ゴーストライター百市&綿野

忙しい現実に流されそうな人へ

WATANO

アドタイをご覧の皆様、初めまして。ワン・トゥー・テン・デザインでディレクター修行中の綿野(男・22歳・うお座)と申します。本日は代表・澤邊の無茶振りとも言えるこの機会に、誠意を込めて臨みたいと思います。

さて、今回このコラムを書かせて頂くにあたり、一体テーマを何にしようかと悩みました。海外から仕事の様子を届けられるわけもなく、こんな一年目の新人には語る体験談も知見もさして無く…。でもやはりアドタイに載るからには広告に関わることじゃないといけないなと考え、今回は「今後、何を理想として仕事に取り組みたいか」というテーマで書かせて頂きたいと思います。

絡まったコードみたいに複雑なこの業界

この業界って幅広いです。「え、こんなことも広告の仕事なの?」ってものがわんさか溢れるこの時代。テレビCMやグラフィック、OOHやDMやラジオなどトラディショナルなものはもちろんのこと、企業の展開するサービス、アプリ、ゲーム、ひいてはその企業の活動自体などが結果として広告になるという、まるで異種格闘技戦状態。

そんな、広告の領域がどんどん広がって、今まで活躍していた広告とはまた違ったものが増えている状態で、「広告は変わった」という声を聞くこともたまにあります。でも正直に言うと、僕にはこの感覚がわかりませんでした。それは、この業界に興味を持ち始めた時からすでにそういう形をしていたし、むしろそれが当たり前だと思っていたからです。

もちろん、トラディショナルなんて古い! と言ってるわけではありません。むしろ大好きです。

テレビCMも大好きですし、グラフィックやOOHだって、笑いや驚き、納得や関心を与えてくれるし、これを作った人はどう考えてこれに至ったんだ…と頭を悩ませる日々です。

でもやっぱり、今までこの業界が担っている領域だったり役割というのは一昔前よりも複雑になったんだろうなと、周囲の雰囲気から感じています。

どうあがいていくか

そんな複雑怪奇なこの業界で、やっぱり誰しもが「理想の仕事像」を持っていると思うのですが、僕の場合はそれが2つあります。

まず初めに「課題に対してニュートラルに考える」という事。

ひどく当たり前なことですし、自分が出来るわけではないので、ここに書いてもいいのかなんとも微妙なところではあるのですが、やはりメディアにとらわれること無く、クライアントの抱える課題に対し最良の手段を選択していく事は、今求められいることなのではないかと思います。

これは、上にも書いた領域が広がっているとの話にも通じるところがあるのですが、課題に対して最良の手段を探すことは、シンプルでとても当たり前なことだけど、なかなか出来ていない。実際に仕事をしてみて、そう簡単なものではないということも理解しました。

例えば、最良な手段を探し当てたとしても、それをお買い上げ頂かないといけません。
もしその提案が、前例のない新しい挑戦であったなら、「それすごく面白いけど、効果あるの? そんなものに金を出すなんて怖いよ」と不安になるクライアントの方も少なくないでしょう。

でも、その不安などを私達のような人が取り除き、企業と一緒に挑戦していく、そういった文化のような物がもっと広まればいいな、広めたいなと思っています。

2つ目に「デジタルがあるからこそ」の施策が増えて欲しい、という事です。

今一番人々との距離が近いはずのデジタル領域。

やれソーシャルだ、やれバズを生んで、と言われているのにも関わらず、まだ枝葉として捉えられている現状にあると思います。これだけ能動的なメディアであるにも関わらず、そこまでの導線やそこからの道筋が、「いつもと一緒」感溢れる、決まりきったフォーマットを使い回しているように見え、なんだか蔑ろにされているのではないかと思ってしまいます。もっと、色々出来るのに。

カンヌなんかを見ていても、「デジタルがあるからこそ」の施策なんかザラにありますよね。
もちろん、自分たちの手で出来るに越したことは無いですが、それよりもまず、日本というこの国でそういう施策が増えて欲しいというのが本当のところです。

上の2つを読んでみて「1つめでニュートラルに、とか言っといて結局デジタル推しかよ。なんだよ回し者か」とお思いの方もいらっしゃるかと思いますが、そういう訳ではありません。ニュートラルに考えた結果、デジタルを駆使した施策を行いたい…。という状況が今よりも増えるんじゃないかと勝手に思ってます。

それは方法論の話ではなく、単なるトレンドとしての話でもなく、デジタルテクノロジーとの融合が日々の暮らしをもっと便利に、魅力的に、色鮮やかにしてくれると思っているからです。

理想を持つということ

以上書かせていただいたのは、あくまでも「今の私の理想」です。人それぞれその形態は違いますし、「それは違うんじゃないかいベイビー」とお思いの方もいらっしゃると思います。私自身、勉強不足の点も多々あると認識しています。

でも、私は今回このような機会を与えられて、ぜひ「若手」と呼ばれる人々にも同じような経験をして頂きたいと思いました。今自分はどういう思いで、どういう方向に進んでいて、そして今後どういう方向に進みたいのか、を言語化しておくことには少なからず価値があると思うのです。新卒の方だとそろそろ入社して半年、入る前と今とでは、色々と心境に変化があるかもしれません。

理想は、忙しい現実に流されがちです。流され続けていると、やりたいことは何だったのかわからなくなってしまう気がします。そしていつの日か、自分の望んだ方向へ進まなかったことを後悔する日がきっと来ます。なんだか上から目線でほんと申し訳ないのですが、自分たちのやりたいことを見失わず、最短距離を突っ走ったり、紆余曲折したり、悩んだり苦しんだりして、理想に近づける人が1人でも増えたらいいなあと思っています。

以上、新人2人の初コラムでした。まあ、若干青臭さはありますが、第1話でお書きした私の転機の頃に生まれ、子供の頃から身の回りに普通にネットがある環境で育った彼らが、これから、広告の未来を作っていくと信じています。

「こんな記事を書いた後でなんですが、非常に学ぶことが多かったので、またこのような機会がいただけたら嬉しいです。>社長」

甘えんな若造め!

で締めくくります。機会は自分で手に入れられますよ。

次回タイトルは、「日本のWebクリエイティブは世界で通用するのか?」。世界のプロダクションやプロモーションと比較しながら、私なりの考えを綴ってみたいと思います。

澤邊 芳明「Webプロダクション進化論」バックナンバー

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澤邊 芳明(ワン・トゥー・テン・ホールディングス代表取締役社長)
澤邊 芳明(ワン・トゥー・テン・ホールディングス代表取締役社長)

京都工芸繊維大学卒業。1997年にワン・トゥー・テン・デザインを創業し、ユニークなアイデアと時流に合わせた先進的なチャレンジによって、多くの大型キャンペーンを成功に導いてきた。ワン・トゥー・テン・デザインはこれまでに、カンヌライオンズ(カンヌ国際広告祭)金賞、One Show Interactive金賞、アジア太平洋広告祭(アドフェスト)グランプリなど、国内外のアワードを80以上受賞。デジタルテクノロジーを軸としたインタラクティブスタジオとして、国内外から注目を集めている。

2012年4月には5社と合流し、広告クリエイティブ領域からコーポレートサイト構築までのデジタルマーケティングを総合的にプロデュースするクリエイティブエージェンシー、「ワン・トゥー・テン・ ホールディングス」を設立。

ワン・トゥー・テン・ホールディングス:http://www.1-10holdings.co.jp
ワン・トゥー・テン・デザイン:http://www.1-10.com

個人ブログ:http://sawablo.com
twitter:http://twitter.com/sawablo
facebook:http://www.facebook.com/sawablo

澤邊 芳明(ワン・トゥー・テン・ホールディングス代表取締役社長)

京都工芸繊維大学卒業。1997年にワン・トゥー・テン・デザインを創業し、ユニークなアイデアと時流に合わせた先進的なチャレンジによって、多くの大型キャンペーンを成功に導いてきた。ワン・トゥー・テン・デザインはこれまでに、カンヌライオンズ(カンヌ国際広告祭)金賞、One Show Interactive金賞、アジア太平洋広告祭(アドフェスト)グランプリなど、国内外のアワードを80以上受賞。デジタルテクノロジーを軸としたインタラクティブスタジオとして、国内外から注目を集めている。

2012年4月には5社と合流し、広告クリエイティブ領域からコーポレートサイト構築までのデジタルマーケティングを総合的にプロデュースするクリエイティブエージェンシー、「ワン・トゥー・テン・ ホールディングス」を設立。

ワン・トゥー・テン・ホールディングス:http://www.1-10holdings.co.jp
ワン・トゥー・テン・デザイン:http://www.1-10.com

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