現在、オリンピックが行われているロンドンに来ている。この記事が掲載される頃には競泳の北島康介選手が200Mの決勝進出を決めてくれることを願いながら、その予選に行く前の時間を使って本記事を書いている。ちなみに、日本コカ・コーラは北島選手を応援するサイトと応援ツイッターを実施している(ハッシュタグは「#僕にはできる。」)。
ロンドンは地下鉄や鉄道が整備されているため、予想されているより混乱は少なく、スムーズに運営されているようである。ロンドンの地下鉄は電波がほぼ使えないために、インターネット利用が難しく、その時に活躍しているのが日本で購入してきた電子書籍koboであるが、利用するにつれ、かなりいけるのではないかと思っている。ロンドンの地下鉄内でキンドルの広告もよく見かけるので想定利用シーンなのであろう。しかし電子書籍に関しては、先日のkobo発売時にもトラブルが見受けられ、まだまだ問題も多いようなのでその対策と将来を占ってみたい。
第一世代のKindle
電子書籍の歴史はアマゾン社が発売したキンドル端末に始まっている。キンドルは米国で2007年11月に第1世代が発売され、2009年2月に第2世代が発売された。その後PDFリーダーを標準搭載したキンドルDX が2009年6月に発売され、さらに2010年8月、第3世代であるキンドル3が発売された。2011年9月にはアンドロイドベースのカラータッチスクリーン搭載のキンドル・ファイヤーが発売されている。
キンドル対応の日本語の書籍はあまり発売されていないが、第3世代以降はpdfファイルに対応しているのでpdfファイル経由で日本語書籍が読めることになる。アマゾンは2012年7月31日現在、ホームページ上に「kindle世界で最も売れている電子書籍リーダー近日発売」と記してある。
7月19日に発売された楽天kobo Touch以外でも電子書籍に関しては、シャープが2011年9月に発売を終了したGALAPAGOS(書店:GALAPAGOS Storeスマートフォンアプリに移行)やソニーの電子書籍リーダー Reader(書店:Reader Store)、凸版印刷も本年中に電子ペーパーを利用したリーダーを出す(書店:Booklive)など競争が激化してきている。あるいは、専用リーダーを利用しなくてもタブレットやスマートフォンにアプリをインストールすれば、フォーマットに合致した電子書籍を読むことができるのである。
筆者がkobo Touchを通じて分かったことは、専用端末のメリットである。そのメリットは大きく分けて1)電池のもち、2)ポケットサイズ、3)簡単な専用UIである。
koboはバックライトを使わない電子ペーパーを使用しているので、読んでいるときには電力をほとんど使っていないと推察される、そのためかなり長い時間読書を楽しむことができる。ただし、Wi-Fiで接続しているときや、ページをめくるときなどは電力を消費するので特にWi-Fi接続は最低限にする必要がある。
また、薄く、ぎりぎりではあるが上着の内ポケットに入るために常に持ち運びが可能である。さらに、インターフェースは反応が少々遅いときもあるが、メニューが非常に少なく使いやすくなっている。また、楽天Booksで販売されている電子書籍は決して価格が安いわけではなく、価格破壊を起こさないことにより出版社側の利益を保護する意図が感じられる。
楽天kobo Touch
ただし、筆者はまったく問題なかったのであるが、kobo Touchに関しては、初期設定が難しいという意見が多数寄せられているという。筆者が利用する際にそのほかにも色々な改善点があるのでここに記しておきたい。批判のように聞こえるかもしれないが、これは電子書籍がペーパーレスという社会を形成するために必要な要素であると考えているのでそのように読んでいただきたい。
ユーザー登録が済んだ状況で端末を渡せないか?
端末は使えないと意味がない。楽天kobo Touchは楽天IDの登録を行って初めて使えるようになるが、そのためにはパソコンへの接続が必要である。楽天はせっかく多くの会員を擁しており、通信販売をハードウエア普及の中心としているので、顧客に届くときには楽天IDの登録が済んでおり、無料の書籍がいくつかインストールされていて開けるとすぐ使えるようにしておくことが必要ではないだろうか。
かつてパソコンはハードウエアを購入し、自分で長時間かけてOSをインストールする時代があったが、最近はOSはおろか、各種ソフトウエアがプリインストールされている。そして、そのように「開けてすぐ使える」ことが普及につながったひとつの要因だと考えられる。タブレットやスマートフォンも購入後にセットアップが必要になる場合もあるが、基本的にはそのまま使えるのである。ましてや、楽天koboに関しては受注した時点で会員のIDはわかっているはず。有料でもよいのでセットアップサービスを提供することが簡単だと考えている。
ワイヤレスを探しに行かないようにできないか?
koboを利用しているとワイアレスアクセスを探しに行き、端末が反応しなくなることがある。自動的に探しに行かずに、モード変更を簡単にできる、あるいは探しに行くときに確認するなどの方法を取れないだろうか? 前述したように端末で電力を消費する主な要因はWi-Fiで探しているときにも大量の電力を消費しているはずなので、是非対応いただきたい。
筆者は使ってみるまで電子書籍の専用端末は「なし」かと思っていたが、先端技術を使うのではなく、誰でも簡単に利用でき、標準の価格で書籍を提供できるようになれば、ITに強くない人たちに意外に普及するのではないかと思う。それは図らずもkoboの発売時のトラブルが浮き彫りにしてくれたのでないだろうか。振り返ると、日本では今年が電子書籍元年と呼ばれる気がしてならないのであるが皆さんはいかがだろうか?
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