ものがたり屋。

林潤一郎(オレンジ・アンド・パートナーズ/2005年宣伝会議コピーライター養成講座総合コース、2006年同上級コース、同専門コース〔山本高史クラス〕修了)

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入社間もない頃、先輩と一緒に手がけたプロジェクト。商品開発から販促まで一気通貫してものがたりを紡ぐ勉強になりました。
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「副社長への手紙」
オレンジ・アンド・パートナーズと言えば「バースデー・サプライズ」です。社長が手がけると、ただの遊びとは思えないクオリティに。部下はたまったものじゃありません。
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O&Lで、お仕事帰りに一杯どうぞ。うちの会社の受付は、昼はパン屋、夜はテキーラバーとしてご利用いただけます。ものがたり談義に興じるのも乙かもしれません。
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仕事が終わらず、楽しみにしていた飲み会をドタキャンした夜。「未練は斬って捨てました・・・」と、山本周五郎の短編小説『雨あがる』のラストシーンのセリフをつぶやく。そして物憂げな顏でオフィスの電気を消し、最終列車で家路につく自分の姿に一種の心地よさすら感じているようなダメ人間ですが、こうしてコラムを書く機会をいただきあらためて考えたことがあります。

人に何かを伝えるのは大変だなぁということ。超当たり前ですけど。自分が伝えたいと思っていることと、相手の聞きたいと思っていることって、大抵、違うものなんですね。気心知れた友人との会話でも、思った以上に盛り上がらなかったり、あるいは不快にさせてしまうこと、ありますよね。その直前にあった出来事、場の雰囲気、声の大小など、コミュニケーションを形成する要素が複雑に絡みあっていく中で、思い通りに伝えるのは大変です。ましてやメディアの中の顏も見えない相手から投げつけられる広告なんて、どれだけ難儀なことか。思わずいま書いている企画書をチェックしてしまいました。残念ですね。プランナーとしてほんと未熟だなと反省しながらこの後も書き続けます。

余計なことを考えずにとにかく動く。企画書は全ページ最高賞狙いのコピーで書く。そして、自分の力以上の結果を導くためにみんなでつくる。と、これまでのコラムに書いてきましたが、すべてを括って大切にしたいことがあります。それは「ものがたり」を意識することです。一発面白いコピーを書こう。一発かっこいいデザインを描こう。一発話題になるイベントを仕掛けよう。どれも間違いです(断言してもいいですか)。

自分の伝えたいことを相手に正しく伝えるためには、省略してはいけないのです。“昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが・・・、鬼を退治しました!”では、誰も記憶にとどめてくれませんよね(笑)。起承転結、紆余曲折、色々な「ものがたり」があるからこそ、忘れられないメッセージになるのだと思います。例えば、そのコピーの背景には何があるのか。そのコピーはどこで読むのか。そのコピーを読んだ人にどうして欲しいのか。こんな事を考えながら企画書を書くのが「ものがたり」をつくることなのだと思っています。

つまり今回のコラムで何が言いたかったのかと言うと・・・。企画はものがたりだ!ということ。プランナーとか、コピーライターは、ものがたり屋だ!ということ。世界のトップブランド/商品は、ご多分に漏れず「ものがたり」を持っています。人は「ものがたり」があるから愛着を抱くことができます。

一過性の注目を集めるのではなく、100年残るメッセージを残したい。公の場で言うのはとても恥ずかしいのですが、僕は本気でそういうことを思っています。むしろ公の場で言うことで、途中で放り投げ出すことができないプレッシャーを自分にプレゼントしちゃいます。あの名曲や、名画のように。いつまでも人の心に残るような企画で、言葉で、世界をちょっとだけ良い方向に持っていくことができたらいいですね。名刺の肩書きが何にせよ、考える仕事は辛くて、辛くて、辛くて、時々嬉しくて、素敵ですよ。

1カ月間、このコラムにお付き合いいただきましてありがとうございました。

林潤一郎さんのコラムは今回で終了です。次回(10月1日)は貝洲 岳洋さん(電通コーポレート・コミュニケーション局)のコラムを掲載します。

林潤一郎
オレンジ・アンド・パートナーズ プランナー/コピーライター/ディレクター。1980年生まれ。東洋大学社会学部卒業後、広告営業を経てリクルートメディアコミュニケーションズ入社。ディレクターとして様々な企業の求人広告を制作し、2007年東京コピーライターズクラブ新人賞を受賞。2010年より現職。主な仕事に首都高『TOKYO SMART DRIVER』、WDLC『SUPER ROOKIES』のキャンペーン企画、クリエイティブディレクションなど。その他、社内のコピーライティング業務全般。宣伝会議コピーライター養成講座2005年総合コース、2006年上級コース、専門コース(山本高史クラス)修了。

【バックナンバー】

コピーライター養成講座卒業生が語る ある若手広告人の日常

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2012年10月 貝洲岳洋 「(極私的)広告セレンディピティ(1)」はこちら

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