ダウンウェアというとどんなイメージを思い浮かべるだろうか。「ウインタースポーツ」「暖かい。だけど、モコモコ」といったところではないだろうか。ところが、「YOSOOU(粧う)」というブランドのダウンはちょっとワケが違う。伸縮率130%という特徴の生地を使っているため、どんな体型の人にもスマートにフィットする。
そして、いわゆる「ダウンジャケット」だけでなく、テーラードジャケットやトレンチコート、ドレスやタイまでダウンで作っているのだ。その代わり、このブランドはダウン以外の商品は一切展開していない。ブランドがヒットすると、アイテムを拡大することがファッション業界にはありがちだ。しかし、同ブランドはダウンに集中しているのだ。
マイケル・ポーターは競争力の源泉を「戦略の3類型」にまとめた。幅広い市場を戦場とし、コストを武器に戦う「コストリーダーシップ戦略」。それに対し、目に見える差別化要素で戦う「差別化戦略」。特定の市場に集中して戦いを展開する「集中戦略」という。
「YOSOOU(粧う)」の戦略は紛れもなく「集中戦略」だ。ダウンウェアに集中し、秋冬のみのシーズン展開に集中し、独自のショップを持たずに百貨店を中心とした期間限定ショップに集中する。「YOSOOU(粧う)」が示しているもの。それは、中途半端な戦略では独自性のあるポジションを築いてヒットすることはできないということだ。「選択と集中」は経営者が大好きな言葉だ。だが、実際にはあれもこれも、と「選択」はするものの、「集中」しきれない例が散見される。「選択」とは「しないことを選ぶこと」でもある。
金森努「あの商品、このサービスがヒットするワケ」バックナンバー
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