米国では視聴率は9%!アップ。話題となったオリンピックテレビCM
約2週間に渡って繰り広げられてきたオリンピックゲームがまもなく幕を閉じようとしている。数々の笑顔、汗、涙、人それぞれ、感動の瞬間は異なるだろう。ある米国メディアによると、ロンドンオリンピックゲーム最初の7日間での米国平均視聴人数は35.1Million (3510万人)で、視聴率は北京オリンピックより9%もアップしたそうだ。一方、競技の間に流されるコマーシャルでは、莫大な金額を使った戦いが繰り広げられていた。
オリンピックのオフィシャルパートナー11社
国際オリンピック委員会(IOC)とグローバル契約するのが「TOPパートナー」で、オリンピックのオフィシャルパートナーと言えるのは以下の11社だけだ。
米国NBCは、オリンピックに約1000億円を投資
ロサンゼルスタイムスによると、米国でのオリンピック独占放送権を獲得するために NBCユニバーサルが国際オリンピック委員会に払った金額は$1.18 billion(11.8億ドル)。さらに、製作費には$100 million(1億ドル)を使った。しかし、なんと予想を上回る広告売上を達成し、ほぼブレイクイーブンになる見込みだという。当初の予定では、2億ドルの赤字予定だった。日本円で約1000億円という大金がオリンピックにつぎ込まれたが、早速回収の見込みができたのは喜ばしいことだ。
ロンドンオリンピックのお勧めテレビCM
それでは、米国のメデイア等にも取り上げられている話題のオリンピックCMの中から私が選んだ5つを紹介したい。
1、AT&T 「Warming Up」
水泳の男子400m個人メドレーで金メダルを獲得したライアン・ロクテ選手が登場し、CMでは以下のナレーションが流れる。「運はオリンピックへ連れて行ってはくれない。表彰台へ上がることを願っていてもだめだし、買うこともできないし、望むだけじゃ足りない。夢見るだけではダメだ。運が僕をロンドンまで連れてきてくれたんじゃない。僕はここまで泳いで来たんだ」と語る。テレビCMの中では、泳いでロンドンまで到着しているのだが、彼が実際に練習で泳いできた距離を考えると余裕でロンドンまで到着するのだろう。オリンピックまでの道のりを考えると、グッとくるものがある。
2、P&G「KIDS 2012」
http://www.youtube.com/watch?v=zRaQRbAxXaA
「みんなにとっては、オリンピック選手でも、ママにとっては、いつまでも子どもです。」子を持つ母にとっては、これもまた泣ける映像だ。ママの公式スポンサーとして数多くの選手やその母親たちにインタビューしたコマーシャルも興味深かったし、選手のママたちを描いたコマーシャルも感動的だったが、人々の人気を集めているのはこちらのCMだ。1984年ロサンゼルスオリンピックの時には、マクドナルドが子どもを使ったオリンピックTVCMを流していた。アイデア自体は新しいものではないが、いいものはやはりいいということだろうか。
3、マクドナルド「The Simple Joy of Winning」
http://www.youtube.com/watch?v=cll8yJtrfWc
最初の二つが感動系だとすればこちらはユーモア系。400カロリー以下の商品を紹介すると共に、米国選手が金メダルを獲得すると、賞品がもらえるというキャンペーンをユーモラスに紹介。こんな風にマックの商品を食べながら「ああしろこうしろ」と指導されたら不快ですよね。「忘れないでね、ウクライナの選手は雪の中でトレーニングしているんだからね!」と、本物のボクシングオリンピック選手に向かって、皮肉たっぷりに話している。
4、Nike「Find Your Greatness」(オリンピックの公式スポンサーではない)
http://www.youtube.com/watch?v=Nz1gWajl0g8
ナイキはロンドンオリンピックの公式スポンサーではない。しかし、スポンサーであるアディダスよりも話題になっているコマーシャル。ナレーションを簡単にまとめると「ここには華やかなセレモニーはないし、スピーチも眩いライトもない。でも、偉大なスポーツ選手はいる。どういうわけか、我々は『偉大さ』は、選ばれた一握りの者が持つと思いがちだが、本当は、偉大さは全ての人のものだ。偉大さは一つの場所や人にあるのではなく、偉大さはそれを見つけようとしている人々のところにあるのだ」
5、AT&T「Rethink Possible」
最後はまたAT&T。米国水泳選手のライアン選手(400M個人メドレー、4×200mリレー、ゴールドメダリスト)のレースの模様が、競技翌日にテレビCMに登場し話題となっている。「新しい可能性」とのメッセージが最後に出てくるコマーシャルは、前日の興奮が冷めないうちに放映された。オリンピックコマーシャルに新しい可能性を持ち込んだという点で一票。
まとめ
以上が2012年ロンドンオリンピックのおすすめテレビCMだ。共感していただける方も、そうでない方もいるだろう。しかし、それよりも伝えたいことがある。オリンピック競技で数々の歴史が塗り替えられるように、広告も新しい歴史を刻んでいく。どんなに時が流れても、本当に感動した映像は人々の心に残るものだ。次のオリンピックではどのようなスポンサーが登場し、どのような広告を見せてくれるのか、今から楽しみだ。いつの世も広告が創意工夫にあふれ、楽しいものであってほしい。
次回は31日に掲載します。
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