【ソーシャルメディア活用(13)カプコン】「販売数が落ち着くとソーシャルの盛り上がりも一段落してしまうのが課題です」

ゲームごとのコミュニティの一本化を目指す

米山 私はそうしたイベントの活動をそれぞれのソーシャルメディアで発表して、モンハン部がどんな取り組みをしているのかを伝えることにしています。オンラインのコミュニケーションはソーシャルメディアに任せ、我々はネットワークだけではないオフラインのつながりを広げる役目です。

――米国のCAPCOM-Unityではオンラインで直接ユーザーとコミュニケーションしているとのことですが、そうした取り組みはされるのでしょうか。

増田 CAPCOM-Unityは本当にユーザーと直接やり取りしているのですが、それを実現するための文化の違いは大きいですね。米国は実名主義で誰が発言しているのかもわかりますし、コミュニケーションも個人と個人でやり取りしています。日本はどうしても匿名文化が強く、同じことをそのまま取り入れてもうまくいかないでしょう。ユーザーとのコミュニケーションは今後の課題ですが、どのように取り組むかは慎重に検討したいと思います。

――バイオハザードでもモンハン部のようにコミュニティを運営されていますが、コミュニティの違いなどはありますか。

米山 基本的には変わらないのですが、ユーザーの年齢層がモンハンに比べて高く、コミュニケーションよりもゲームの情報が欲しい、よりバイオハザードを深く知りたい、という方が多いですね。そういう意味ではモンハン部に比べると、ちょっと大人な感じのファンクラブになっていると思います。

――モンスターハンターもバイオハザードも歴史が長くファンの多いタイトルですが、新規タイトルでもこうしたコミュニティは運営されるのでしょうか。

増田 弊社の新規タイトル「ドラゴンズドグマ」は50万本近いセールスなのですが、ソーシャルメディアを活用するかは悩みどころですね。ある程度販売数が落ち着くとソーシャルの盛り上がりも一段落してしまうので長続きしない、というのが課題です。シリーズとして次が決まっている場合はそこから盛り上がりを起こせるのですが、今のところは新規タイトルごとにコミュニティを立ち上げる、ということはありません。

むしろ我々が目指しているのはゲームごとにファンサイトを作るのではなく、それぞれのファンサイトを統合して会員組織を一本化する仕組みですね。課題も多くなかなか動きを見せられていませんが、早期に立ち上げたいと考えています。

また、ゲームメーカーならではの取り組みとして、Web上だけでなくゲームと連携した仕組みも展開していきます。例えばドラゴンズドグマは自分以外に「ポーン」というキャラクターがいて、このポーンをオンラインで他のユーザーに貸し出せるのですが、ポーンの返却時にコメントやプレゼントを渡したりというコミュニケーションができるようになっています。また、フェイスブックやツイッターを介してゲーム中の写真をアップロードする仕組みなども実装しています。

今後はこうしたゲームとソーシャルメディアの連携をもっと強化させる予定で、そのためにもカプコンが現在展開しているファンサイトなどのユーザーのIDを1本化する仕組みが早急に必要になる、と考えています。

ニコ動のゲーム実況動画に関心

――ソーシャルメディアの運用体制はどのようになっているのでしょうか。

米山 運用は私がメインで担当していて、ファンクラブは私と大阪にいるチームで、Webサイトなどのメインとなるコンテンツは数十人体制のチームで運用しています。mixiやフェイスブック、ツイッターなどのソーシャルメディアは一元管理していて、私が一人で運用しています。

――ソーシャルメディアを運用されていてよかったこと、難しかったことはありますか。

米山 良かったことより難しいことのほうが強いですね。ツイッターアカウントは、モンスターハンターだったらすぐにフォローが伸びるだろう、と思ったらなかなか伸びなくて(笑)、苦労の連続でした。

弊社のスタンスとしてユーザーと直接コミュニケーションは取らないのですが、それをせずにどれだけフォローを伸ばすのか、というのは試行錯誤しましたね。フェイスブックであれば投稿の最後にユーザーへの質問を投げかけてユーザーが参加しやすい文章にしたり、モンスターハンターの場合はくだけた文章やユーザーでないとわからない用語を使ったりと、一方通行にはならないような情報発信を心がけています。

――ユーチューブなどの動画サービスも積極的に活用されていますね。

増田 今までのゲームプロモーションはゲーム雑誌で初めて発表する、ということが多かったのですが、バイオハザード6ではタイトル名も社名も出さずにユーチューブで「何かが発表されるよ」というプロモーションを行いました。結果として発表したゲーム映像は200万回を超えるほど再生され、ゲームの発表の仕方が変わって来たな、と実感しています。将来的には会員登録しているユーザーに向けて先行発表する、という形式も出てくるでしょうし、そうした流れにシフトしていくのではないかなと感じています。

――今後取り組んでみたいソーシャルメディアの施策はありますか。

米山 ニコニコ動画などで配信されているゲームの実況動画は公式でやってみたいですね。ただし、動画は見せたい気持ちもあるものの、攻略情報がオンラインに出過ぎてしまう、という心配もあります。とはいえニコニコ動画のようなコミュニティは独特の文化だけれど一番濃いユーザーが集まっている場所でもあるので、できるだけそういった文化も吸収していけたら、と思います。

――インタビュー雑感

ファン同士のコミュニケーションの活性化のため、オンライン上のコミュニティをつくるだけではなく、リアルのイベントも絡めファン同士の繋がりをより強固なものにしようという取り組みは他の企業にとっても非常に参考になる事例だと思いました。(アジャイルメディア・ネットワーク)

インタビュー担当 AMN 甲斐祐樹

次回(9月3日)はソフトバンクです。

高柳 慶太郎「ソーシャルメディア活用 先進企業に聞く」バックナンバー

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高柳 慶太郎(アジャイルメディア・ネットワーク/マーケティング部マネージャー)
高柳 慶太郎(アジャイルメディア・ネットワーク/マーケティング部マネージャー)

2005年楽天株式会社入社。広告営業に従事した後、ADネットワーク事業の立ち上げなどを担当。2008年11月にアジャイルメディアネットワーク(AMN)に入社。営業部を経て、現在はマーケティング部にてAMNのマーケティング活動並びに新商品開発などを担当。

アジャイルメディア・ネットワーク(AMN):http://agilemedia.jp/
Facebook:http://www.facebook.com/keita600

高柳 慶太郎(アジャイルメディア・ネットワーク/マーケティング部マネージャー)

2005年楽天株式会社入社。広告営業に従事した後、ADネットワーク事業の立ち上げなどを担当。2008年11月にアジャイルメディアネットワーク(AMN)に入社。営業部を経て、現在はマーケティング部にてAMNのマーケティング活動並びに新商品開発などを担当。

アジャイルメディア・ネットワーク(AMN):http://agilemedia.jp/
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