丸原さんの宣伝会議賞の応募歴を教えてください。
宣伝会議賞はたしか第38回から応募しました。コピーライターを目指すようになってしばらくして、コピーだけで応募できる賞があること、そして会社の先輩で金賞(現 グランプリ)を獲った人がいると知り、自分もやってみようと思いました。
第40回で銀賞をいただくまで3年にわたりチャレンジしたことになります。最初からかなりの数を応募していました。すべての課題で100本ずつ書くぞ!くらいの勢いで取り組んでいましたね。休日は朝から晩までファストフード店などでペンを片手に頭をかきむしっていたものです。たくさん書いて、応募したのは毎回200本くらいだったのではないでしょうか。回を重ねるごとに、一次、二次を通過する本数が増えていったように思います。
広告賞へのチャレンジによって丸原さんが得たものとは。
宣伝会議賞に取り組んでいたときは営業だったので、実際の企業の商品やサービスのコピーが書けるというだけでうれしかったです。毎年課題が発表されるたびに、どれから書こうかとワクワクしていました。
コピーを書くという体験ができたのはもちろん、コピーライター志望であることをクリエイティブの先輩や上司にアピールすることもできました。いつも応募した後で、彼らに見てもらっていましたね。色々な人に見てもらうことでやる気が伝わりますし、技術的なアドバイスもしてもらえます。会社としては「やりたい」という希望だけで、キャリアのない人に仕事を任せることはできません。本気か、そしてある程度技術があるかがカギになります。
そういう意味では、歴史ある広告の専門誌が主催していて、実際のクライアントからのお題に応える形式の宣伝会議賞は、実績としてひとつの指標になるのではないでしょうか。賞までは届かなくても、一次、二次を通過すれば名前が雑誌に載るので自信がつきますし、アピールできると思います。
とはいえ、キャリアアップのためだけに書いていると気づまりがしてきます。アマチュアも参加できるオープンなコピー大会の場なのですから、新しい言葉の表現にチャレンジできる喜びを忘れずに挑めばいいのではないでしょうか。
丸原さんが考える「宣伝会議賞」の面白さ、醍醐味とは。
プロの仕事の場合、コピーの目的は何よりもまず、クライアントのビジネスを成功させることです。ところが宣伝会議賞には、クライアント担当者によるチェックも消費者調査もありません。過去の受賞作などを見ていても、実際の広告では使うのが厳しいと思うような思い切った表現があり、ハッとさせられることがあります。
宣伝会議賞は、常識にとらわれない表現や、消費者としての素直な思いをコピーにできるチャンスです。そしてそれをプロの審査員に評価してもらえるという貴重な機会でもあります。
最後に今後の目標について聞かせてください。
広告ビジネスというのは、大量生産、大量消費の社会とともに発展してきた面があります。これから社会のかたちが大きく変わっていくにつれ、広告ビジネスもこれまで以上の変化を迫られるのではないでしょうか。
言葉でクライアントの課題を解決し、ともに喜びを分かち合う、という基本は変わることはないと思いますが、仕事のやり方も含めて、どうすれば多くの人の幸せにつながるかを考えながら、悩みながら、書き続けていこうと思っています。
まるはら・たかのり
新卒で東急エージェンシーに入社し、営業を経て現在はクリエイティブ局所属。主なクライアントは東急電鉄、ECC、クリナップ、マルハニチロ、伊藤園、DHCなど。そのほか、ボランティアとして、NGO、NPOのクリエイティブをサポートしたり、Webメディア「greenz.jp」で社会派広告の記を書く。
日本最大規模の公募広告賞「宣伝会議賞」は第50回を迎えます。1963年にスタート以来、広告界で活躍する一流のコピーライターのほか、糸井重里さん、林真理子さんといった著名な書き手を輩出してきました。50回目となる今回は50社の協賛企業から課題が出されており、第一線で活躍する100人のクリエイターが応募作品を審査します。課題は9月1日発売『宣伝会議』本誌にて発表、2012年10月31日が締め切りとなります。