「宣伝会議販促・集客メディアフォーラム2012」が8月28日、29日、東京国際フォーラムで開かれ、新カテゴリを切り拓いた商品の販促、ネットと連動して店舗へ集客した施策、チラシ活用、消費者の行動観察などをテーマに、多くのセミナーが行われました。その一部を9月から10月上旬にかけて、本欄で紹介します。
エステー株式会社 グローバルマーケティング部門 マーケティング本部
マーケティンググループ 第2チームシニアスタッフ 浅野貴之氏
防虫剤離れの若年層をターゲットに
防虫剤シェアにおいて当社は約45%を占め、その中で「ムシューダ」は約30%を占めるブランドになっています。
ただ、防虫剤マーケットは、年々微減傾向にありました。その要因の一つとして若年世代の使用者の減少があげられます。これは虫害経験率の低下や住宅環境の変化、ファストファッションへのシフトなどがあり、防虫剤の必要性が薄れてきたことにあります。
そこで若年層をターゲットにした防虫剤「かおりムシューダ」を開発しました。
開発にあたり重視した点は若年層が興味のある機能を付加してアプローチをするマーケティング施策です。
商品開発でまず着目したのが〝香り〟です。柔軟剤や清潔感のある香りを選定し、20代~30代のターゲットイメージをもとに香りの方向性を決めていきました。
次にパッケージデザインでは防虫剤らしくないデザインを志向しました。キャラクターデザインには気鋭デザイナーの佐野研二郎氏を起用し、ゆるキャラの〝かおりちゃん〟が誕生。30代主婦から〝自分たちらしい〟との共感を得ることができ、店頭でも他製品と差異化された目立つデザインとなりました。
そしてもう一つがネーミング。「香り」と「ムシューダ」は一見相反しますが、あえて使用しています。「ムシューダ」は安心の防虫剤として広く認知されており、このブランド名を取り入れることで、お客様の商品から受ける安心や信頼度を高めたいと考えたからです。
若年層や新規ユーザーが増えマーケットが拡大
プロモーションはあくまで店頭を重視し、売り場で香りを試す施策を展開しました。テスターシールの〝香りシール〟や、香りをより実感できる〝香りビーズ〟などを売り場に設置しました。これにより、お客さまが店頭で立ち止まり、購入につなげることができました。
こうしたプロモーションを通して、「かおりムシューダ」は発売後3カ月で約100万個を出荷することができました。
ユーザーの中心は若年層で、約50%の構成比。さらに、全ユーザーの約20%が新規と休眠ユーザーとなり、マーケットの拡大にもつながりました。
発売後はブランド育成として香りや用途のラインナップの充実やパッケージデザイン・ブランドロゴの変更などを行い、幅広いユーザー獲得を目指しています。販促プロモーションに関しては、防虫剤と防虫剤ノンユーザーとの共感接点の発見をテーマにしており、今後もよりダイレクトなアプローチで防虫剤使用者の拡大を目指します。
総括として、(1)お客様目線での商品開発(2)既存の概念にとらわれない(3)基本マーケティングの実践といった、基本に忠実に取り組んだことが成功のポイントだと思います。
→次回はNo.12 大和ハウスです。
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