「宣伝会議販促・集客メディアフォーラム2012」が8月28日、29日、東京国際フォーラムで開かれ、新カテゴリを切り拓いた商品の販促、ネットと連動して店舗へ集客した施策、チラシ活用、消費者の行動観察などをテーマに、多くのセミナーが行われました。その一部を9月から10月上旬にかけて、本欄で紹介します。
東急ハンズ ITコマース部 EC企画課 ディレクター 緒方恵(けい)氏
「ヒント・マーケット構想」のもと、2009年に始めたツイッター
東急ハンズは1976年設立、2008年から展開の新業態「ハンズビー」など含め全国39店舗を展開しています。ソーシャルメディアは2009年にツイッター開始を皮切りに、フェイスブックやmixiなど複数のプラットフォームを活用してきました。
ツイッターは店舗ごとのアカウントのほか、本社では「親しみやい・話しかけやすい人格の醸成」「イベント告知・広報」「商品紹介」といった目的に応じて3つのアカウントを使い分けています。投稿する前に社内承認が必要というルールはなく、ユーザーへ積極的に返信するようにしています。
今回のテーマはネットとリアルの連携、すなわち「O2O(Online to Offline)」ですが、シンプルに言い換えれば「ネットでできることをリアルで」「リアルでできることをネットで」実現できるように努めることだと思います。その中でソーシャルメディアの大きな役割のひとつが「店舗で行っている接客をそのままウェブで行う窓口となる」ということです。
ECでいつでもどこでも商品が買えるようになった現在、東急ハンズが掲げている「ヒント・マーケット構想」とは、ほかの企業が真似できないような付加価値の提供とともに、とにかく顧客一人ひとりと向き合う、という原点に回帰しようという思いが込められています。
そのような背景で始めたソーシャルメディアですが、日々の更新でこだわっているのが、「+1 interest(プラスワン・インタレスト)」のある投稿をするということ。これはつまり、「思わず誰かに話したくなる」内容の投稿が重要ということです。
投稿の8割がユーザーへの返信。接客の価値をネットでも高める
ただ、ソーシャルメディア上の発信はあくまでも「対話」のため、店頭やソーシャルメディア上で接客を生み出すきっかけづくりに過ぎません。ソーシャルメディアというとバイラル(口コミ)効果に目が行きがちですが、「ヒント・マーケット構想」において重要なのは、お客さま一人ひとりに全力で向き合うということ。目の前のお客さまに共感して頂ければバイラルは自然と起きるというのがソーシャルメディアの仕組みですので、バイラルとはあくまで「付加要素」として意識することが重要であり、捉われすぎてはいけないと思っています。
実際に東急ハンズのツイッターは、投稿の8割がユーザーへの「返信」にあたる内容です。ここでのコミュニケーションのルールは店頭での接客と変わりません。こうして接客の価値をネットでも高めてユーザーの愛着を育てることで、買い物時の第一想起率を上げていきたいと思っています。
現状、ツイッターやフェイスブックの投稿で紹介した商品が東急ハンズのECサイト「ハンズネット」で売り上げが何倍にもなるといったような成功例も出てきていますが、本懐としてはSNSをきっかけとした実店舗への来店を増やすことも重要なポイント。また、フォロワー数やいいね!の数に振り回されすぎず、数字化できない絆やつながりを育てることが重要だと感じています。
→次回はNo3大阪ガスです。
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