杉山元規(TBWA\HAKUHODO コピーライター・CMプランナー)
今、香港から成田に戻る飛行機の中でこのコラムを書いています。人生で最も印象に残っていることを書こうと思い、この飛行機から飛び降りたらどんな走馬灯が浮かぶだろうと想像して目を閉じました。浮かんだのは、昨晩食べたプリップリの点心、点心、点心。あきらめて目を開けました。
はじめまして、杉山元規です。7月のコラムを担当します。「ある若手広告人の日常」と似たお題で以前書いたコラムや取材記事もありますので、よろしければこちらもご覧ください。
http://www.tcc.gr.jp/relay_column/show/id/2355/page/1
http://copy.sendenkaigi.com/koe_ob/koe_sugiyamam.html
英語が足りない
「外資系の広告代理店で働くには、英語ペラペラじゃなきゃダメなんでしょ」とよく聞かれます。そんなことはありません。僕は英語ペラペラじゃないですが、楽しく仕事しています。でも、英語できるほうが絶対にいい。それをいろんな場面で思い知らされてきました。
先日CANNES LIONS 2012が閉幕しましたが、僕は2008年、25歳のときにヤングカンヌのコンペに日本代表として出場し、世界各国代表の若手クリエイターたちと闘いました。そこで実感したのは、国も人種も関係なくみんな同じだということ。アイデアを考えるのにもがき苦しみ、制作のために走りまわり、それでも広告が好きで、野心を抱いている。こんな世界中のヤツらと一緒に面白いものを作れたらサイコーだなと実感しました。
カンヌでは毎晩、様々なパーティーが開かれます。各国の著名なECD、プロデューサー、アーティスト、審査員たちに混じって、僕のような若手も一緒にお酒を飲んで盛り上がります。その輪の中にいて、英語がペラペラだったらもっともっと仲良くなって、一緒に面白いものを作ることに繋がったかもしれないともったいなく感じました。タイで開かれるアドフェストにも3回行かせてもらいましたが、毎回それを痛感しました。
27歳のときには、オグルヴィのシカゴオフィスに1週間行かせてもらいました。グローバルクライアントの競合プレゼンに勝つために、世界各国のオフィスからクリエイティブが集まってアイデアを考えるというもの。一緒に行ったアートディレクターの先輩は英語ネイティブです。みんな、ラフなアイデア出しのときは僕と話してくれますが、議論がヒートアップしてくると僕のほうは一切見ず、先輩に向かって話す。それが現実でした。
今の会社TBWA\HAKUHODOでは、若手のコピーライターとアートディレクターが組んで長期間LAのTBWAオフィスで働く機会があったり、年に数回1週間ほど世界各国からクリエイターが集まってアイデア出しをする機会があります。僕もそれに行かせてもらうには、あと2年、いやあと1年で英語ペラペラにならないといけません。
英語ができなくても広告は作れる。でも、できるほうが絶対にいい。それを何度も痛感してきたのに、どうしても後回しになってしまう・・・もう呆れます。みなさんは英語どうですか? 僕はラストチャンスだと思って英語やろうと思います。
「六本木のクラブでナンパして、外人のねーちゃんと付き合っちゃえば早いよ」ってみんな言うので何度か挑んでみたのですが、どうやら僕には地道に勉強するほうがいいようです。
杉山元規(すぎやまもとのり)
1983年生まれ。2006年に早稲田大学商学部を卒業後、オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパンに入社。2007年にTCC新人賞受賞。2008年に日本代表としてカンヌ・ヤングライオン・コンペティション(Film部門)に出場する。これまでに、ACC賞、OneShow、NY Festivalsなど受賞。2011年11月にTBWA\HAKUHODOへ移籍し、現在はadidas、IKEAなどを担当。
バックナンバー
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コピーライター養成講座卒業生が語る ある若手広告人の日常
- 2012年6月 栗栖周輔「学歴なし、職歴なしで広告業界に入るには」
- 2012年5月 永友鎬載「僕の失敗(1)」
- 2012年4月 大津健一「幸運の女神は最終講義で微笑んだ」
- 2012年3月 大重絵里「考え続けられる人が、輝いている」
- 2012年2月 山川力也「コピー」じゃなくて、「いいコピー」を書くために。
- 2012年1月 安田健一「土俵に上がれない時代は、土俵づくりから。」
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