巻(四)プレゼンの切れ味は“一行”にある。

それが良いプレゼンかどうかを見分ける方法は、実は極めて簡単である。

仮に、自分が1時間のプレゼンテーションを受ける立場であったとしたら、その冒頭で、プレゼンテーターにこう言ってみればよい。

「すみませんが60分ではなく、1分でやっていただけませんか?」

もし、このオーダーに即応できなければ、そのプレゼンを行おうとするチーム・メンバーがどれだけ多くの資料を調べ、議論し、苦心して提言書を作りあげたかは知らないが、そのプレゼンは最も大切な“結論がない”すなわち意味の薄いものということになる。

私は新米だった頃、このことをソニーの宣伝部でヒット・キャンペーンを連発されていた河野透さんから教えていただいた。

彼曰く、“良いプレゼンの条件は二つである”。

一つは、結論が一行で書かれていること。

もう一つは、その内容に営業的な視点からのチェックがなされていること。(つまり、その表現を見たクライアントの営業の人たちが、これなら売れると思うか、売るぞ!という勇気が出てくるか)

きわめてシンプルなアドバイスだったが、私はこの二つを自分のすべてのプレゼンテーションの最終チェックの項目として35年間使用し続けてきた。

この教えがなければ、自分のプレゼンの切れ味は今ほどには鋭くなっていなかっただろうと思っている。

そして、ある時、数十億円のコンペで、クライアントのトップがそのプレゼンの冒頭でこう言われたことがあった。

「申しわけないけれど、急用ができたので60分の予定だったけど、5分でやってもらえないか」と。

私が、そのプレゼンに要した時間は45秒だった。

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白土 謙二
白土 謙二

1952年生まれ。77年電通入社、以来約20年間クリエイティブディレクター、CMプランナー、コピーライターをつとめ、現在は企業の経営・事業戦略、商品開発、ブランドコミュニケーションなど、戦略と表現の両面から、あらゆる領域の統合的コンサルティングを行う。

白土 謙二

1952年生まれ。77年電通入社、以来約20年間クリエイティブディレクター、CMプランナー、コピーライターをつとめ、現在は企業の経営・事業戦略、商品開発、ブランドコミュニケーションなど、戦略と表現の両面から、あらゆる領域の統合的コンサルティングを行う。

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