「火砕流」、「降灰」など、未知の災害への認知がまずは重要
現在、地震の揺れについては、震度7が想定されているものとして、東京湾北部地震で、東京、神奈川、千葉、埼玉の4都県、南海トラフでは、静岡、愛知、三重、兵庫、和歌山、徳島、香川、愛媛、高知、宮崎の10県が想定されている。さらに、南海トラフでは満潮位時に最大で、高知(31.8m)、徳島(20.1m)、東京(15.8m)、愛媛(15.0m)、宮崎(14.1m)、大分(13.7m)、鹿児島(12.8m)、和歌山・三重(12.3m)の大津波が想定されており、東日本大震災の津波の高さの最大値(富岡町:21.1m)、遡上高(女川笠貝島:43.3m)と比べても同等あるいはそれ以上の津波の被害が予想されている。
そうした中、最近、南海トラフや首都圏直下型地震の発生に連動して、富士山の噴火が懸念されており、神奈川、静岡、山梨の3県の防災担当者らが避難計画を検討する協議会が6月に発足し、24年度中には広域避難計画が、26年度までには合同で避難訓練を実施することが決められている。
富士山噴火の懸念が警告されている背景としては、東日本大震災で日本の地殻構造に大きな変化がもたらされた可能性があること、過去にM9クラスの巨大地震発生後に誘発されたと考えられる噴火が起きていること、富士山周辺での異常な湧き水が増えていることなどが挙げられている。また、噴火の際の影響度合いとして、かつては活発が盛んで噴火していた富士山が、300年間止まっていることからも相当量のマグマの滞留があるのではないかとの専門家の予測がある。
今月21日に開催された静岡県防災・原子力学術会議で、静岡大防災総合センターの小山真人教授(火山学)は、地震やマグマの突き上げなどで山体崩壊が起きれば、東側に崩れた場合、御殿場市や周辺の河沿いに住む約40万人が被災を受けるという被害予測を発表した。山体崩壊は大きいもので富士山の3分の1から4分の1が崩れ、溶岩が何十メートルという塊のまま御殿場まで流れる「溶岩流」の可能性もある。
このほかに、以下の現象が想定されており、我々はしっかりと状況を理解し、自治体が行う防災対策とは別に、身を守る手段を講じておく必要がある。
「噴石」:直径数cm以上の岩の破片や軽石が噴火と同時に火口から放出される現象。大きな噴石の直撃を受けると、建物は破損し、人は死傷することがある。特に火口から半径2km以内は多くの噴石が飛散するため危険である。
「火砕流」:火山灰、火山弾、火山岩塊などが、高温の火山ガスや取り込んだ空気と一団となって斜面を流下する現象。数百度から数千度に達する高温の火砕流に巻き込まれると、建物は焼失し、人は死傷する。流下速度は時速数十から100km以上であり、発生後の避難は困難である。
「火山泥流」:積雪期に、火砕流などによって斜面の積雪が融けて流水となり、さらに火砕流堆積物や斜面の土砂を取り込んで、ほぼ谷に沿って流下する現象。一気に大量の泥流が流れるため、谷をあふれて流れる危険性がある。流下速度は時速30km〜60kmで、発生後の避難は困難である。
「空振」:噴火に伴う空気の振動が伝わる現象。人体に対する直接的影響はないが、山麓周辺では、連続的に建物の窓ガラス等が振動したり、場合によっては割れることがある。
「降灰」:細かく砕けたマグマが空高く吹き上げられ、風に乗って遠くまで運ばれた後、降下する現象。火口近くでは厚く積もり、遠くに行くにしたがって徐々に薄くなる。首都圏まで届くとされており、火山灰を吸い込むと、呼吸器系の疾患にかかりやすくなる。また、火山灰は尖っており、目に入ると傷つける可能性がある。
「降灰後の土石流」:斜面に積もった火山灰が、その後の雨で流されて、時速50kmから60km以上の速度で石磔を伴って流下する現象。速度が早く、発生後の避難は困難である。
「火山性地震・地殻変動」:火山の周辺で起きる震源が浅い地震で、噴火前や噴火中に多発することがある。地殻変動は、マグマが地表付近まで上昇することにより、地殻が移動又は変形する現象。
「火山ガス」:マグマに溶け込んでいたガス成分が、気体となって吹き出す現象。火山ガスの大部分は水蒸気であるが、二酸化硫黄、硫化水素、塩化水素、二酸化炭素等の有毒な成分を含むことがあり危険である。
「洪水氾濫」:上流域で多量の降灰が生じた河川において、支川や渓流からの土砂流入によって本川河道の河床が上昇し河川が氾濫する現象。
「岩屑なだれ」:強い地震や地表近くかで上昇したマグマの影響、あるいは強い爆発等により、山体の一部が大規模に崩壊し、斜面を時速100km前後の高速度で流れ下る現象。
「水蒸気爆発」:熱せられた地下水が水蒸気となって爆発する現象。
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