杉山元規(TBWA\HAKUHODO コピーライター・CMプランナー)
8日間にわたる怒濤のCM撮影が終わり、今は編集まっただ中。素敵なチームでワイワイ作るのはめちゃ楽しい。監督、プロデューサー、美術さんをはじめ現場スタッフの方々の熱に感動。でも一方で、僕自身の現場での中途半端な立ち位置に悶々。もっと責任ある存在になれるよう実力をつけるんだ、と誓う今日この頃です。
人間力が足りない
僕は大学3年生のときに宣伝会議コピーライター養成講座に通いました。そして卒業後コピーライターになってからは、時々その養成講座や学生向けのセミナーに呼んでいただき、話をさせてもらう機会があります。
普段はキャリアを重ねたスタークリエイターたちが講師を務めているので、僕のようにヘラヘラした若手の話は、親近感があって気楽なんでしょう。偉そうに何かを教えるような立場じゃないので、この仕事の楽しさや悩ましさを正直に話しています。歳も近いので、いろんな質問や相談もしてくれます。
このコラムに関しても、読んでくれる人の中には学生も多くいるとのこと。なので、いい企画を見つけるために日々どんなことを心がけているのか、僕なりのものをひょろっと挙げてみようと思います。自分にも言い聞かせながら。
- ドMになる
企画は丸裸の自分をさらけ出すこと。恥ずかしさに勝つ。そして企画が通らなくても(自己否定されてる気持ちになっても)、めげちゃダメ。極限まで追い込まれることを、むしろ快感に。 - ドSになる
企画は企み。どうにかして見た人をビックリさせてやろう、喜ばせてやろう。そんな、ウッヒッヒッな気持ちで。 - プレイヤーでいる
企画の素は実体験。ネットの情報や資料を見ただけで、そこに行った気になったり、何かをやったつもりになってちゃダメ。 - 誘いは断らない
楽しいことや、思いがけないチャンスはどこにあるか分からない。新しい人や知らない世界に出会ったら、視点が増えるはず。 - 願望は口に出す
あえて周りに伝えることで、自分をマインドコントロールできるし、自分にプレッシャーもかけられる。周りもきっと助けてくれる。viva言霊! - 根拠のない自信を持つ
自信は思い込みから。最初は根拠なんてなくていい。(これだけ悩んでおいてアレですが、普段はムリをしてでもポジティブ野郎でいます) - 外でイヤホンをしない
電車の中や店の中で人の話を盗み聞きしてみると、みんなヘンなこと話してる。いろいろ発見があって楽しい。自分をいつもオープンに。 - 同志を見つける
何度救われたことか。刺激にもなります。
と、まぁこんな感じです。
「いいものを作るには、まず、いい人間になること」。これは、僕が社会人1年目に上司から言われて、今も大切にしている言葉。ぜんぜん足りない人間力を何とか補おうと、あれこれもがいています。
僕のコラムは毎回、悩みでジメジメさせてきちゃいました。この仕事を目指している学生も読んでいるんだから、もっと華やかでキラキラした面や、自慢したくなる出来事を書いたほうがいいのかな、と反省もしています。でも、こんなヤツでもクリエイティブの仕事ができるんだ、チャンスをもらえるんだ、好きなことやれるんだ、と少しだけ自信を持ってくれたら。そして、こんなに悩んでるくせに楽しく続けているクリエイティブの仕事には、何か特別な魅力があるのかもと興味を持ってもらえたら、嬉しいな。今の学生たちとも、いつか一緒におもしろいもの作れるといいな。
杉山元規(すぎやまもとのり)
1983年生まれ。2006年に早稲田大学商学部を卒業後、オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパンに入社。2007年にTCC新人賞受賞。2008年に日本代表としてカンヌ・ヤングライオン・コンペティション(Film部門)に出場する。これまでに、ACC賞、OneShow、NY Festivalsなど受賞。2011年11月にTBWA\HAKUHODOへ移籍し、現在はadidas、IKEAなどを担当。
バックナンバー
コピーライター養成講座卒業生が語る ある若手広告人の日常
- 2012年6月 栗栖周輔「学歴なし、職歴なしで広告業界に入るには」
- 2012年5月 永友鎬載「僕の失敗(1)」
- 2012年4月 大津健一「幸運の女神は最終講義で微笑んだ」
- 2012年3月 大重絵里「考え続けられる人が、輝いている」
- 2012年2月 山川力也「コピー」じゃなくて、「いいコピー」を書くために。
- 2012年1月 安田健一「土俵に上がれない時代は、土俵づくりから。」
『コピーライター養成講座』
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いまでも多くの有名クリエイターを輩出している本講座。幾度かの改変を経て、内容を一新。コピーやCMといった、広告クリエイティブだけでなく、インタラクティブ領域のコミュニケーション、マーケティングやメディアクリエイティブなど、さまざまな視点からコミュニケーションを構築する能力を養い、次世代のクリエイターを育てます。