小林麻衣子(POOL inc.コピーライター/2002年秋・基礎コース、2006年春・専門コース修了)
ロンドンオリンピックが終わりましたね。なんて書き始めると、まるでスポーツ好きみたいですが、スポーツには疎く、今回の競技も1回もリアルタイムで観ていないというレアな人間です。でも、応援したい気持ちは普通にあるので、ニュースはよくチェックしていました。その中で目にした選手のコメントで、いくつか心に残っているものがあります。
ひとつは、なでしこジャパンの岩渕真奈さんが、銀メダルを手にした試合後の言葉。「今、何がしたいか?」の問いに、即答したそうです。
「練習がしたいです」。
Webニュースのタイトルでこの言葉をみたとき、強い言葉だな、と思いました。「ゆっくりしたい」でも「日本食がたべたい」でもなく、「練習がしたい」。この短い一言で、金メダルに届かなかった悔しさが、「悔しい」と泣かれるよりも伝わってきたからです。
もうひとつは、水泳で銅メダルをとった寺川綾さんの言葉。前回のオリンピックに出場できず、悔しい思いをした人らしいですね。
「目指していたイチバンではないですけども…うれしいです」
これをニュースで聞いた瞬間、なぜか、あのコピーを思い出しました。
「好きなひとが、できました」(「耳をすませば」/糸井重里さん)。
この言葉は両方とも、もう、すごくシンプルです。子どもでも言いそうな、カンタンな、普通の言葉です。でも、「巧いこと」を言おうとしていないからこそ、嘘がなくて、一瞬で背景のストーリーまで感情移入してしまいました。
選手たちの言葉は、もちろんコピーとは違います。でも、奇をてらおうとか、面白いことを言おうとか、巧いことを言おうと考えずに生まれた、直球すぎる言葉の強さを、私は覚えておきたいと思います。
「コピーっぽいけど、人が動かない言葉」もあれば、
「コピーっぽくないけど、人が動く言葉」もある。
広告のニュースや、コピー年鑑を熟読するだけでは気づけない所に、強い言葉がたくさん転がっています。そして、そういう言葉たちに出会ったときに、言葉のチカラってやっぱりすごいなと思って、ちょっとうれしくなります。
そんなことをチラリと思った、夏の終わり。
それでは、また来週よろしくおねがいします。
■「ソラシドエア」ブランドブック
ちょっと話は逸れるかもしれませんが、「ブランドブックっぽくない、ブランドブック」を作ったので紹介させて頂きます。社名にちなんで、企業理念を基に「歌」をつくりCDに。堅い企業理念を、柔らかく表現しました。従来の「文章で社員に伝えようとする」ブランドブックではなく、歌にすることで、取引先や、社員の家族に親しんでもらうこと。これが1番のブランディングではないか?と考えました。(コチラのページで視聴もできます)
小林麻衣子(こばやしまいこ)
POOL inc.コピーライター。上智大学文学部卒業後、美容関連のライターを経て、2007年POOL入社。最近の主な仕事に、「ハウスメイト」「ソラシドエア」「キングソフト」「サントリー『ESPRESSODA』」の広告キャンペーン、イベント「東京満月ヨガの会」企画プロデュースなど。
宣伝会議コピーライター養成講座2002年秋・基礎コース、2006年春・専門コース修了。
【バックナンバー】
「女子力」より「おっさん力」(8/6)
コピーライター養成講座卒業生が語る ある若手広告人の日常
- 2012年7月 杉山元規「悩める29歳(1)」
- 2012年6月 栗栖周輔「学歴なし、職歴なしで広告業界に入るには」
- 2012年5月 永友鎬載「僕の失敗(1)」
- 2012年4月 大津健一「幸運の女神は最終講義で微笑んだ」
- 2012年3月 大重絵里「考え続けられる人が、輝いている」
- 2012年2月 山川力也「コピー」じゃなくて、「いいコピー」を書くために。
- 2012年1月 安田健一「土俵に上がれない時代は、土俵づくりから。」
『コピーライター養成講座』
講師は一流のコピーライターが直接指導 プロを育てる実践型カリキュラム
いまでも多くの有名クリエイターを輩出している本講座。幾度かの改変を経て、内容を一新。コピーやCMといった、広告クリエイティブだけでなく、インタラクティブ領域のコミュニケーション、マーケティングやメディアクリエイティブなど、さまざまな視点からコミュニケーションを構築する能力を養い、次世代のクリエイターを育てます。