今回も、広告界の最前線で活躍するクリエイティブディレクター、コピーライター、CMプランナーが審査員を務めます。その数、なんと100人!
このコーナーでは、審査員の皆さんが日替わりで毎日登場します。プロのコピーライターの皆さんは一体、どんなシチュエーションでコピーを生み出しているのでしょうか?宣伝会議賞のグランプリ、そしてコピーライターとしてのキャリアアップを目指す皆さんに向けたメッセージもお届けします。
本日は、電通の薄 景子(すすき・けいこ)さんへのインタビューを紹介します。
最近のお仕事としては、日本の若手ファッションデザイナーを支援するパルコの活動「FIGHT FASHION FUND」のコピー「ニッポン ファ・ファ・ファ!」が挙げられます。「FIGHT FASHION FUND」の広告ビジュアルはこちらからも見られます。
――コピーが浮かぶのは、どんな瞬間でしょうか?
薄さん お茶を飲んでいる時。電車に乗っている時。歩いている時。お風呂に入っている時。いいなと思えるボディコピーが書けた後、もう一度キャッチフレーズを書いてみた時も、いいアイデアが浮かぶことがあります。
――書き終えた後のもうひと押しが、これまでにないアイデアにつながることもあるのですね。コピーを考えるときの、マストアイテムと言えば何でしょうか?
薄さん ノートと、ボールペンと、清書のためのパソコンです。
――薄さんは、宣伝会議賞への応募経験もお持ちですね。当時のエピソードや、応募の際に工夫していたことなどがあれば教えてください。
薄さん 一度応募して、「ああ、終わったぞ~、遊びに行くぞ~」とアタマを解放させた後に、もう一度いくつかコピーを書いてみると、いいコピーが書けることに気づきました。そうか、脳みそはだませるんだと思い、何年かその方法を続けました。
――「脳みそをだます」!頭を意識的にリラックスさせることで、必死に考え続けている時とはまた違う、自由なアイデアが生まれるのかもしれませんね。最後に、薄さんがコピーライターとして大切にしている行動や、考え方があれば教えてください。
薄さん コピーに限らず、何かものを書く時、自分の中からことばを生み出そうというエゴを捨てると、アタマの中の風通しが一気によくなる気がします。クライアントさんの話、自分の中や世の中に落ちている気持ち、誰かが自分に言ってくれたことなどから、ことばを拾う編集者的な感覚を持つと、生きたことばが書ける気がします。
――何もないところから、言葉を魔法のように生み出そうとするのではなく、身の回りにあるさまざまなヒントを活かすこと。必死に考えれば考えるほど、近視眼的になってしまいがちですが、そういう時こそ一度立ち止まって、少し視野を広げてみることが大切かもしれません。
次回は、大広・安路 篤さんへのインタビューを紹介します。お楽しみに。
薄 景子(電通/コピーライター、CMプランナー)
最近の主な仕事は、ガールスカウト日本連盟ブランディング、ジュピターエンタテインメント「LaLaTV」、パルコ「FIGHT FASHION FUND」、ツムラ企業広告、ユネスコ世界寺子屋運動、「ラヂオえほん」の制作など。ACCグランプリ、ベスト企画賞・演出賞、クリエイター・オブ・ザ・イヤー特別賞、TCC新人賞、広告電通賞など、受賞多数。
【宣伝会議賞1分アドバイス バックナンバー】
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日本最大規模の公募広告賞「宣伝会議賞」は第50回を迎えます。1963年にスタート以来、広告界で活躍する一流のコピーライターのほか、糸井重里さん、林真理子さんといった著名な書き手を輩出してきました。50回目となる今回は50社の協賛企業から課題が出されており、第一線で活躍する100人のクリエイターが応募作品を審査します。課題は9月1日発売『宣伝会議』本誌にて発表、2012年10月31日が締め切りとなります。