一般に、富裕層はそれ以外の層よりも企業の社会的責任に敏感に反応するといわれている。富裕層の心をつかむことは、カスタマー・リレーションやブランド構築、コーズ・リレーテド・マーケティングにとって重要な課題だ。
アメリカのマーケティング調査会社、ラグジュアリー・インスティチュートは、このほど2007年以来5年ぶりに年収15万ドル(1200万円)以上の富裕層を対象としたCSR(社会的責任)行動に関する調査報告を発表した。この報告によると、全体として購買力が高い層ほど、購買の意思決定をする際に、企業の社会的責任行動を重視する傾向は変わらないという。
たとえば、82%のアメリカの富裕層は、企業が従業員、顧客、取引先に対して倫理的に行動しているかどうかという点で社会的責任を定義している。また、回答者の58%はCSRの本質的な要素として環境とフィランソロフィをあげている。さらに、45%の富裕層は、高い倫理的な基準をもったブランドを探しているが、それに対して高いプレミアムを払うことに同意するのは39%にとどまっている(2007年の56%から大きく低下)。
ソーシャル・ネットワーク・サービスは企業のCSRスタンスを知るうえで重要なツールとなっている。富裕層の27%は、企業のCSR活動をフェイスブックやツイッターで知るようになったと答えている(2007年と比べて8%アップ)。ニュース記事を読むことは依然として52%と高いものの、2007年64%と比べて大きく下がっている。
「エシカル」で想起された企業やブランドは、アップル、BMW、コーチ(Coach)、レクサス、メルセデスベンツ、ノードストローム、スターバックス、ホールフーズ。
この調査報告について、ラグジュアリー・インスティチュートのCEO、ミルトン・ペドラザ(Milton Pedraza)は、次のように述べている。
「景気の低迷で、富裕層のあいだでも、社会的責任を重視する傾向が薄れ、価格や価値を重視する傾向が強くなっている。しかし、ラグジュアリーとプレミアム・ブランドは景気に関係なく社会的責任を追及するとみている。というのも、よい行いは普遍的で時代を問わないコンセプトだから」
※回答者の平均年収は30万7000ドル(2456万円)310万ドル、中央値は310万ドル(2億4800万円)