(極私的)広告セレンディピティ(4)(終)

貝洲岳洋(電通 コーポレート・コミュニケーション局/宣伝会議コピーライター養成講座2009年春・基礎コース修了)

俺のセレンディピティ

ここまで3回にわたって、「広告にまつわる幸運な巡り合わせ」をテーマに書いてきました。コラムで書いてきたことを含め、あらためて自分の今までの社会人生活を振り返ってみると、「動く」というワードが頭に浮かんできました。自分の意思を持って動いたこと、そうでなかったことの両方が入り交じっていますが、いずれにしても「動いた」ことにより、自分にとって糧となるたくさんの大切なものを得ることができた、という実感があります。

中でも特に、人との出会いには本当に恵まれていると感じています。フェイスブックのおかげで今まで所属してきた会社の方々や小・中・高・大、各カテゴリーの友人と再びつながることができました。昔僕の家の隣に住んでいて、小学校の途中で転校した幼なじみを囲んでの、約25年ぶりの再会を祝した同窓会をはじめ、久しぶりの飲み会も何度か実現出来ました。また、日々同じ広告業界の友人や先輩の近況をチェックして刺激をもらっています。趣味のラーメンやカラオケ、フットサルのグループでのプライベートなつながりも拡がっています。

また僕が「動く」かどうか悩んで決めかねていた時に、リアルに会って相談に乗ってくれた大切な友達もいます。

僕に「セレンディピティ」があるのかどうかは正直よく分かりません。ですが、12年間の広告人生で起こった出来事、たくさんの人との出会いすべてが幸運だった、と今思えていることが一番重要だと思うのです。なのでこれからも、自分の信じる方向に向かって動いていきます。キャッチフレーズは、『Just move it.』 どこかで聞いたことがあるような響きですが・・・

中性浮力

貝洲岳洋さん_アオウミガメ

僕が撮影したアオウミガメ。


貝洲岳洋さん_カクレクマノミ

友人が撮影したカクレクマノミ。

僕はダイビングのライセンスを取得していて、たまに潜っているのですが(先月遅い夏休みを利用して、久しぶりに沖縄のケラマ諸島方面に行ってきました!)、ダイビングの基本技術に「中性浮力」というものがあります。体につけた浮力調整器具を利用して器材を含めた体の平均比重を水の比重と合わせると、体は浮く事も沈む事も無くなり、その結果最小限のエネルギー消費で水中を楽に移動することが可能になるというものです。久しぶりに潜ると最初はなかなかその感覚を取り戻せないのですが、2本目くらいから徐々に体が思い出してきて、そのうち中性浮力がとれるようになると、水中での移動が楽しくなってきます。周りの景色を見渡すと一面のサンゴ礁や、それに群がるカクレクマノミ(映画『ファインディング・ニモ』のモチーフになった魚です)を見つけることができ、さらにアオウミガメにも遭遇することが出来ました。

「広告の海」に潜った。そこはちっぽけな自分が想像していたよりもずっと深く、圧倒的に広大なところだった。いざ目的地を定めて泳ぎ始めると、ものすごいスピードの水流に流されて、すぐにバランスをとるのが難しくなってきた。行きたい方角を見失い、溺れかけてしまったことが何度もあった。やっとの思いで少しずつ中性浮力のとり方を体が覚え、周りを見渡す余裕が出てくると、今まで見たこともないような景色や、珍しい人、魅力的な人がたくさん見えてきた。うまく中性浮力をとれるようになると、自分で行きたい方角を定めて自由に動けるようになる。どこに向かって泳ぐのも、誰と遭遇するのも自由。決めるのは、自分。

いつの日か、中性浮力をとって広告の海を自由に泳げる人になれるよう、精進していきます。

第一回のコラムで書いたように、最後にもうちょっと自分をさらけ出してから終わりたいと思います。僕はアイドルグループ「ももいろクローバーZ」のファンです。そのももいろクローバーZの『DNA狂詩曲』という曲の冒頭に、「(自分の身に何かが起こった時に)泣くのも笑うのも、どうするか決めるのは自分次第」といった意味合いの歌詞が出てきます。正直、(主に心で)泣いてしまうこともたくさんありますが、どんなことが起こっても出来るだけ早く笑いに換えられるようになりたい、と感じています。なぜなら、それが「幸運な巡り合わせ」を呼び込むことに直結していると思うからです。

以上で連載コラム『(極私的)広告セレンディピティ』は終了です。最後までお付き合いくださったみなさま、本当にありがとうございました。

ここから始まる「何か」、に期待しつつ。

kaisu
貝洲岳洋(かいすたけひろ)
電通 コーポレート・コミュニケーション局。1979年東京都生まれ。成蹊大学文学部文化学科卒業。創芸(現DGコミュニケーションズ)、アイ・アンド・キュー アドバタイジングを経て電通に入社。次世代コミュニケーションの研究・開発を目的とする社内横断ヴァーチャル組織「電通モダン・コミュニケーション・ラボ」に参加。


貝洲岳洋さんのコラムは今回で終了です。次回(11月5日)は小野勇樹さん(デイリーフレッシュ デザイナー)のコラムを掲載します。

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