アメリカの高校では、フェイスブックが学校行事の必須ツールに。親たちも娘のウォールを見ながら、一緒に“プロム”を楽しむ!

米国で日本企業のブランディングなどを手掛ける結城喜宣さんと高校生の娘(17歳)が、日常的に繰り広げられるデジタルライフをレポートします。フェイスブックやビデオチャットを使いこなす、アメリカ女子高生のインサイトとは? 日本にも出現しつつある、“デジタルネイティブ”のリアルに密着します。

フェイスブックに500人以上のフレンドがいる米国の高校生たち

アメリカ西海岸時間、6月15日の朝、Macを開いて驚いた。初回のコラムが凄いことになっている。その勢いは止まらず、配信3日目で3500LIKE!と500Tweetを超えている。ソーシャルメディアが、私たちのコラムを広告業界の外側にも運んでくれている。これは幸運なことだ。多くの方から叱咤激励を頂き、貴重な学びの機会となっていることに感謝したい。

今回、日米のカルチャーやデジタルに関する環境の違いが大きいとあらためて気づかされた。私たちの日常の仕事もまた、企業のブランディングの領域を超え、カルチャーギャップやデジタルの受容性の違いについてお話をしなければならないことが多い。たとえば、ソーシャルメディア環境。アメリカの13歳以上55歳以下のインターネットユーザーの約96%がフェイスブックのアカウントを持っている。これは約1億5000万人が使っているという計算になる。

娘のクラスメイトたちは、フェイスブックに500人~1000人のフレンドがいるのはざらで、安全保護やシェアリングの観点から親や先生たちもつながっていることが多い。今、巷で最もホットな議論は13歳以下にフェイスブックアカウントを持たせても良いか?というルール変更に関するものであり、賛否両論がある。

一方、学校やクラブ活動でも、Webサイトに加え、ソーシャルメディアは必須アイテムになっている。学校主催のイベントも、フェイスブックがその一翼を担っていると言っても過言ではない。学校側は、デジタルツール利用のリスクもあるが、そこから受けるメリットの方が大きいと判断しているようだ。

さて、第二話は、娘の学校が主催したダンスパーティーについてお話をしたいと思う。

主にイベントに使用される、学校のフェイスブックサイト

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プロムの日は大胆に着飾る。ドレス選びに気合いが入っている女子たちはとても華やか。

6月2日、娘の高校でプロムが行なわれた。プロムとは、年に一度卒業の時期に開催されるダンスパーティで、高校4年生と3年生が参加する学校主催の行事である。今年は、午後8時から夜中の12時までダンスホールを貸し切って行なわれた。

娘からは、あらかじめ午前1時頃の帰宅になることを聞いていたのだが、様子伺いに”Where are you?”と午前12時30分くらいにフェイスブックからプライベートメッセージを送った。なぜかといえば、娘のウォールに一向に実況中継が載らなかったからである。どうしたんだろうね? と妻と噂していたら、すぐに折返し電話があった。
 「12時に終わったんだけどさ、今からパーティクロージャーでポリスのチェックがあるから、もう少し時間がかかるかも」
 「ポリスチェック?」と私は耳を疑った。「なんで?」
娘によれば、アルコールチェックのために警察官が立ち入り検査を行うのだという。 
 「高校にいるスクールポリスが、そのままパーティにも来てるんだ」と聞いて、妙に安心した。なんとも危なそうで安全そうな話ではないか。それからほどなくして娘は帰ってきた。
 
プロムの企画は、先生と生徒会が約1年前からパーティープランナーを雇ってはじめる。女子は3カ月前からドレスを買い始めるほど楽しみにしているらしい。うちの娘に限っては、ほんの1週間前くらいから焦り出したようで、いきなり私のiPhoneにメッセンジャーで写真が届き、彼女がドレスを探しているのだとわかった。

3枚のドレスの写真がポップアップ。メッセージはなし。すぐに電話がきて、娘が言った。
 「そのドレスどう思う?」
 「写真じゃわからんよ」と私。
 「あと1枚しかないんだけど、買っていい?」
あと残り1枚、というマーケティングに弱いのは妻似だと思い、やめとけと言おうと思ったが、もうパーティまでに買いに行く時間がないと説得され、
 「いいよ。似合っているから」と同意することにした。

プロムの告知は、学校のWebサイトで1カ月前からはじまる。イベント会場は、あとのお楽しみとばかり、寸前まで秘密にされている。生徒会はオフィシャルのイベントページをフェイスブックにつくり、生徒たちとつながる。参加、不参加が本人たちに委ねられているため、インビテーションを出して予め何人くらいが参加するのか見当をつけたい。チケットは3週間前から発売になる。 そして、生徒たちのフェイスブックは、ある儀式を茶化す写真や記事で満載になるのだ。

男子が女子を誘う“儀式”も、FBで見守りながら楽しめる

それは、男子が女子を正式にダンスパーティーに誘う、言ってみればプロポーズの儀式。将来のための予行演習である。
 「なんて誘われたの?」と私。
 “Would you come to prom with me?”と娘。

私がLIKE!したいのは、皆、そこでアイデアを競い合うということだ。たとえば、先生を巻き込んで気持ちを伝える、車にメッセージを描く、歌ったり踊ったりのパフォーマンスあり、ビデオ撮影をしてYouTubeにアップ…なんてことを人目をはばからずにやるらしい。

ちなみに、うちの娘は同じテニス部の友達に誘われたらしい。それはご多分に漏れず、彼女やそれをからかう友人たちのフェイスブックをにぎわしている。もちろん私たち親にもオープンだから一緒になって楽しめるのがいい。こういうオープンなメディアがあって良かったと思える瞬間だ。

Screen shot 2012-06-03 at 5.09.42 PM[2] Screen shot 2012-06-03 at 5.10.04 PM[1] Screen shot 2012-06-03 at 5.10.25 PM[1]
プロム当日の写真はフェイスブックで共有される。カップルの写真も。

イベントの直前には、高校生ビデオグラファーがつくった飲酒運転禁止のビデオや厳しいダンスルールの案内がネット上にあがる。そして、プロム翌日のフェイスブックページはプロムの話題で大いに盛り上がるというわけだ。学校のWebサイトや特設のフェイスブックサイトには、カップル一組ずつの写真が飾られている。皆、大胆に着飾って初々しく微笑ましい。オープンであることの大切さを、娘や高校の行事から学ばせてもらっている気がする。

高校生でもないのに、これから来年のプロムが楽しみである。

結城喜宣 「アメリカ女子高生デジタルネイティブ日記」バックナンバー

結城 喜宣(Ys and Partnersエクゼクティブ・クリエイティブディレクター)/結城 凛子(17歳)
結城 喜宣(Ys and Partnersエクゼクティブ・クリエイティブディレクター)/結城 凛子(17歳)

日米に拠点を置くCreative Brand Communications – Ys and Partners のエクゼクティブ・クリエイティブディレクター。JWTを経て、2002年に日本ブランドを世界で有名にすることをミッションに、米国カリフォルニア州に本社設立。2005年には横浜市に日本支社を設立。日米グローバル企業のブランド・コミュニケーションを成功に導いている。ブランド戦略に基づいたクリエイティブなストーリーテリングが持ち味。宣伝会議コピーライター養成講座にて「自分の名刺塾」などを担当。
Facebook: facebook.com/ysandpartners
Twitter: @YSAP_NobuYuki
Web: ysandpartners.com

結城凛子(ゆうき・りんこ/カリフォルニア州の高校3年生 テニス部在籍)
父と母の冒険に伴い4歳の時に渡米。再度、両親の冒険につきあい、小学5年から中学2年までを横浜市で過ごす。中学の時は演劇部部長、高校からは全米トップのテニス部に在籍。東日本大震災の支援活動のリーダーなどを務める。米国本場のデジタルネイティブ高校生。
Facebook: facebook.com/thethousandcranesproject

結城 喜宣(Ys and Partnersエクゼクティブ・クリエイティブディレクター)/結城 凛子(17歳)

日米に拠点を置くCreative Brand Communications – Ys and Partners のエクゼクティブ・クリエイティブディレクター。JWTを経て、2002年に日本ブランドを世界で有名にすることをミッションに、米国カリフォルニア州に本社設立。2005年には横浜市に日本支社を設立。日米グローバル企業のブランド・コミュニケーションを成功に導いている。ブランド戦略に基づいたクリエイティブなストーリーテリングが持ち味。宣伝会議コピーライター養成講座にて「自分の名刺塾」などを担当。
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結城凛子(ゆうき・りんこ/カリフォルニア州の高校3年生 テニス部在籍)
父と母の冒険に伴い4歳の時に渡米。再度、両親の冒険につきあい、小学5年から中学2年までを横浜市で過ごす。中学の時は演劇部部長、高校からは全米トップのテニス部に在籍。東日本大震災の支援活動のリーダーなどを務める。米国本場のデジタルネイティブ高校生。
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