「宣伝会議集客・販促メディアフォーラム2012」が8月28日、29日、東京国際フォーラムで開かれ、新カテゴリを切り拓いた商品の販促、ネットと連動して店舗へ集客した施策、チラシ活用、消費者の行動観察などをテーマに、多くのセミナーが行われました。その一部を9月から10月上旬にかけて、本欄で紹介します。
椎名昌彦氏(日本ダイレクト・メール協会/専務理事)
世界で最も権威あるDMのコンペティション
「DMA国際エコー賞」は、DMA米国ダイレクトマーケティング協会が主催する、世界で最も権威のあるダイレクトマーケティングコンペティションです。同賞は1929年「ザ・ベスト・オブ・ダイレクトメール」という名称で開始されました。1979年に名称を現在の「DMA国際エコー賞」とし、審査基準をマーケティング戦略とレスポンス結果を重視したものに変更しました。エコー(こだま)とは「レスポンス」を意味しています。エコー賞のエントリーは「自動車」「通信/公共サービス」など12のビジネスカテゴリーで行われます。
審査には次の基準があります。「優れたマーケティング戦略」「群を抜いたクリエイティブ」「卓越した結果」の3つです。これらすべてを兼ね備えたキャンペーンがDMA国際エコー賞を受賞します 。
具体的な受賞作を見てみましょう。まず、ニュージーランドの富士ゼロックスが、最新技術を駆使したデジタル印刷機に関するDMを、印刷会社の経営者・役員・印刷オペレーターに宛てて送った事例。オフセット印刷機の利用者からは“大判コピー機”としか思われていなかったデジタル印刷機の品質をアピールするため、彼らに新製品のデモンストレーションに来てもらうことが目的でした。
彼らに届けられたのは、ダイヤルで施錠されたブリーフケース。ケースの持ち手にはURLが記載されており、URLにアクセスすることで開錠のためのダイヤル番号がわかります。開けると、中に入っているのは架空の「フジキスタン共和国」の紙幣の束。この紙幣で印刷品質の高さを訴求すると共に、イベントへの招待状を同封しました。結果は、送付したDM152通に対して、132人からのイベント参加申し込み。加えて、口コミ効果から追加申込み49件があったといいます。そして、イベント会場では商品3台をその場で受注し、15件の商談にも結びつきました。キャンペーンのROIは1ドルに対して163ドルでした。
ほかにも、さまざまな優れたアイデアがこれまで表彰されています。全体としてのトレンドで見ると、業種はBtoBの非営利団体によるキャンペーンが多く、近年では従来のダイレクトレスポンスにソーシャルメディアが有機的に組み合わされるようになってきました。SNSでの認知や共感の広がりが、最終的な参加や購買に結びついています。ターゲットを絞り込み、クリエイティブのインパクトで認知を得る。そして、そのクリエイティブを単なる引き金にせず、行動にまで移させる。優れたDMにはそのような共通点があります。
→次回はNo.8 アイリスオーヤマです。
【バックナンバー】
- (No.6)アサヒビール「女性の深層心理を具現化し新市場を切り開いたノンアルコールカクテル誕生の秘話」
- (No.5)サトーカメラ「商品を変えず切り口を変えて攻める栃木No.1カメラ店」
- (No.4)ユニリーバ・ジャパン 機能を証明する「体感型プロモーション」~アックスが提案する「新・汗対策」!~
- (No.3)大阪ガス 「行動観察」を起点とした店頭づくり
- (No.2)東急ハンズ 「“東急ハンズのツイッター活用”にみる、ネットとリアルの連携」
- (No.1)ライオン「“ルックまめピカ”にみる新市場開拓とプロモーション」