ボクは雑誌の企画や編集を請け負う編集プロダクションを経営している。本社は大阪で小さいながらも東京と名古屋にも拠点を置いて、バタバタと出版社のお仕事をさせてもらっているのだ。
版元(出版社)は圧倒的に東京に集中してはいるが、地元にオフィスが在るという理由で地方のリージョナルなお仕事を頂く機会も多い。最近は永らく続くこの不況のせいか、相見積もりは勿論のこと、様々なコンペに参加してお仕事につなげていくという事も多くなった。クライアント側も、よりコストダウン&クォリティアップを思っての事だとは思うのだが、中には完全に価格だけの競合になる場合も実に多い。当然ながら何らかの企画コンセプト〜企画内容案、そして実際に即した企画詳細と流れ、最終的にお見積りなり概算の積算などの数字を最後に添付して提案書を作る、というのが業界慣例になっている。
私はそもそも関西出身なので、東京に企画書を出した時の感動を今も忘れない。「あっ、企画書を最初から読んでくれてるぅ」というのが最初の感想だった。関西は銭金にシビアだとよく言われるが、まさに企画書をお出しした場合、ほとんどの担当者はペロッと企画書の束をそっくり裏返し、一枚目(すなわち最終ページ)をひろげて「…で、なんぼ(幾ら)になんの?」と聞かれる場面に慣れきっていた関西人のボクは、東京の担当者が律儀に企画書の表紙から丁寧に読んでくれて、最後の最後に見積書の説明を聴くという、まっとうな順番に感動したものだった。
東京と大阪での商習慣の差は、当時よりは少なくなったとはいえ、何だか根っこは何も変わっていないように感じるのだ。粘っこく値切られるのがいいか?冷徹に笑顔で没を喰らわされるのがいいか?…うーむ、どっちも嫌だなやっぱり。
石原卓「東奔西走 関西の編プロ社長奮闘記」バックナンバー
- 第4回 編集とは行儀ではないかという仮説(11/16)
- 第3回 江戸好みの京都特集ってどうよ!(11/9)
- 第2回 版下の時代にあったモノ(11/2)
- 第1回 企画書の開き方、東西東西。(10/26)(こちらの記事です。)
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※本コラムの執筆者 石原卓氏は大阪教室にて登壇します。
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