今回も、広告界の最前線で活躍するクリエイティブディレクター、コピーライター、CMプランナーが審査員を務めます。その数、なんと100人!
このコーナーでは、審査員の皆さんが日替わりで毎日登場します。プロのコピーライターの皆さんは一体、どんなシチュエーションでコピーを生み出しているのでしょうか?宣伝会議賞のグランプリ、そしてコピーライターとしてのキャリアアップを目指す皆さんに向けたメッセージもお届けします。
本日は、リクルートメディアコミュニケーションズの富田安則さんのインタビューを紹介します。宣伝会議賞のかつての応募者であり、営業職からコピーライターに転身した富田さん。行政・官庁がクライアントの案件も多数手がけるほか、代表作としては日本郵政グループの広告シリーズ「手紙を書こう。」が挙げられます。
――すぐれたコピーが浮かぶのは、どんな瞬間でしょうか?
富田さん 特にありません。ずっと考え続けて、締切間際まで考え続けて、そこで形にし、それを見てやり直したり。ただ、それの連続です。
――やはり、考え抜くことを大事にされているのですね。同時に、一度形にしたコピーを「壊す」「つくり直す」勇気も必要ということでしょうか。富田さんがコピーを考える時のマストアイテムは何ですか。
富田さん 顧客愛、客観性、自己主張です。
――富田さんは、宣伝会議賞の応募者・受賞者でもあります。当時のエピソードを教えてください。
富田さん 僕は過去受賞者ですが、その当時はコピーライターではなく、営業でした。
それでもコピーライターになりたいから応募したわけではありません。営業という観点で企業の魅力を可視化したり、あるいは社会に言葉を投げかけることができるのではないかという思いから応募しました。
なので、考えたのは締切当日の19時から23時の4時間だけです。「それでも獲れた」ということを言いたいのではなく、自分なりの目的をもって応募することが大事なのではないかと思っています。受賞以外の目的で。
――コピーは、コピーライターだけのものではなく、あらゆる立場にいる人が、自分なりの視点から考え、つくり出すことができるものなのですね。応募者の皆さんも、一度「自分なりの目的」を見つめ直してみると良いかもしれません。最後に、第50回を迎えた宣伝会議賞や、コピーライターを目指す皆さんへのメッセージをいただけますか。
富田さん コピーライターになることを目指すよりも、コピーライターとしてなにを目指したいのかを明確にすることのほうが大事だと思います。
なぜ記者や小説家ではないのか。あるいは、なぜ営業やマーケティングではないのか。言葉を武器にして、世の中をどのように変えていきたいのか。
宣伝会議賞は、そうした思いの強さと高い視座をもった人を発掘する機会であってほしいと思います。
そして、その流れは、時代によって変化したり元に戻ったりするほうが、自然な流れのような気もします。
日本経済や社会にとって、いま必要な言葉とはどのようなものか。そこに賞とコピーライターのヒントがある気がします。
――コピーライターになることをゴールに設定するのではなく、コピーライターになったその先に、言葉を使ってどんなことができるのか、どんなことがしたいのかを考える。コピーライターの可能性や、自分の未来を想像しながら、わくわくする気持ちで賞に臨んでいただけたらと思います。
次回は、アサツー ディ・ケイの三井明子さんへのインタビューです。中学校教員、化粧品会社宣伝部などを経てコピーライターに――という、一風変わったご経歴の持ち主です。ご期待ください。
富田安則(リクルートメディアコミュニケーションズ/シニアクリエイティブディレクター、コピーライター)
1976年生まれ。主な仕事に、日本郵政グループ、東京都、朝日新聞社、経済産業省、日本商工会議所、リクルート、NTTドコモ、ブックオフなどがある。TCC賞、TCC審査委員長賞、FCC賞、毎日広告デザイン賞、宣伝会議賞銅賞など受賞。
【宣伝会議賞1分アドバイス バックナンバー】
- 原 晋さん「コピーは、ひらめかない」
- 林尚司さん「アイデアが浮かんだらすぐに書きとめる」
- 尾形真理子さん「景色や人など、情報量の多さが刺激になる」
- 岩田純平さん「コピーライティングのマストアイテムはやる気、味方、しめきり」
日本最大規模の公募広告賞「宣伝会議賞」は第50回を迎えます。1963年にスタート以来、広告界で活躍する一流のコピーライターのほか、糸井重里さん、林真理子さんといった著名な書き手を輩出してきました。50回目となる今回は50社の協賛企業から課題が出されており、第一線で活躍する100人のクリエイターが応募作品を審査します。課題は9月1日発売『宣伝会議』本誌にて発表、2012年10月31日が締め切りとなります。