丸原孝紀さんに聞く(後編)「ホットパンツで革命を」

丸原孝紀さんに聞く(前編)はこちら

丸原孝紀 プロフィール
1976年京都生まれ。東急エージェンシー コピーライター(東京コピーライターズクラブ会員)。企業に社会貢献型のコミュニケーションを提案するとともに、NGO/NPOのクリエイティブを積極的にサポートしている。モットーは、「書き続ける。この世に言葉と問題がある限り。」環境系の主な仕事に、R水素ネットワーク、LOVE!ハイロキャペーン、MAKE the RULE、チョコレボ、フェアウッド・パートナーズ、水Do!、エコロギフトなど


前編からの続きです。

「矛盾を自覚すること」が大事。

並河氏x丸原氏

並河:丸原さんは社会問題を発信しつづけていますが、行き場のない矛盾のようなものにぶつかることはないですか?

たとえば、僕は、児童労働をなくそうと活動しているNGO「ACE」のコミュニケーションのお手伝いをしているんですが、健全な成長や学業を妨げるほどの労働に従事している5歳から17歳の子どもが、世界では2億1500万人もいると言われています。

でも、こうした児童労働の問題だって、環境の問題だって、突き詰めて調べていくと、その問題を引き起こしている大きな原因の一つは、大量生産、大量消費のシステムだったりする。

そして、広告というものは……決めつけるのがよくないとしたら、少なくとも今までの広告というものは、大量生産、大量消費のシステムとは切っても切れない関係にあるわけで、そういう仕事をしている自分が、社会問題を問いかける、というところに、自分自身、息苦しいような矛盾を感じてしまっていて……。すいません、なんだか人生相談みたいですね……。

丸原:大量消費、大量生産の流れの中で成長したのが広告だから、大量消費、大量生産を否定することは、自己否定にもつながるし、「それ言っちゃおしまいよ」ってことかもしれない。

でも、広告をつくる人たちの心の部分を見てみると、「共感して、ものごとを解決していく」というプラスの面もある。

僕は、楽観的に考えていて、広告なんて仕組みにすぎないから、流動的なもので、社会が変わって、大量生産、大量消費の世の中じゃなくなったら、意外とすぐに広告のビジネスのカタチも変わっちゃうんじゃないかなって思っています。

でも、そうやってすぐに変われるためにも、並河さんが言うような「矛盾」をちゃんと自覚している、というのが、すごく大事なんじゃないでしょうか。

ピエロが茶化すことで、その場の閉塞感を打ち破る。そんな感じが理想。

丸原:そうした「自覚をうながすコミュニケーション」というものを、たとえていうなら、「王様は裸だ!」というようなことを自分はやっていきたいんです。

それも、深刻な形じゃなくて、ピエロが茶化すことで、その場の閉塞感を打ち破る、そんな感じが理想なんです。

並河:ホイチョイ・プロダクションズをはじめ、広告の人たちって、自分たちで自分たちを茶化している感覚が文化としてありましたよね。

無意識かもしれないけれど、自分たちで茶化していかないと、どんどん息苦しくなって、どんどん自分が楽しいこととは関係のないシステムに取り込まれてしまうという危機感があったのかもしれない。

丸原:気づかないうちに大きくなっているものは、どんどん茶化した方がいいんですよ。

ビッグブラザーが人間を支配している社会に、ホットパンツをはいた女性がさっそうと現れて、ビッグブラザーが映る画面を破壊する、という内容のアップルの名作CM「1984」がありましたよね。

僕は、並河さんにも、ホットパンツをはいて、広告業界にさっそうと現れてほしい。

並河:ホットパンツ……(呆然とつぶやく)。
僕の人生には、なぜか、ときどき、ホットパンツが現れるんですよ。

丸原:ホットパンツを着た女の子が現れるということ?

並河: オノ・ヨーコさんが、雑誌のインタビューで、こんな風に答えていたんです。「想像してごらん、世界中の人がホットパンツをはいていたらって。素敵なことだと思わない?」。

もしかしたら、ホットパンツって、「革命」っていう意味があるのかな。

丸原:ホットパンツは、いきいきとした人間を取り戻す、象徴ですよ。

並河:「ホットパンツ=人間性を取り戻す革命の象徴」(とメモをする)。
うん、その通りですね。

いろいろな問題に対して、僕らは、楽しく、面白く、いきいきとした人間性で立ち向かわなくちゃいけない。
閉塞感のある「現在」があるとしたら、それを笑い飛ばすようなスタイルでいかなくちゃいけない。

そうやって、気づきを生み出すことこそが、クリエイティビティだし、コミュニケーションの力なんですよね。

丸原:ホットパンツで革命ですよ!


次回は、さとなお(佐藤尚之)さんです。

並河 進「広告の未来の話をしよう。COMMUNICATION SHIFT」バックナンバー

並河 進(電通ソーシャル・デザイン・エンジン コピーライター)
並河 進(電通ソーシャル・デザイン・エンジン コピーライター)

1973年生まれ。電通ソーシャル・デザイン・エンジン所属コピーライター。ユニセフ「世界手洗いの日」プロジェクト、祈りのツリープロジェクトなど、ソーシャル・プロジェクトを数多く手掛ける。DENTSU GAL LABO代表。ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン・クリエーティブディレクター。宮城大学、上智大大学院、東京工芸大学非常勤講師。受賞歴に、ACCシルバー、TCC新人賞、読売広告大賞など。著書に『下駄箱のラブレター』(ポプラ社)、『しろくまくん どうして?』(朝日新聞出版社)、『ハッピーバースデイ 3.11』(飛鳥新社)他。

並河 進(電通ソーシャル・デザイン・エンジン コピーライター)

1973年生まれ。電通ソーシャル・デザイン・エンジン所属コピーライター。ユニセフ「世界手洗いの日」プロジェクト、祈りのツリープロジェクトなど、ソーシャル・プロジェクトを数多く手掛ける。DENTSU GAL LABO代表。ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン・クリエーティブディレクター。宮城大学、上智大大学院、東京工芸大学非常勤講師。受賞歴に、ACCシルバー、TCC新人賞、読売広告大賞など。著書に『下駄箱のラブレター』(ポプラ社)、『しろくまくん どうして?』(朝日新聞出版社)、『ハッピーバースデイ 3.11』(飛鳥新社)他。

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