松倉早星さんに聞く(前編)はこちら
松倉早星 プロフィール
ovaqeクリエイティブ・ディレクター/プランナー。1983年、北海道富良野生まれ。立命館大学産業社会学部卒業。東京のウェブ制作会社にてウェブプランナーとして2年間在籍。2008年4月より、1-10designに転職後、2011年退職。同年12月ovaqe inc.設立。HOTEL ANTEROOM KYOTOのWEB制作およびホテルのメディアブランディング・プロデュースサポート、同ホテル内のGALLERY9.5にてキュレーターを担当。関西のカルチャー情報を集約と発信するWEBメディア“CNTR”や、トーク&ワークショップ・プログラム”MNRV”の主催。国内外の広告賞・デザイン賞受賞多数。
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前編からの続きです。
People as media
松倉:ウェブって、もともと解決型じゃなくて、参加型なんですよ。ばしっと一つの答えを出すのは、僕は無理かもしれない。
ウェブの広告って、広告をつくっている、というよりも、世界中のユーザーが遊べる「場所」をつくっている感覚がある。「こういう遊び方を思いついたんだけど、どう?」って、みんなに投げかけることができる。
そこが面白いですよね。
並河:一つの答えをマスで広く示す、のではなく、みんなでいろいろな答えを楽しみながら考えようよ、ということですよね。参加する人の数だけ答えはある、というか……。
松倉:僕は、学生時代、教授に言われた言葉の中に、「People as media(人がメディアとなる)」という言葉があって。あなたたちが生きる世界では、新聞、TVではなく、個人がメディアと同等の力を持つ時代が来るでしょう、と。
ほんとうに、今から、いろいろなことが変わっていくんだろうなって思います。
確かなのは、「みんなで何か一つの体験をつくってはいる」ということ。
並河:松倉さんにとって、広告とはなんですか?
松倉:僕らの世代で、広告ということを強く意識して仕事している人って少ないんじゃないかな。
HOTEL ANTEROOM KYOTOをプロデュースするプロジェクトをやっていたとき、広告費を使うぐらいなら、それよりもホテルの中に使いたいと思ったんです。ギャラリーをつくったり、訪れた人が体験できる場として残っていくものに投資したいって思ったんですよね。
並河:でも、すごくいいモノでもその良さが伝わらないモノは、たくさんありますよね。あのホテルには、存在自体でコミュニケーションしていける力があるということなんだと思います。
これからの広告って、内蔵されていくものなのかもしれない。松倉さんは、あのホテルに、広告を埋め込んだんだと僕は思うんです。一瞬で流されていく広告ではなく、ずっと残る内面の広告。
あえて、広告、という言葉を使えば、ですが。
松倉:いざ、広告って何?と聞かれても、僕はうまく言えない。輪郭がどんどん消えていっているような気がする。
確かなのは……「みんなで何か一つの体験をつくってはいる」ということ。
それが「広告」と言えるのかは……分かりません。
「分からない」価値ってすごく重要。
並河:今、一歩一歩の足の踏み出し方がとても大事な気がするんです。
広告業界は、いろんなキーワードやカテゴリーにあふれています。未来に対して不安だから、キーワードとかカテゴリーをつくって、みんなそういうものに頼りたくなっちゃうんだと思うんです。
でも、「分からないこと」を、あえて分からないままにして、その答えを、ゆっくりみんなで考えていく、ということも大切なことなんだと、今日お話しして感じました。
松倉:僕は、「分からない」価値ってすごく重要だと思っているんです。分からない部分に、どれだけ目線を向けているかが大事だと思う。
「広告の未来」もそうですよね。
「分からない」からこそ、こういう対話がとても面白いし、意味があると思うんです。
並河 進「広告の未来の話をしよう。COMMUNICATION SHIFT」バックナンバー
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