級数表とトリミングスケール

DTP全盛である。…っていうより、今は電子出版だのタブレット書籍だのと何がどう編集されて、どこに何がコピーされているのかわからん時代である。

関西の名物編集者である江弘毅(元ミーツ・リージョナル編集長)とは、現在同じフロアで机を並べる仲だが、面白いことに最近の編集者なら全く使わないであろう級数表とトリミングスケールが未だに手元にある。もはやそんな単語を知っている編集諸氏も年々少なくなって来ていると思うが、かつて編集者はひとりに一個のセットを常に持っていた。

級数表は誌面の文字(今でいうフォント)の大きさや長体だの平体だのと文字の組み方を編集者が指定していた頃の遺物である。トリミングスケールは写真(特に紙焼き)のトリミング位置や縮小率を算出するための計算尺みたいなもの。江弘毅は連載原稿やら寄稿やら文章書きの仕事がもっぱら増えた最近ではあるが、なぜか常にこの二種類のツールを手元に置いている。

「なんで級数表なんすか?」と聞くと、「なんか文字の量とかレイアウトの具合とかパッと見てわかるんはコレ当てんのが一番なんや!」という応え。そう僕自身も文字数カウントとかデジタルな文字の拾い方には少し違和感がある。どうしてもあの□がひたすら並ぶ級数表が「お前しっかり原稿書けよ!」とこちらに向かって来るようで、「あぁ編集やってるな…」という実感が沸いて来るというものなのだ。

kansai

級数表をチラ見しながら書き上げた江弘毅の最新刊。「飲み食い世界一の大阪」は12/11ミシマ社より発売。

そういう編集者なりの身体能力ってのが要求された時代があったのだ。多分、江弘毅はこの“カラダで覚えた感覚”を降臨させる時にこのペラペラの下敷様のプラ板を手に取るのだろうと思う。

関西だとか、東京だとか、グルメだったりオシャレだったり、そのキーワードに身体で反応出来る編集者ってのが最近激減して来たように思う。「パソコン切ればタダの人」ではやっぱりこの仕事はダメなんだと、最近痛切に感じているのである。

石原卓「東奔西走 関西の編プロ社長奮闘記」バックナンバー

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石原 卓(クエストルーム代表取締役/140B取締役)
石原 卓(クエストルーム代表取締役/140B取締役)

1963年神戸市生まれ。ミュージシャンを目指すが大学卒業と共にぴあ入社。広告部、編集部を経て同社各誌編集長を歴任後、1996年同社退社と共にクエストルームを創業。大阪を中心に東京、名古屋などに拠点を置く。現在は江弘毅らと編集集団140Bの経営にも携わり、関西大学社会学部で教鞭(講師)など、編集エリアを越えて様々に活躍中。2001年から宣伝会議編集・ライター養成講座大阪教室の講師を務める。

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石原 卓(クエストルーム代表取締役/140B取締役)

1963年神戸市生まれ。ミュージシャンを目指すが大学卒業と共にぴあ入社。広告部、編集部を経て同社各誌編集長を歴任後、1996年同社退社と共にクエストルームを創業。大阪を中心に東京、名古屋などに拠点を置く。現在は江弘毅らと編集集団140Bの経営にも携わり、関西大学社会学部で教鞭(講師)など、編集エリアを越えて様々に活躍中。2001年から宣伝会議編集・ライター養成講座大阪教室の講師を務める。

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