるというゲーミフィケーションの要素を入れた仕組みです。前回は単純にアプリを楽しむものでしたが、今回はランニングをしてもらうという、我々が目指すブランド体験に近づいたと思います。
昨年の8月にはニューヨークの新店のプロモーションの一環で「URBAN DASH」というアプリもリリースしました。これはバトンがデジタルで落とされ、それをアプリで見つけて拾って店まで持ってくるとプレミアムがもらえる仕組みですが、ほかのプレイヤーに取られることもあるというゲーム性をさらに高めた施策です。
これらの施策はどれだけ効果があったのか? 実際には単に話題性とかメディアバリューだけだと費用対効果には疑問が残る結果でした。アプリだけでプロモーションを作るのはハードルが高く継続性もあまりないので、Webサイトをきちんと更新した方がユーザー増につながるのではないかと思います。
ユーザーの行動をデザインする
これらの反省を踏まえて行ったのが今年の春の東京マラソンEXPOでのキャンペーンでした。「マイタウン」というアプリを使い、GPSを利用して現実のロケーションにチェックインすることでアプリ内に自分の仮想の街を作るというものです。
都内各所に掲出した交通広告のポスターにチェックインポイントを作り、最後に東京マラソンEXPO会場へ行くと、集めたチェックイン数に応じてデジタルインセンティブがもらえるという仕組みです。これはチェックイン数を集めた人ほど会場への導入率が高くなるという結果が出て、単純にポスターの認知以上の効果が得られるということが分かりました。
今年注力したいことはやはりスマホです。デバイスとしての面白さとデジタルの活動を統合化できる点が魅力です。とはいえ、単純にスマホだけを最適化せず、全体のマーケティングの中でユーザーにどんな行動を起こしてもらいたいか、デザインしながら企画することが重要です。ほかのメディアと組み合わせて、広がりをつくることも必要です。オフラインだと限定されてしまいますが、我々がやっているビジネスはデジタルで完結したものではないので、必ずその仕掛けを考えていくべきだと思います。
次回は東芝です。
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