関西で編集プロダクション稼業をやっていると、年に一度集中して発注が重なるのが「京都特集」の類である。なぜか東京の編集部は一斉に京都に目を向けるらしい。GWのプチ旅行とか秋の紅葉前などは順番待ちの状態で京都特集が様々な切り口で書店に並ぶ。
関西にとっては京都という場所は摩訶不思議な場所である。単純に取材依頼などしてしまっては元も子もないという事態が往々にして起こってしまう。京都独特の話の通し方であったり、取材の段取りであったり、横に併載する情報であったり、まるで歌舞伎役者のパンフレットの如く様々な仕来りや常識が要求される。ほとんどの場合、こういう京都事情に特化したライターさんなどとチームを組んで、取材依頼から取材、撮影までを一環してこなすというケースがほとんどだ。
そんな中、なかなか鋭い京都の切り口を出してくる編集部と、「今どき、その切り口で行きますかぁ〜」的な残念な場合とがある。発注者は版元のその人なので、全否定は出来ないし、仕方なくその東京人の思い描く京都を取材してあげてしまう。取材を受ける京都の人間もなかなかどうしてな百戦錬磨で「東京の編集部はんがそうお言いでしたら、こんな感じでええですなぁ…」などと、慣れたもんである。
結局通りいっぺんな京都特集が出来上がってしまって、通りいっぺんな観光客がそこを巡る。新しい情報が常に優先されるべきではないのだが、東京の思い込みで地方取材が方向付けされる事はよくあるのだ。そういう意味では地方メディアは面白い。京都のフリーマガジンも多数出ているし、学生なんかが作っているオリジナルなフリペなんかも楽しいし、リアルで前衛的な京都の今が取材されていて感心する事が多い。なのになぜか全国誌となると、“癒しの京都”だとか“ほっこり京都”となってしまうのはどーしてだろう? 関西にとって最もエキセントリックな動きを常にしているのが京都という街である事に東京の編集部はもっと敏感になるべきだと思っている。
石原卓「東奔西走 関西の編プロ社長奮闘記」バックナンバー
- 第4回 編集とは行儀ではないかという仮説(11/16)
- 第3回 江戸好みの京都特集ってどうよ!(11/9)(こちらの記事です。)
- 第2回 版下の時代にあったモノ(11/2)
- 第1回 企画書の開き方、東西東西。(10/26)
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