アドタイでは今回、審査員を務めるクリエイターの皆さんから応募のアドバイスを一問一答でいただき、順次紹介しています。短い、シンプルな内容ではありますが、その言葉の節々にコピーを生み出すヒントが詰まっています。
宣伝会議賞の入賞、そしてコピーライターとしてのキャリアアップを目指す皆さんに向けたメッセージもいただきました。ぜひお役立てください。
本日は、博報堂の下東史明さんへのインタビューを紹介します。
最近の仕事では、サッカー・本田圭佑選手を起用した、アサヒフードアンドヘルスケアMINTIAの広告コピー「俺は持ってる。」が挙げられます。本田選手のイメージにぴったりのコピーが各所で話題になりました。MINTIAの広告コピーはこちらでも見られます。
――コピーが浮かぶのは、どんな瞬間でしょうか?
下東さん サウナで汗を見つめる瞬間。毛穴と同時に、頭の細胞も開く感覚があります。あと、クライアントの方と話す瞬間。思いを受け止め、その方の立場に立つと言いたいことが芋づる式に出てきます。
――コピーの対象となる企業・商品・サービスが持つ魅力や、伝えたいメッセージを、言葉という形に変換して、世の中に向けて発信していく。コピーライターが担う役割は大きいですよね。コピーを考えるときの、マストアイテムと言えば何でしょうか?
下東さん 雲はあっても晴れた空、示唆に富む営業、そしてポジティブな自分です。
―― 審査員の皆さんの中にも、広告会社の営業職出身の方が何人かいらっしゃいますが、クライアントと正面から向き合う立場ならではの視点が、コピーライティングにも役立つことが多いのかもしれませんね。最後に、「コピーライター」という仕事への思いを聞かせてください。
下東さん 紀貫之が「力を入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ」と言うくらい、コトバにはチカラがあります。また、「日本は言霊の幸わう国」とも言われます。コピーライターは、コトバを国家へ社会へ人々へ届ける、古くからある(名称や職種としては最近ですが)大切な仕事だと実感しています。
――過去も現在も、言葉は変わらず「力のあるもの」と捉えられてきたのですね。「日本は言霊の幸わう国」=日本は、言葉の霊力によって幸福がもたらされる国。言葉の担い手であるコピーライターは、その力を正しく使うことで、世の中を良くしていくことが求められているのだと思います。
次回は、岡田直也事務所・岡田直也さんへのインタビューを紹介します。岡田さんが考える、「今、コピーライターに必要なもの」も伺いました。お楽しみに。
下東史明(博報堂/コピーライター)
1981年生まれ。主な仕事に、アサヒMINTIA「俺は持ってる」、一本満足バー「まんまん満足」、英会話Gaba「ハイ、そこでGaba」、サントリー胡麻麦茶、イエローハット、カカクコム、アストラゼネカ、Greenbirdなど。著書に『あたまの地図帳』『トレインイロ』。TCC審査委員長賞・新人賞・ファイナリスト、ヤングカンヌ日本代表など受賞多数。
【宣伝会議賞1分アドバイス バックナンバー】
- 國武秀典さん「細かい部分にこだわりすぎず、潔く、新しい視点を発見する」
- 左俊幸さん「今は、コピーの『型』にとらわれず、好きに書くしかない」
- 笠原千昌さん「最高の1本にたどり着く努力を怠らない!」
- 森田直樹さん「コピーライターは“言葉守”になるべき」
- 赤城廣治さん「今の時代に求められるコピーライターとは、独自の『いいね!』を押せる人」
- 中村猪佐武さん「良いコピーを生むのは、ADやプランナーとの『あーでもないこーでもない』」
- 岩田正一さん「コピーライターは、『想いを言葉にする』仕事」
- 服部タカユキさん「コピー講座で教わったことを愚直に守り続けた」
日本最大規模の公募広告賞「宣伝会議賞」は第50回を迎えます。1963年にスタート以来、広告界で活躍する一流のコピーライターのほか、糸井重里さん、林真理子さんといった著名な書き手を輩出してきました。50回目となる今回は50社の協賛企業から課題が出されており、第一線で活躍する100人のクリエイターが応募作品を審査します。課題は9月1日発売『宣伝会議』本誌にて発表、2012年10月31日が締め切りとなります。