「宣伝会議インターネットフォーラム2012」が6月6日、東京都内で開かれ、フェイスブックや動画活用、オウンドメディア、ECなどを、デジタルメディアやツールを活用したマーケティングをテーマに多くのセミナーが行われました。その一部を6月から7月上旬にかけて、本欄で紹介します。
安岡久美子氏(アメリカン・エキスプレス・インターナショナル,Inc./個人事業部門 マーケティング 副社長)
可能性広がるソーシャルメディア
我々が今取り組んでいるのは、デジタル・トランスフォーメーションです。デジタルでオペレーティングのモデルを変える。当社のCEOケネス・シュノールトが何万といる社員に向けて語っている言葉です。近年SoLoMoという言葉がトレンドのようになってきていると思います。ソーシャル、ローカル、モバイルの頭文字を取った言葉ですが、我々はそこにG、つまりグローバルを足した4つのキーワードでビジネスのさらなる活性化を狙っています。
我々は企業理念に「世界で最も尊敬されるサービス・ブランドになる」と掲げています。アメリカン・エキスプレスのサービスは世界のどこにいても同じ質の高いもの、カード会員一人一人のニーズに合わせたものを提供していきたいと考えています。
それを支えているのが、強みと自負しているネットワークです。データベースに世界中の加盟店や会員のデータを蓄積して分析、マーケティングとして活用しています。こういったシステムはほかに類を見ません。
このネットワークをより深く拡大できるのがソーシャルだと考えています。そのための戦略が「思いを共有する」というものです。共有することで関係の構築を深めたい。それを実現するためのソーシャルを使ったオウンドメディアがあります。いくつか事例を紹介させていただきます。
震災後の顧客対応やイベントで思いを共有
昨年3月の東日本大震災の発生時、コールセンターを通じて、帰宅難民となったカード会員にホテルやタクシーの手配といった要望への対処、ポイントプログラムを通じた支援などを行いました。これは非常に珍しいケースでしたが、我々から被災地にお住まいのカード会員の方々に今お困りであれば何かお手伝いをさせていただきたいとコールセンターからお電話を差し上げました。不安はありましたが、非常に好評を得ることができました。8月ごろにはフェイスブックを利用した「フレンズ・オブ・ジャパン」というグローバル規模のソーシャル・キャンペーンを展開しました。メッセージひとつで1ドル寄付するというもので、最終的に世界中の54万人からメッセージが集まりました。
今年4月1日には会員向けイベントとして、京都・醍醐寺の夜桜特別拝観を行いました。通常WebのほかにDMでご案内しますが、この時は開催までの期間が短かったのでDMは使わず、蓄積した会員データを駆使して興味を持っていただける方を選び、ピンポイントでコールセンターからお誘いさせていただきました。当日は雑誌の取材も入り、後にWebサイトやフェイスブックを使ったイベント報告などでより多くの人にアメリカン・エキスプレスならではのイベントを知ってもらうことができました。
モバイルでは2年ぐらい前からフィーチャーフォンからスマートフォンへ完全にシフトし、業界でもかなり早い時期に明細確認などができるアプリの提供を始めました。今夏には顧客サービスをより生かしたコンテンツをアプリに追加する予定です。
関係の構築やサービスの提供においてネットとリアルの垣根はなくなりつつあり、オンライン、オフラインという分け方も過去のものになりつつあります。今後はデジタル・トランスフォーメーションをさらに進め、より進化したサービス・ブランドを目指していきます。
次回はユナイテッドアローズです。
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