今回も、広告界の最前線で活躍するクリエイティブディレクター、コピーライター、CMプランナーが審査員を務めます。その数、なんと100人!
このコーナーでは、審査員の皆さんが日替わりで毎日登場します。プロのコピーライターの皆さんは一体、どんなシチュエーションでコピーを生み出しているのでしょうか?宣伝会議賞のグランプリ、そしてコピーライターとしてのキャリアアップを目指す皆さんに向けたメッセージもお届けします。
本日は、パイロンの鵜久森 徹さんへのインタビューを紹介します。
サッポロビール「ドラフトワン」の名付け親でもある鵜久森さん。
そのお仕事は広告の企画・制作にとどまらず、ブランドの開発・育成といったより川上のフェーズにまで及びます。
最近のお仕事には、ギンザコマツに8月にオープンしたシューズショップ「KiBERA(キビラ)」の告知広告があります。
——すぐれたアイデアが浮かぶのは、どんな瞬間でしょうか?
鵜久森さん 場所はこだわりません。机に向かってひとり静かに集中する時もあれば、デザイナーと打ち合せをしながら、その場の熱量によって捻り出すことも。電車での移動中も悪くないです。
——ブランド開発から広告制作まで幅広く手掛ける鵜久森さんのアイデアは、あらゆるシーンで生み出されているのですね。そうしてアイデアを練るときの、マストアイテムと言えば何でしょうか?
鵜久森さん 青いインクの筆記用具(万年筆でも、サインペンでも、ボールペンでもOK)と、紙(原稿用紙でも、手帳でも、裏紙でもOK)、そしてあえて3つ目を挙げるとすると、文章を仕上げるためのパソコンかな。
——青いインクにはリラックス効果があるとよく言われますが、やはりその効果を感じてのことなのでしょうか。ところで、鵜久森さんは、制作会社、広告会社、個人事務所とさまざまな経験を経たのち独立、2005年にパイロンを設立されました。広告の作り手として、大事にされている考え方や行動があれば教えてください。
鵜久森さん 私が駆け出しの頃、ある超有名コピーライターの講演を聞きに行った時の話です。「コピーライターになりたい人は手を挙げて」という問いかけが。手を挙げると「キミたちは向いてないから辞めたほうがいい」と。
理由は、「コピーライターは時代を見る力が求められる仕事なのに、今ごろコピーライターになりたいと言う人は、時代をつかめていない」ということ。あれから長い歳月が過ぎたけれど、この指摘を今も思い出します。
——時代を見据え、そこで求められることとは何かを考え、それに応える言葉を紡ぎだす。コピーライターとしてのあり方を考えさせられるエピソードですね。
次回は、電通・玉山貴康さんへのインタビューを紹介します。宣伝会議賞への応募経験もある玉山さんからのメッセージに、乞うご期待ください。
鵜久森 徹(パイロン/コミュニケーションディレクター)
広告の仕事にモスバーガー、無印良品、サントリー、ユニクロ、西武百貨店。ネーミングの仕事に、サッポロ ドラフトワン、フィールズ、本の仕事に『無印良品のふしぎ』、『独立独歩』などがある。TCC新人賞、日本雑誌広告賞、消費者のためになった広告コンクール銀賞、毎日広告デザイン賞、カンヌ国際広告祭など。
【宣伝会議賞1分アドバイス バックナンバー】
- 吉澤 到さん「クライアントがコピーライターに期待する役割はより大きく、重くなっている」
- 濱田雄史さん「一次と二次の審査結果を見ると、自分のコピーが“当たり”かわかる」
- 阿部光史さん「人の心に灯りを点すコピーを」
- こやま淳子さん「宣伝会議賞で、仕事では鍛えられない筋肉を鍛える」
- 横澤宏一郎さん「応募経験が、クリエイティブ職を目指す自信になる」
- 三井明子さん「たいくつな映画を観ているときにもコピーが生まれる」
- 富田安則さん「重要なのは、応募に自分なりの目的を持つこと」
- 原晋さん「コピーは、ひらめかない」
- 林尚司さん「アイデアが浮かんだらすぐに書きとめる」
日本最大規模の公募広告賞「宣伝会議賞」は第50回を迎えます。1963年にスタート以来、広告界で活躍する一流のコピーライターのほか、糸井重里さん、林真理子さんといった著名な書き手を輩出してきました。50回目となる今回は50社の協賛企業から課題が出されており、第一線で活躍する100人のクリエイターが応募作品を審査します。課題は9月1日発売『宣伝会議』本誌にて発表、2012年10月31日が締め切りとなります。